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上手に落ち込みたい

 女性として産まれ、11~12歳頃に月のものが始まり、もうかれこれ30年近くそれと付き合っている私ってめっちゃすごくない?!…と思うことがある。ひと月に6日ほど身体から血を流しながら生きているのだ。それをもう360回以上も続けているなんて!

 しかも、だいたい血が出る5日ほど前からお腹が張り、足もむくみ始めるので、こちらの子宮事情を知らない人に「なんか太った?」と言われる確率はぐんと上がる。そんな時、身体を締め付けないゆるっとしたワンピースを着て地下鉄に乗ろうものなら、気遣い上手な韓国マダムたちに「あなた妊婦なんでしょ?ここ座りなさい」と大きな声で言われる確率もアップする。

 便秘がちになり、わけもなくイライラし、無性にチョコレートが食べたくなると「ああ、もうそろそろやな」と覚悟を決める。頭痛や腰痛まで始まりだすと、昔はじっと我慢していたけれど今はおとなしく薬の世話になる。そして、家族に堂々と宣言するのだ。「私はもうすぐ血が出るからいつもみたいに動けません。いっぱい助けてください」と。

 特に、夫には毎回予定日の数日前から「もうすぐ生理だから。コンディション、今めっちゃ悪いから」と訴えるようにしている。毎月言うのも面倒だし、聞かされる方も面倒だと思うけど、すべては家庭の平和と平穏のためなのだ。

 こうして周りの理解や協力を得ながら、毎月なんとか乗りきってきた月のものだが、時々ひどく落ち込んで自暴自棄になり、「ホルモンに翻弄されてるなあ、私」と泣きたくなることがある。

 思い出さんでいいのに、昔言われて悲しかったことをふと思い出したり、送ったメールやLINE、カカオトークの返事が返ってこなかった人たちのことを考えたり。今まで書いてきたものが急につまらなく思えて、全部消してしまいたくなったり。いつか叶えたいと思っていた夢を先に叶えた人たちを見ると、うらやましさと自信のなさでいっぱいになったり。

 とにかく、今夜もそういう気持ちになってしまったのだ。ホルモンのしわざで。ほんま、やっかいやわ。

 でも、360回以上経験してきただけあってこの落ち込みはそう長く続かない、ということも知っている。だから問題は、やっかいな期間をどう乗りきるかっていうこと。

 今の私には、大阪の言葉とボケツッコミがすごく効いた。あと、イギリスの駅でQUEENのメドレーを弾いたという菊池亮太さんのピアノの演奏にも、すごく元気をもらった。

 風邪をひいた時は韓国料理より和食が食べたくなるのと一緒で、ホルモンに翻弄されて落ち込んだ時は韓国ドラマより、人生の半分を過ごした関西の言葉や笑いが私には合っているみたいだ。そして、本を読むことからも少し離れ、音楽をただ楽しむ。これもすごくいい。

 「30年以上も毎月ようやってるよな」って自分をほめてあげて、ガハハと笑い、音楽に心踊らせる。そうしているうちに月のものは始まり、気づけば身体が楽になっていく。泣いても笑ってもきっとあと何年かは毎月やって来るのだから、300数十回も乗り越えてきたことに誇りを持って、上手に落ち込みながら過ごしていきたいもんである。


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