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弱者と復讐—亜獣譚—

著:江野スミ (1)

「第3回 次にくるマンガ大賞 Web部門入賞。

その愛には獣の臭いが染み付いていた——

男の名はアキミア。
職業、害獣駆除兵。
女の名はソウ。
職業、衛生兵。

獣を喰らう男と愛を知る女、
この二人の出会いの先にあるは安寧か破滅か…。
鬼才・江野スミが描く新境地、ハードアクションファンタジー開幕!」(2)

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はじめに

 今回の作品「亜獣譚」は物語としての完成度が高くできればネタバレを知らない状態で読んでしてほしい。その為この駄文の中では詳しく話の内容を語らない。是非Amazonや書店などでこの人間たちの苦悩に満ちた漫画を買って一気読みしてほしい。


特徴

世界観

 非常に世界観が独特であり、簡潔に言うのならば今の日本とは別の発展した世界と表現した方が妥当だろう。その世界には人間以外にも他の姿、恐竜や獣の形えおした知的生命体や繫栄した人工知能の国もある。見た目や生命構造すら異なっていてもそれぞれの国の人々は倫理や正義を折り曲げて己の為に戦う。


性病「ヴィエドゴニャ」

 この世界ではある人間が次第に外見も精神も変化し害獣になり、人間に害を及ぼす。その害獣に変化する人間はあるウィルスを持っているそのウィルは性交渉によって移される。それが性病「ヴィエドゴニャ」である。普通ならこの様な肉体の変化が著しく起こる病気を性病として書かない。この様な所でこの作品唯一無二の個性を出している。


社会情勢の中生きる人々を描く群像劇

 「ヴィエドゴニャ」が性病ということでそれを患う者達の苦悩や鬱憤を描いており、被害者や加害者そしてその枠組みから外れたい人、社会生活によって生まれる排他的な歪みに悩まされる人を中心描いている。社会の一部となれないという悩みをもつ人々を各々の視点で開示しながら進んでいくので読んでる方としては感情移入がしやすい。


良い点

練り込まれたストーリー

 物語としてまず驚くのは伏線回収の見事さ、全てが繋がる練り込まれたストーリーである。「ヴィエドゴニャ」の正体も明らかになり、登場人物も一切なく無駄がなく殆ど処かで他の登場人物同志で繋がっており再登場もしている。そのおかげで登場人物の心情や行動が育ちや影響などから生まれ、己の力で考え抜き決断していると分かる。このことで物語全体に淀みがなく、全ての描写に精錬した印象を与えられる。


弱者

 前述したとおり物語の主軸して弱者の苦悩や鬱憤を上げたがそれが見事にこの作品の特徴と成しており、それによる登場人物の考えや行動の成り立ちや表現も申し分ない。

 作品内の性病を患っている者や強姦された者、虐められていた者は後ろを向きながら生きているのではない。現在の時、過去にどの様なことが起きても今の為に精一杯生きている、そしてその考えや行動に納得が出来る。それ故にその姿に励ましを貰えるだろう。この作品はそんな弱者の為の前を向いて生きていく人々物語である。


悪い点

綺麗に収まりすぎている

 悪い点としては先ほど綺麗に伏線を回収していると述べたがこの物語は逆に綺麗に伏線を回収しすぎて読んだ後の余韻が少ない事である。実際終盤の方に出た大統領の直属の部下ぐらいで後は全て語りきったと言えるだろう。作品として申し分ないがこの世界観を好きな人にはもったいないく感じるだろう(因みに作者がこの本編後のストーリーを書いているので気になる人はkindleで公開されているちょいたしを読んでほしい)。


さいごに

 この物語の主人公と言えるアキミアだがこの人物が人間らしい。欲に忠実でありながらもそれを後になって後悔する。その場しのぎで生きているようで深い悩みを抱えながら生きているそんな人間らしい彼が必死になっている様を見るのも乙であろう。

 勿論このことは他の人物にも言え、途中までは悩めるヒロインでしかなかったホシが敵に立ち向かうシーンは見逃せない。どの登場人物にも感情移入が出来、どの登場人物も愛おしいそんな作品である。


(註)

(1)江野スミ氏のTwitterから転載

(2)裏サンデーの該当ページから引用

(4)江野スミ氏のTwitterから転載



小学館該当商品ページ

裏サンデー該当ページ

https://urasunday.com/title/234

江野スミ氏

Twitter

https://twitter.com/shiro_saijo/media






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