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漫画から学ぶ現代の農業課題~エンゼル・バンクを読んで~

漫画『エンゼル・バンク』は、ドラゴン桜の作家、三田先生によって描かれた作品です。その中で、農業の課題について深く掘り下げられたエピソードが存在します。この記事では、その3つの主張と私の見解をもとに、現代の農業の課題を考察します。
・オススメ漫画「エンゼルバンク ドラゴン桜外伝(10) 三田 紀房 (著)」


1. 補助金づけの農業

日本の農業補助金の実態

日本の農業は、補助金づけで事業として成立しているという問題が指摘されています。補助金を目当てに高額な機械や設備を導入する風潮があり、事業採算としての観点が欠如している可能性があると指摘されています。
多くの日本の農家は高価な新品の農業資材や機械、例えば、ビニールハウスやコンバインなどを導入しています。こういった資材の導入背景には、補助金の対象となる新品の資材には補助がつくというメリットがあります。
一方で、他国の韓国では、安価な資材の導入や原価を重視しているのが対照的です。

また、日本の農業における補助金の最大の課題は、補助金が主に資材購入に使われ、農家の実質的な所得向上には繋がっていない点にあります。欧州では、補助金は農家の所得を安定化させる目的で使用されていますが、日本ではそのような目的が明確でないことが問題となっています。

例として、イギリスやスイスの農家の所得の大部分が補助金で成り立っています。具体的には農家の所得における補助金の割合は、イギリスで90%、スイスでは驚くことに105%です。
日本のその数値は35%と、欧州諸国と比較すると低めです。

日本の農家の所得の大部分は、補助金ではなく、農産物の売り上げから得られるものとなっています。これは、補助金だけに頼らず、自らの手で事業を成り立たせる必要があるということです。農家の9割が個人農家であり、年商ではなく年間の利益が1000万円を超える農家は非常に少ないという状況です。特に、現在、資材や輸送費のコストアップによる収益低迷など、多くの問題に直面しています。

2. 「天気や政治家の責任」という言い逃れの現実

本書では「農家が農業の困難を天気や政治家の責任にする」という見方がありました。
実際のところは、私がお付き合いする多くの農家は前向きに課題解決のための取り組みを進めています。
フルプロ農園の取り組みを通して、この現実を詳しく見ていきましょう。

真相: 言い逃れではない農家の真摯な取り組み

多くの農家が天気や政治家の責任に事をなす言い逃れをしているわけではありません。特に、フルプロ農園を例として挙げると、天候の変動によりリンゴの収量が減少しても、観光農園や木のオーナー制度の取り入れなど、農業以外でのサービスをどう設計するか。
既存の枠にとらわれずに、課題を乗り越え、持続可能な農業を追求しています。

自責の精神: 前向きな取り組みが求められる時代

農業の現場で直面するさまざまな問題や課題。
その中で、自らの責任感を持ち、前向きに課題解決の取り組みを進めることが求められています。このような自責の精神を持ち続ける農家が、今後の時代において真に成功すると考えられます。

農業×NFT: 新しい技術との融合

現代の技術であるNFTのような仕組みを取り入れることで、農業の枠を超えた挑戦も可能となっています。特にNFTなどの新技術の導入により、農業の新たな可能性を広げ、より多くの価値を生み出す取り組みをサポートしています。

3. 日本の「選択肢の制約」の問題

日本のトマト市場において、一つの品種「桃太郎」が極めて高いシェアを持つことが指摘されています。この現象は、多様なトマトの品種が存在する中で、我々の食卓にならぶ農産物の多様性が失われているという問題を浮き彫りにしています。

桃太郎の特性

日本のトマト市場に出回る8割から9割が「桃太郎」という品種によって占められています。この品種の普及理由として、果実が硬く輸送中の損傷リスクが低いこと、収穫後に赤く熟す特性、そしてハウス栽培に適していることが挙げられます。
具体的には、桃太郎は、輸送や保存の利便性から多くの農家や流通業者に選ばれています。特に、緑の状態で収穫され、輸送中に熟して赤くなるという特性は、市場出荷を考慮した際の大きな強みとなっています。
また、ハウス内での栽培に適した品種として開発されており、屋外の自然環境下では育ちにくいという特性も持っています。
しかしこれには持続可能な農業の観点からのリスクが伴います。

トマトの品種多様性の喪失

しかし、このような特性は、同時に天候や環境変動に弱い「箱入り娘」のようなトマトであるとも言えます。持続可能な農業の観点からは、このような単一品種の依存はリスクとなり得ると考えられます。

トマトには多様な品種が存在しており、それぞれ異なる風味や特性を持っています。しかし、桃太郎が市場での圧倒的なシェアを持つ現状は、消費者の選択肢を制約しているとも言えます。これにより、我々が食卓で楽しむトマトの選択肢が限られてしまっていると感じられます。

まとめ

日本の農業は、補助金依存や一つの品種への過度な依存など、多くの課題に直面しています。しかしこれらの課題を乗り越えるためのヒントや方向性も、『エンゼル・バンク』の中に散りばめられています。持続可能な農業の実現には、新しい技術や発想の導入、そして農家自身の前向きな取り組みが不可欠です。
我々消費者も、多様な農産物を選択することで、持続可能な農業の実現をサポートすることができます。『エンゼル・バンク』を読むことで、私たち一人一人が日本の農業の未来を考え、行動するきっかけを持つことを願っています。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。

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