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脳卒中後遺症に対して『電気刺激療法』の効果について

お疲れ様です。はらリハです。

本日は…
脳卒中後遺症に対して電気刺激療法の効果」について解説します。


結論

[ 電気刺激療法の効果 ]
☑︎ 手足の運動機能/運動パフォーマンス
☑︎手足の痙性→振動刺激の方が有効
☑︎ 肩の亜脱臼/痛み
☑︎ 歩行速度
☑︎ バランス機能  …に有効である。

[ 電気刺激療法のデメリット ]
☑︎ リスクがある(禁忌、事故など)
☑︎ 利用できる環境が少ない
☑︎ 自宅で行うには専門の指導者(セラピスト)が必要
☑︎ 家庭用でも価格が高い(エビデンス的に有効な機器は10万円以上)

※ 比較的安価な低周波治療器は以下リンク先を参照

はじめに

 電気の治療について、一度は聞いたことがあると思います。

 それに対して…

☑︎ どんな効果があるのか?
☑︎ どこで利用できるのか?
☑︎ デメリットがあるのか?
☑︎ エビデンスはあるのか?

 など、

 疑問もたくさんあると思います。

 そんな疑問を一つずつ読み解いていきましょう。

電気刺激療法とは?

 電気刺激療法は、脳卒中後遺症のリハビリ方法のひとつです。

 筋肉の始まりと終わりあたりの2つに電極に張り、電気を流し、筋肉に刺激を与えて、脳から筋肉を動かす命令を送らずに筋肉を動かすことができます。

 それに対して、脳卒中の症状/問題は…

・痙性麻痺(筋肉が勝手に収縮する/力が抜けない)
・弛緩性麻痺(筋肉が収縮しない/力が入らない)
・筋萎縮(長期間筋肉が動かしていないことで筋繊維が固まる)
・疼痛(痺れ、血行不良、筋の癒着など、様々な要因で起きる痛み)


 など、脳卒中由来の様々な問題が生じます。

 これらの問題に対して、全て有効であり、運動機能の向上と維持に貢献します。

 特に「弛緩性麻痺」と呼ばれる、筋肉に動けと命令を送っても反応もない状態に対して効果を認め、日本だけでなく、世界中でも有効的であると報告を受けています。

【エビデンス】
・脳卒中ガイドライン2015

 中等度の麻痺筋への電気刺激を使用
 麻痺側の肩関節可動域と亜脱臼改善を目的に使用
 痙性筋に対する高頻度の使用
 重度の運動障害に対して使用
 上記の介入では推奨グレードBとされている
・アメリカ心臓/脳卒中学会ガイドライン
 随意運動、亜脱臼の改善の報告があり、エビデンスレベルAと臨床での使用が推奨されている

 脳卒中後遺症の治療としては非常に優秀な方法といえます。

 では、電気刺激治療の効果はなんでしょうか?

 電気刺激療法の治療ターゲットになるのは「手と足」です。

 それぞれに得られる効果を説明します。

『腕と手の治療効果』

1)運動機能が向上する

電気刺激療法は、運動機能の向上に対して有効であると報告

Yang J D,2019

 ここでいう「運動機能」とは…

 ☑︎ 手を挙げる
 ☑︎ 手を背中に動かす
 ☑︎ 指を開く/握る
 ☑︎ 親指を自由に動かす
 ☑︎ 指を1本ずつ動かす など…

 指を開く握るなどの単純な動きや、指を別々に動かす細かい動作を行う機能のことを言います。

 何か、動かしたい方向や関節部位が明確であれば電気刺激療法は有効と言えます。

2) 運動パフォーマンスが向上する

電気刺激療法は、腕や手の運動パフォーマンスを向上させる上で有効であると報告

Howlett OA,2015

 ここでいう「運動パフォーマンス」とは…

 ☑︎ 手を前に伸ばす動作(リーチ)
 ☑︎ ものを掴む動作(グラスプ)
 ☑︎ ものを摘む動作(ピンチ) など…

 肩、肘、前腕、手首、指の複数の関節を使う運動のことを指し、コップを持つ、鍵を閉める、トイレットペーパーを巻き取る、など目的がある動きのことを言います。 

 何か、目標となる目的が明確になっていれば、電気刺激療法は有効と言えます。

3)痙縮が軽減する

電気刺激療法は、痙縮の軽減および運動範囲の増加に有効であると報告

Cinara Stein et al.2015

 痙縮とは、筋肉が勝手に力が入ったり、筋肉の緊張が高くなり身体がこわばってしまう症状です。

 ここでの報告は…

 症状の改善というよりは「症状が緩和することで関節可動域が広がった」というもので、

 リハビリや運動前に行う前のコンディショニングとして有効とされています。

 これらの痙縮の症状は、局所的振動刺激が有効とされているので、そちらを選択した方が良いでしょう。

4)肩の亜脱臼が軽減する

電気刺激療法は、亜脱臼に対し妥当であると記載

脳卒中治療ガイドライン2021

電気刺激療法は、肩の亜脱臼に対し有効であると報告

Lee JH,2021

 脳卒中後の後遺症として「弛緩性麻痺」と呼ばれる症状が出現すると亜脱臼が出現します。

 この亜脱臼とは、脱臼と同じく、常に肩の骨が関節から抜けた状態となり、手が上がらない、肩が痛む、歩くときに手がぶつかる、などの症状が出現します。

 ただ、これらの症状に対して電気刺激は急性期〜回復期までが有効であると報告があり、維持期は妥当しないと2017年の研究では報告されています。

4)肩の痛みが緩和する

肩の痛みに対して、電気刺激は有効であると報告

Qiu h,2019

 肩の痛みの原因は個別性があり、すべての痛みに対して電気が有効であるとは言えません。

 ですが、痛みが出現するパターンとして、肩を外に開く動き(肩関節外旋)が苦手な方が多く、この動きの制限をなくすことで疼痛が緩和するケースが非常に多いです。

足や歩行のリハビリ効果

1)歩行速度の向上

電気刺激療法は、歩行速度を向上させる上で有効であると報告

Howlett OA, 2015; Lin S, 2018

 ここでの電気刺激療法の狙いとしては、歩行速度の向上です。

 歩行速度が速さは自立度と関係しており、歩行速度が向上すると自立する可能性が高まると報告されています。

2)バランス機能の向上

電気治療療法は、バランス障害に対して有効であると報告

Fang Y, 2023

電気治療療法は、発症6ヶ月以降の慢性期の脳卒中患者に対して、BBSスコアでみたときのバランスに対し有効であると報告

Hong Z, 2018

※ BBS :立ち上がりや立位などバランスを数量化する検査

ここでいうバランスとは、

3)下肢の運動機能が向上する

電気治療療法は、下肢の運動機能に対して有効であると報告

Fang Y, 2023

 ここでいう「運動機能」とは…

 ☑︎ 股関節を曲げる
 ☑︎ 膝を曲げる/伸ばす
 ☑︎ つま先を上げる
 ☑︎ 踵を上げる
 ☑︎ 足を目的の場所に移動させる
 ☑︎ 足の指をグーパーする など…

 足を動かす機能を言います。

4)痙縮が軽減する

電気刺激療法は、痙縮の軽減に有効であると報告

Cinara Stein et al.2015

 上肢とは異なり、足の痙縮は電気刺激療法の効果が報告されています。

 また、ある研究では電気刺激の種類と条件を変えることでより効果を認めており、経皮的電気刺激を行う場合は30分、経皮電気刺激と運動療法を組み合わせる場合は60分かつ神経の走行に合わせて電極を装着することで効果があると報告されています。

電気刺激における禁忌

 禁忌とは、電気刺激を行うのは危険な疾患、または危険な部位」のことを指しており、禁忌に該当する疾患や身体部位には原則として電気刺激を実施してはいけません。

1)禁忌対象者

☑︎ ペースメーカーなど、体内に医療器品を埋め込んでいる方
☑︎ 悪性腫瘍の方
☑︎ 転換の既往、疑いの方
☑︎ 金属インプラントを使用している方
☑︎ 皮膚知覚障害の方
☑︎ 意思疎通が困難な方

2)禁忌部位

☑︎ 心臓
☑︎ 目
☑︎ 感覚がない部位
☑︎ 頸動脈洞上
☑︎ 静脈、動脈の血栓症、血栓性静脈炎の近位
☑︎ 妊婦

 取り扱う際は、担当医に相談することを推奨します。

電気刺激療法が受けれるところ

1)病院でのリハビリ

 急性期病院、回復期病院に分類されている施設では、電気刺激療法を受ける可能性があり、退院後の方なら外来リハビリを利用することで、電気刺激療法を受けられる可能性が高いです。

 病院によっては電気刺激機品を置いていない場合もありますので、事前の確認が必要です。

2)訪問リハビリの利用

 病院と比較して、電気刺激機品を常備している施設は少なく、受けられる可能性は稀な印象です。

3)自費リハビリの利用

 自費リハビリを提供している施設では、脳卒中に特化した施設が多いでの、電気刺激療法を受けられる可能性は高いです。

しかし、自費リハビリ施設自体、地方には全くないので、どこでも受けられるわけではないです。

また、病院と同様に、利用する前に電気刺激療法を受けられるか確認することをお勧めします。

終わりに

ここまで、読んで頂きありがとうございます。
 最後に、脳卒中後遺症の改善に向けた自主トレメニュー(有料500円)を紹介します。

 上記で説明している通り、 

 「病院でやっていたリハビリ」と「本来回復に必要なリハビリ」

がズレていることが非常に多いです。

 よく聞くのが「原因は筋肉」という話。

 筋肉トレーニングも必要ですが、よくよく考えると根本的な問題って脳じゃないですか?

 だって脳の損傷なんですもん・・・

 脳の回復に必要なリハビリしないといけないじゃないですか。

 そこをピックアップした自主トレを提供しています。
 なぜ自主トレで回復するのか・・・

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 ☑︎ 病態、症状の原因
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