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チー付与に登場する『半グレ』たちは何者なのか


はじめに



このnoteは、連日連夜インターネットを騒がせている、「追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 ~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~ 」(通称チー付与)に登場する不良冒険者集団、通称『半グレ』についてまとめたものです。

作品は以下URLから読めます。


この作品は所謂なろう作品と呼ばれる小説のコミカライズなのですが、「ギャグパートが狂っている」とチラホラ話題になり、最近では「半グレ編がヤバい」と話題になっている怪作です。
まだお読みになってない方がいらしたら是非読んでみてください。


作品の特徴として、展開がサクサク進むが故にキャラクターの思考と陣営の方針がコロコロ変わるというものがあります。
スピード感があるので読んでいてとても楽しく、夢中になれるのですが、更新が隔週ということもあり伏線や設定が抜け落ちることもあるのが難点とも言えます。

なので、このnoteでは話の渦中になっている『半グレ』の言動を振り返り、彼らの人物像を詰めていこうと思います。




そもそも『半グレ』とは何か


チー付与での『半グレ』は一般的に使われている「暴力団に属さない犯罪組織」という意味ではなく、「半分グレンダ」という意味です。
嘘じゃないです。



グレンダは王獣の牙の副ギルドマスターなのですが、彼女を親のように慕っていた男がいました。

その男は「俺の半分はグレンダでできている」と口癖のように言っていたことで、周囲から『半分』と呼ばれるようになります。



この『半分』が率いている集団が『半グレ』です。暴力団に属さない犯罪組織ではありません。

「半分グレンダ」が口癖の男が率いているから『半グレ』なんです。

(なお、犯罪組織の意味はないが、実際人殺しはやっているし冒険者が反社化した存在とも明言されている。)


グレンダの存在


『半分』は作中でも最強格のような演出をされています。

ならば『半分』に慕われるグレンダはどれほどの力を持っているのだろうか、と疑問を持ちますが、『半分』はグレンダに遠慮し部下のままでい続けたというだけなので実力はとっくに『半分』の方が上です。

グレンダ本人はコーネリアスの策によって暗殺者ミラベルに殺されました。
そんなシーン記憶にないよという方は5話を読み返してみてください。

グレンダ失踪を契機に、『半分』は自身を慕う者たちと共に王獣の牙を脱退し、後に『半グレ』と呼ばれるようになります。

今や(※35話現在)指名手配されながらも革命を目論む不良集団ですが、元を辿れば『半グレ』たちもギルドに所属する冒険者に過ぎなかったのです。


ヤクザと『半グレ』

『半グレ』は一般的な半グレではないんですが、逆に一般的な意味でのヤクザは出てきます。
しかも『半グレ』との衝突を繰り返します。


言ってしまえば同じ反社的存在なのですが、チー付与では現実世界には存在しない、大きな違いが存在します。
それは冒険者であるかどうかです。

チー付与世界では冒険者には特権が存在します。これは『冒険者が命を懸けて働いているからこそ王国は豊かになった、だからある程度のことには寛容になろう』という国王の考えによるものです。

例えば冒険者が何らかの問題を起こした際、もちろん職質や事情聴取が行われますが、逮捕されることはほぼありません。エルシーのように虚偽の報告を行い、国王陛下の反逆行為だとみなされない限り、彼らは目を瞑られます。

つまり反逆行為とみなされる行動さえ取らなければいいのです。が、『半グレ』は仲間の失言により反逆行為に該当するとみなされてしまったので、懸賞金がかけられ他国に亡命もできなくなり、今現在追い詰められているというわけです。


『半分』の主義

24話で明かされますが、『半分』は「孤独な奴の手は俺が取る」と断言しています。
素性も知らない、ただ「レインをやっつけて」と言いに来たミラベルに、です。

「寂しいな お前」
「復讐に手を貸してくれるツレもいねぇんだろ?」
「…それで俺らアテにしてここまで来たんだろ」
「いいよ 仲間になろう」

6巻24話


『半分』はミラベルに何も質問していません。
ミラベルが持ってきた折れた強化付与魔術師に判断させ、コーネリアスの攻撃を受けさせ、それだけで仲間に入れると判断しました。

彼の中ではミラベルが一人でノコノコと『半グレ』のアジトに来たことも判断材料になっているんでしょうが、それも含めて、状況しか見ていません。

仲間になりえるミラベルの性格も過去も『半分』にとってはどうでもいいんです。これは無関心ゆえではなく、どんな奴でも孤独なら仲間にしようという彼の指針であり、優しさであり、甘さです。

「俺も昔 一人でよー」
「そんな時に手を差し伸べてくれた人がいる」
「ひどい人間関係や孤独になれすぎたやつは 救いの手に応えられなくなるんだよ」
「でもあの人はそんな俺の手を取って孤独から引きずり出した」
「恩義を感じてる 今もずっと」
「だから俺も同じようにしてる 孤独な奴の手は俺が取る」

6巻24話


もちろん、ここでの「あの人」はグレンダを指します。
『半分』はグレンダにしてもらったことを、ずっとずっと続けているのです。
『半分』がグレンダを語るシーンはここ以外にほぼありません。彼は普段からグレンダの話を口に出すことはないんでしょうが、ミラベルに話したということは仲間にも周知の事実なんでしょう。


もし自分が一人になった時に「孤独な奴の手は俺が取る」だなんて言われたら、そりゃ『半分』に付いていきますし、彼に従いますよ。
強さも段違いだし、躾で仲間をボコボコにすることはあるけど孤独な自分に真正面から、真っ直ぐに向き合ってくれるし、本当にかっこいい人だと思います。
反社だけど。

面子より仲間の命を優先する『半分』


『半分』の甘さと冷たさ


先述の通り、孤独な人間は仲間に加えるという主義は甘さでもあります。

特に身辺調査をせず仲間にしているのですから、孤独なフリをしただけの裏切り者も混じります。ミラベルの時に身辺調査をキチンと行っていたなら、ミラベルが暗殺一家の出身でグレンダを殺害した張本人ということも発覚していたかもしれません。ですがそうはなりませんでしたね。

加入基準がこんなにガバガバなら彼らの情報を警察や王国側に渡し、報酬を得るような人ももちろん現れるでしょう。

『半分』は裏切り者をボコボコにすることでそれを解決しています。

裏切り者が発覚したらまず死なない程度にボコボコにする、治療、街で見かけたらまたボコボコにする、それの繰り返しです。これは『半分』一人だけでそいつを追うのではなく、『半グレ』全体で行います。


この方法では裏切ろうと考える人間の心を恐怖で折ることはできるでしょうが、それでもどうしても裏切りを未然に防ぐことはできませんよね。
ではどうするのか。

どうもしません。後々裏切られる可能性があろうと、そいつが今孤独だと言うなら、『半分』は変わらず仲間にします。

こんな無茶を続けているのも、『半分』が圧倒的な力を持っているからこそ、そして裏切り者は必ず見抜けるという自信があるからだと解釈しています。『半分』は強者だからこそ恩人のグレンダが亡き今もそのやり方を踏襲している。裏切られたら制裁を加え続ければいい。孤独な奴の手は俺が取る。どこまでも甘いが、その甘さは裏切り者を人として見ない冷たさの裏返しでもあるように感じます。


『半グレ』の変遷


展開に合わせて彼らの境遇がどんどん変化しているので、読み返したい方向けに軽くまとめておきます。
(※これは35話現在のまとめです。新たに発売された単行本の情報は追加したりしなかったりします。)

2巻

5話 コーネリアス&ミラベルによるグレンダ殺害

3巻

11話 『半分』王獣の牙脱退


4巻

14話 『半グレ』台頭

5巻

16話 バリオス殺害

6巻

21話 コーネリアス捕獲
23話 コーネリアス脱走失敗

7巻

24話 ミラベル『半グレ』加入、コーネリアス殺害
25話 青の水晶襲撃準備中に暗殺の母による奇襲
26話 ヤクザと交戦、暗殺の母と一時休戦、羊羹
27話 エルシー逮捕、青の水晶への接近禁止命令、レインとラーメン屋の邂逅


単行本未収録

28話 『半グレ』がレインと再会、ラーメン屋にヤジ飛ばしながら帰宅
29話 ラーメン屋襲撃決定
30話 ラーメン屋襲撃失敗、方針を「レイン確保」に変更
31話 王国による『半グレ』討伐決行、方針を「レイン確保して王座奪う」に変更
32話 『半グレ』内の裏切り者確保
34話 エルシー含めた王国軍との対立、襲撃作戦成功、暗殺の母奇襲

羊羹はそんなに重要ではないですが、絶対に抜いちゃいけないと思ったので入れておきました。
というか『半グレ』って二回も暗殺の母に奇襲仕掛けられてるんだ…。


31話で王国による『半グレ』討伐が決行されてからは、

元々59人いたのが王国軍による拠点制圧で34人死亡→ヤクザ達による奇襲で12人死亡→自主脱退5人、裏切り1人

ということで34話時点では残り7人となっています。


『半グレ』残党メンバー


半グレたちは積極的に名前を呼び合うので顔と名前の一致が早い段階でできると思いますが、まだ名前がついてない頃に登場していたりすることも多いのでそれも含めてまとめました。

35話までのネタバレを含みます。
逆に言えば35話までの情報しかありません。

『半分』

グレンダを信奉していた、実質的な『半グレ』リーダー。本名は不明。
恐らく空気を扱う能力。彼が扱っていたと確定はまだできないが、異常な魔力と頭の回転の速さから見るに彼が有力候補ではないかと推測できる。
魔力で街灯を壊せるし向かってきた戦車を破壊することも可能。
仲間の顔と名前は忘れない。裏切り者の顔も忘れない。

王国軍に『半グレ』一行の情報が何も行っていないということはワダチーには能力を明かしていない。ので、仲間だからと無条件に信用し合うわけではないことが読み取れる。
戦闘を見るにお互いの能力は熟知されていることからこの7人の間のみで共有されたのであろう。


タケ

能力で空間の配置交換ができる。
ラーメン屋襲撃時に死骸やエンディを飛ばしていたのも彼。
ビッという音が鳴ったら配置が交換され、およそ5秒後に対象は動くことができる。
交換ができる空間は2.5m四方まで(恐らく固定?)という制限がある。
暗殺の母をわざわざおびき寄せたあたり、恐らく交換する片方の空間は触れてないといけない。自身を含めた空間も交換可能。

コゲ

能力不明。
34話では『半分』とタケと共に行動していた。
「あいつウラリスに帰るんだったらその道でやっちゃおうぜ」と言い出した張本人。この一言がなければラーメン屋襲撃はなかったかもしれない。

エンディ

ビームのような能力、あるいは能力不明で魔力をビームのように打つことが可能。

頭はキレるがプライドが高く怒りっぽい。レイン接近禁止命令が出ているにも関わらず怒りのあまりレインに殴りかかろうとするなど、たまにバカな真似をする。
一方でレインの魔科両立を目の当たりにすればその場で考えを変えるなど、冷静になると頭がよく回る。気絶した仲間を積極的に背負ったり、31話では泣いているワダチーの背中を摩るといった優しさも見せる。

エルシーの顔すら知らず、恐らく彼女の能力の高さも把握しきってなかっただろうが、ミノルが焦っている顔を見てその場のヤバさを理解したことからミノルの状況判断能力は買っているんだろうと伺える。
ちなみに4.8秒のセリフも彼。


ミノル

能力不明。エルシーの顔と名前と能力の高さをちゃんと頭に叩き込んでいた。

34話ではエンディの制止役を務めており、怒りで暴走しそうになっていたエンディに声をかけ続けていた。状況判断能力に長けている一方で、ソウタの勝手な行動にはちょっとキレた。「俺お前が俺より年上に見えたら嫌だわ~」と言っていた通り、彼なりにソウタを心配している。のかもしれない。
雑談中はかなりアホっぽい顔をしている。「薬杉!?」と「撤退だ」が同一人物なの信じられない。


コージ

思考か脳機能に作用する催眠系の能力。強さ、使い方、共に未知数。
シャブという単語を聞くとオヤジのことを思い出すらしいのでまともな家庭環境では育ってない。
満員電車が嫌でこの仕事(冒険者)を選んだが、ギルドを抜け、冒険すらせず革命の一端を担っている今、どういう感情なのか。


ソウタ

植物の成長を操作できる能力。ただし代償に自分も老化してしまう。
代償の影響で実年齢である12歳よりもかなり老けて見える。
年相応に生意気で、『半分』にもエンディにもコージにもへらへらしながら突っかかる、愛嬌溢れる最年少。仲間想いで、「コージくんとかミノルくんばっかりに負担させらんないっすよ!」と真っ先に能力を使用した。
12歳だが焼肉屋で飲酒していた。



最後に

『半グレ』は現時点で単行本表紙が決まっていますし、全員の能力が明かされるまでメインで登場し続けるでしょう。チンコでゲラゲラ笑い、向かってくる敵を爆散させて楽しむ、倫理的に好ましくない言動ばかりです。

ですが私は『半グレ』メンバーの自由なところに惹かれて、このようなnoteを書き上げるにまで至ったので、どうか彼らには輝かしい未来か、幸福な死が訪れてほしいと思います。嘘です。全員愛してるので誰一人死んでほしくないです。早く王座を奪って国を取れ、半分。


私、この言葉を信じていますからね。

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