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マーケティングトレース #001 サブスク型コスメボックス市場を調べてみた

考えるプロセスも練習しないと、と思い、久しぶりに市場分析をやってみようと思います。

今回の調査対象は「サブスク型コスメボックスサービス」です。

国内の主なプレーヤー

私が調べた限りで、2018年現在でサービス提供が継続されており、サブスク型の課金モデルを持っているコスメボックスサービスで主要なものはこの4つです。

RAXY
楽天が運営するサービス。市販品・ミニサイズ・サンプルなどの詰め合わせを好みに合わせて提供しますよーという触れ込み。が、サンプルしか入ってないボックスを「豪華!」と発信したことで大炎上した過去を持ちます。
特徴:ラインナップは比較的リーズナブルなものが多いです。サービスの特徴としてはバランス型というか、特に言うことがないです。

BLOOMBOX
ドイツでスタートした「GLOSSYBOX」というサービスが起源。日本でのサービス展開を「@cosme」を運営する株式会社アイスタイルが引き継ぎ、現在は子会社である株式会社コスメ・コムが運営しています。
特徴:こちらも日常使いのリーズナブルな物が多く、特に特徴はありません。ただ、母体がアイスタイルということもあり、ブランドからのセール情報やプレゼント企画が豊富という副次的メリットがあります。

My Little Box
元々は「My Little Paris」というパリの情報発信メールマガジンが、オフラインでも情報発信しようという発想で始めたサービス。日本展開は2013年からで、本国の雰囲気をそのまま日本に輸入したようなお洒落さです。
特徴:日本では手に入りにくそうな海外プロダクト、ブランドオリジナル・コラボ商品が含まれているのが特徴。コスメだけでなく、雑貨やお菓子などが入っていて、ライフスタイルを全体的に提案しているところが特徴。

lookfantastic
美容商品に特価したイギリスのECサイト。通常の通販サイトとしての機能も提供しながら、サブスク型のコスメボックスを提供しています。
特徴:日本未上陸の海外プロダクトを試せるのが大きな特徴です。単品ECの方も、日本では聞いたことないブランドが多数展開されています。

市場シェア

顧客数、売上などは各社公開がないので、Googleトレンドでざっくり各サービスの人気度を見てみると以下のように。

※英語表記 or 日本語表記、ボリュームの大きい方を選んでいます
過去12ヶ月間では、MyLittleBoxが抜きん出て検索されているようです。楽天ブランドであるRAXYと比べてここまで差があるのは少し意外です。

過去5年単位で見てみると、いくつか特徴的なスパイクがあります。

・MyLittleBoxは 2015年6月、2017年5月にそれぞれ急上昇
前者は調べても分からなかったのですが、後者については2017年5月号がJILL STUARTとのコラボだったことで普段より話題になったようです。また、そこからじわじわと右肩上がりに伸びているのも注目です。

・RAXYは2017年7月に急上昇
こちらは前述のとおり、2017年7月号がサンプル品だらけで炎上したことによるもののようでした。

・bloomboxは2015年7月頃からじわじわ
前述の2サービスに比べると小さなトレンドですが、bloomboxは運営がドイツの会社からアイスタイルグループに替わってから検索が伸びています。


また、コスメボックス系サービスでは、利用者がボックスの内容やクチコミを積極的にSNSやブログで発信する傾向にあるため、そちらの動向も見てます。
RAXY:#raxy で 8,878件
bloombox:#ブルームボックス で 9,124件
MyLittleBox:#mylittleboxjapan で 10,372件
lookfantastic:#ルックファンタスティック で679件

こちらもMyLittleBoxが優勢。他の3サービスと比べて料金が高いものの、人気度・口コミ数ともに1位という結果となりました。

MyLittleBoxはなぜいい感じなのか

以上のざっくり市場分析からは、MyLittleBoxが特に好調のように見えます。なぜか。

考えた結果、以下がポイントなのではないかと思いました。
・コア価値をどこに置くか
・どんな経路で認知してもらうか
・継続する理由をどこに見出してもらうか

上記のポイントについて、順に書いていきます。

コア価値をどこに置くか

「コスメを手に入れる・使う」という目的におけるコスメボックスと他の方法の違いは、1. 毎月定額、2. 中身はおまかせ という点。とすると、コスメボックスサービスが満たすべきコア価値は下記2つだと考えられます。

コア価値1. お得感
美容にかけるお金(固定費)を下げたい、同じ商品でも少しでも安く手に入れたいというニーズに応える価値です。
・正規で購入した場合よりも割安である
・ポイントやクーポン、キャンペーンが利用できる
・受け取る人によって不公平感がない
などの機能によってこの価値を実現していく必要があります。

コア価値2. ワクワク感
知らない商品や新しい商品をどんどん試したい、周りに自慢したいというニーズに応える価値です。
・限定品やコラボ商品、新商品といった希少価値の高い商品が手に入る
・毎回違う商品が届き、サプライズ感がある
・人に見せたときに羨ましがられるような可愛さがある
・SNSで拡散したときに"映える"

などの機能が必要だと考えられます。

MyLittleBoxの場合、パリの雰囲気たっぷりの商品を、特別なデザインのボックスに入れて届けることで、特にコア価値2の「ワクワク感」の提供に大きく成功している印象です。
また、海外の商品や、オリジナル商品・コラボ商品をうまくブレンドすることで単価や原価が分かりにくくなっており、コア価値1の「お得感」においてもネガティブな印象が発生しづらいところもうまいです。(笑)

一方で、RAXYbloomboxは国内ブランドの商品が中心なので、「ドラッグストアで買ったら〇〇円なのに…」といった、お得感という価値への疑問が発生しがちなため、期待値調整がマストとなります。
RAXYは炎上事件以降も公式サイトでSNSでの投稿を推奨していますが、これは認知向上のためというより、期待値コントロールの役割を狙っているのかもしれません。

どんな経路で認知してもらうか

まず、各サービスの広告動向を調べてみたのですが、
RAXY:アフィリエイト
bloombox:アフィリエイト、リスティング(?)
MyLittleBox:Facebook、Instagram、アフィリエイト
lookfantastic:不明
という感じでした。

雑誌広告とかもやってるかもしれない(調べられなかった)ですし、広告以外でSNSアカウントでの情報発信も行なっているようですが、Web広告施策のメインは各社アフィリエイトのようです。

ただ、検索する際に「コスメ」「化粧品」と併せて「定額」「定期便」「毎月」など、サービスモデルに関するキーワードと一緒に検索しないと、アフィリエイト記事がヒットしないんですよね。
これだと、既にサブスク型のコスメボックスに興味がある人にしかリーチできません。サブスクリプションサービスの流れはまだ新しいので、最初から「コスメのサブスク」を目当てに情報収集する消費者はどの程度いるのか不安なところです。また、アフィリエイトサイトでは大体が比較記事の形式で書かれているので、必然的に競合と比較検討される状態になってしまいます。

また、RAXYbloomboxは母体に認知度があるので、関連メディアなどから誘導施策を講じているかと思ったのですが、見当たらず…
@cosmeからbloomboxへの誘導とか、相性良さそうに思えるんですが。
楽天は、クレジットカード会員に初期特典として1ヶ月分プレゼントなどの施策を行なっているようではありましたが、主要施策ではないようです。

この点においても、アフィリエイト広告で顕在化したニーズを刈り取りつつ、FacebookやInstagramなどで認知系広告も打っているMyLittleBoxは賢明なように思えます。


継続する理由をどこに見出してもらうか

サブスク型のサービスにおいて継続率は重要な指標です。つまり解約をできるだけ抑える必要があります。

サービスが解約される理由として考えられるのは、
1. ニーズがなくなる
2. コア価値がなくなる

と表現できるかと思います。

お得にコスメを買いたい・新しい商品を試したいというニーズ自体も刺激し続ける必要がありますし、
発生したニーズに対して、お得感・ワクワク感というコア価値を、他サービスよりもうまく生み出し続ける必要があるという意味です。

ただ、正直1については各社まだ取り組んでいる最中という印象を受けました。「〇〇だから続けたい」だったり「次は〇〇したい」みたいなニーズを引き出せるトリガー・施策が見当たらないんですよね。あっても定期割引ぐらい。RAXYなんかは、肌タイプや好みに合わせてボックス内容がパーソナライズされると謳っているのですが、今のところ精度はそんなに高くないようです。

一方、MyLittleBoxが優位だと感じたのは、2のコア価値の部分、特に「他社と比べてうまく」価値を生み出しつづけている点です。
こう表現すると「コンセプトがユニークだから優位」という身も蓋もない話になってしまう(実際、部分的にはそう)のですが、それだけではなくて、
・そもそもコスメではなくライフスタイルの提案、という売り方
・中身だけではなく"ボックス"にも価値がある、という見せ方
という点で、代替の利かないポジションを獲得していると感じました。

メイク商品の詰め合わせ、だと実店舗や通販も含めて代替品が多岐にわたってしまいますが、ライフスタイルを提案してくれるサービスと説明することで、想起される競合サービスがぐっと減ります。
また、広告やサイトを通し、徹底的に"ボックス"の美しさを強調することで、他サービスが陥りやすい「商品の当たり外れ」という議論を防ぎ、ボックスを受け取る・SNSにアップする・部屋に飾るという「体験」の価値を高めています。


まとめ

長くなったので、まとめます。

・各社、顧客数や売上は不明だが、決算書などに明確な記載がないことを考えると、市場としてまだまだ小規模な段階
・ただ、相対的に見ると人気度・満足度ともにMyLittleBoxが優位
・認知、提供、継続の各プロセスでコア価値をうまく表現している
・各社継続率向上のトリガーを考えたら面白そう

マーケティングノック、まだまだ頑張ります…!


読んでくださりありがとうございます!