見出し画像

中国・厦门 part2 大通りの世界と路地裏の世界 ~路地裏散策から見えてきたこと~

前回に引き続き厦门での出来事を書いていきたいと思う。

「近くに50元(750円)で抜いてくれるマッサージ店があったぞ」

初日に酒を交わした中国人の1人が興奮気味に話しかけてきた。

僕が「行ったの?」と尋ねると彼は「行ったんだけど時間が遅すぎて閉まっていた」と答えた。

僕はそういう店は基本夜を中心に営業しているのではないのかと若干の疑問を抱いたが、適した中国語訳が思い浮かばなかったので、適当な返事をしてその場をやり過ごそうとした。

すると彼は「明日昼間に一緒に行かないか?」とまさかの誘いを申し出てきた。

僕はこれまで何度も中国の違法風俗店を探してきた。

ネットにSNSに現地のタクシー、様々な情報機関を駆使したが、未だに一度すらその影を掴むことはできていなかった。

特に天津旅の現地タクシーでの失敗は僕の探索欲を多いに削ぎとり、以後僕は中国での風俗探索を半ば諦めていた。

そんな中 降って沸いてきた突然の誘い。

幸か不幸か翌日の次の目的地へ向かう列車は18:30発と時間は十分にある。

以前の僕であったら二つ返事で了承していただろう。

しかしその時の僕は彼の誘いに即答することはできなかった。

数回に渡る捜索失敗、中国での相次ぐ邦人逮捕のニュース、様々な要因が僕を躊躇わせていた。

ただ目の前にいる彼は目を輝かせて僕の返答を待っている。

彼の中で僕はすっかり性風俗好きの日本人ということになっているのだろう。

彼の期待に報わない訳にはいかない。

僕は彼の誘いに乗ることにした。

迎えた明くる日の朝。

僕は12:00までのチェックアウトに合わせて起床し荷物を整理していた。

ただバックにものをぶちこむだけという簡潔な整理を終え、いよいよ出発ということで未だ音沙汰ない彼のベッドを尋ねた。

彼は昨日のキラキラした目付きが嘘のように重い瞼を固く閉ざしぐっすりと寝ていた。

僕が少し揺すっても全く目を覚ます気配はない。

昨日の話はいったい何だったのか。

このまま待っていてもチェックアウトの時間が迫るだけで埒が空かないので、僕は他の中国人たちと握手を交わし大部屋を後にした。

すっかり心の準備を整えていた僕は彼の思わぬ奔放ぷりに肩透かしを食らい、場所のあてもなくとりあえず食欲を満たすために近くの食堂に入った。

昼食をとっている間、僕は電車の時間までの暇潰し方を考えていた。

厦门は僕の滞在していた厦门島南部を除いて目立った観光地はない。

早めに夜行列車の駅に行って今日はゆっくりしようか。

そんなことを考えているとふと例の彼が昨日「マッサージ店は路地裏にあるんだ」と言っていたのを思い出した。

僕はこれまで夜に散歩することが多かったので、無意識のうちに暗く不気味な地図に載らない路地裏を避けて歩いていた。

日本でもそうだが路地裏は大通りとはまた違った良さがある

路地裏を歩いたら少し違う世界が見えるかもしれない。

幸いなことに今は正午過ぎ。夜に行くよりはだいぶましだろう。

僕は地図に載っていない繁華街の路地裏に繰り出すことにした。

厦门の大通りに軒を連ねる店々をよく観察すると、時より店と店の間に人が1人通れるくらいの小さな路地の入り口がいくつかあった。

これを奥に進んでいくと写真のような道が現れた

路地の脇には住居の入り口と思われる扉が多く、これらの路地が大通りと居住区を繋ぐ道であることが分かる。

しかしここで興味深いのは路地には食堂や小さなスーパー、さらには理髪店といった生活に必要な店が揃っているということである。

また食堂のメニューも大通りの食堂が豪華な海鮮料理や厦门名物を謳う料理が多かったのに対して、

路地の食堂は他の地域でも食べられるような麻婆豆腐や青椒肉絲といった基本的な中華料理が安価な価格で提供されていた。

これらの店たちは明らかに路地に住む人たちに向けて商売を行っている。

路地に住む人々が路地の中だけで生活を完結させているのだ。

路地裏街にほど近いショッピングモールが廃墟同然であるのもそのことを証明している。

(土曜日の昼間なのにも関わらず、ほとんど人気のないショッピングモール)

一方で厦门はもちろん経済特区ということもあり、繁華街の駅前には多くの高級マンションが立ち並び、
それと呼応するように駅前に位置する高級ブランドや料理店が入ったショッピングモールは日々賑わいを見せている。

高級住宅街に住む人々は高級ショッピングモール街で生活を完結させているのだ。

そうした駅前から連なる華やかな大通りから一歩路地に入ると、生活に必要なものだけが詰まった空間がある。

大通りを中心とした世界と路地裏を中心とした世界。

たった1kmほどの空間に真逆の性質を持つ世界が詰まっていた。

初日に散歩した時には全く気づかなかった新たな発見に高揚した僕は夢中で路地を探索した。

大通りに出てしまったらもう一度別の入り口から路地に入る。

こうして路地を歩き続けていた僕の目の前に例の空間が現れるのは時間の問題であった。

続く

镇海路→地下鉄の駅

中华城→賑わうショッピングモール

南城广场→廃墟同然ショッピングモール

路地裏街は南城广场を中心に南北に広がっている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?