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神戸からのデジタルヘルスレポート #66 (フェムテック・女性系)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

2020年、第64回でいったん終わらせていたんですが、2021年版として、全5回でお届けしたいと思います! #1はまずデータ系のサービスでしたが、#2はフェムテック・女性向けのサービスをご紹介します。

1. NextGen Jane:スマートタンポン開発

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企業名:NextGen Jane
URL:https://www.nextgenjane.com/
設立年・所在地:2014年・米国カリフォルニア州
直近ラウンド:シリーズA(2019年7月)
調達金額:$11.3M(Material Impact Fund、
Illumina Acceleratorなど)

子宮内膜症は放置すると不妊症を引き起こすリスクがある疾患ですが、現状の子宮内膜症を診断する方法は腹腔鏡検査など相当限定さてています。

NextGene Janeはゲノム情報を収集するスマートタンポンシステムを通じた非侵襲かつ経済的にも負担の少ない診断法開発に取り組んでいます。ベースになっているのはタンポンの素材技術と、そこに付着した細胞を解析するDNAシークエンシング技術。想定利用方法は、ユーザーが使用済みのタンポンをNextGene Janeに対して送付し、後はラボから解析結果が届くのを待つだけ。上記の子宮内膜はもちろん、卵巣がんやクラミジアなどの性感染症についても検出できる可能性があるとされています。

スマートタンポン自体の紹介はこのあたりの記事がよさそう。

初期の紹介動画は↓のような感じ。

世界の不妊治療サービス市場は2023年までに310億ドルに達し、2016年の2倍近くになると予測されています。NextGen JaneのプロダクトはFDA未承認でまだ開発段階にありますが、今後に向けて期待、という感じです。(Webページに製品情報が全然ないのはFDAコミュニケーション中だからか、と一人納得しました)

2019年3月のインタビュー記事で↓のようにあることから、そろそろ臨床試験を終わらせてデータ解析に移るのかも知れませんが、COVID-19の影響もありそうで、今後どんな動きになるかはまだ不透明ですね。

先月のTechnology ReviewのインタビューでNextGen Jane CEOで共同ファウンダーのRidhi Tariyal氏は、臨床試験は設計済みで準備はできているが、経血の診断効果を確立するために約800人の女性で試験する資金が必要だと語った。この資金によって、同社は約2年間有効な量のデータを取得することができるとTariyal氏は言った。
(from TechCrunch

2. Novian Health:乳がんの局所的破壊

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企業名:Nobian Health
URL:https://novianhealth.com/
設立年・所在地:1991年・米国/シカゴ
直近ラウンド:Series A~(2015年1月)
調達金額:$24.7M(iNetworks)

この会社は、「画像誘導レーザー腫瘍治療のリーディングカンパニーになること」という相当ソリッドな企業ミッションを持っており、ビジョンも「診断検出技術の進歩を活用し、レーザー治療を可能にする技術として確立させ、侵襲的な手術やそれに伴う外傷や費用をかけずに、患者の利益のために初期段階で小さな腫瘍の治療を可能にすること」とバキバキです。好きです。

1991年創業の古参スタートアップで、紹介動画も少し古いんですが、スタートアップ感というかまっすぐな医療機器会社、テクノロジー企業という雰囲気がします。

彼らがターゲットにしているのは乳がんで、Novilase Breast Therapyという手術の代わりにレーザ誘発熱で2㎝までのサイズの乳ガンを限局破壊する侵襲性の少ない治療法開発に取り組んでいます。新規性が高く、2020年にはMedtech Innovatorが選ぶTop 50 Medtech Startupsにも選出されています。

そもそもが、シカゴのラッシュ大学医療センターの元外科教授であり乳がんの診断と治療の第一人者であるカンビズ・ダウラット博士が設立者。マネジメントもだいぶシニアです。

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3. MedAnswers:不妊治療相談アプリケーション

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企業名:MedAnswers
URL:https://www.medanswers.com/
設立年・所在地:2016年12月・米国/ロサンゼルス
直近ラウンド:Seed(2019年8月)
調達金額:$5.1M(Viking Global Investors、
Special Situations Life Sciences Innovation Fundなど)

ミッションがとてもまっすぐでいい企業。

Trusted Experts. Answers they agree on.
We are ending the spread of misinformation one healthcare specialty at a time.

信頼できる医療者と、一緒に答えをつくる。
ヘルスケア領域の誤情報拡散を私たちが終わらせる。

世界中にいる4,000万人の不妊症の人々と専門医療者を結び付けている医療アドバイスアプリ、というのが基本の認知なんですが、肥満症や糖尿病、偏頭痛なんかもスペシャリティとして対応している模様。

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2017年にはクラウドファンディングプラットフォームのStartEngineでプロジェクトを行い、88人から$145kを集めています。このページ内で、"Goodbye, Dr. Google!!"と書いているファンキーさ。ミッションからの一貫性。使い方もシンプルそうでよさげでした。

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4. BioAesthetics:乳房切除手術後の再建支援

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企業名:BioAesthetics
URL:https://bio-aesthetics.com/
設立年・所在地:2015年1月・米国/ニューオリンズ
直近ラウンド:Series A/Grant(2020年10月)
調達金額:$6.7M(FemHealth Ventures、New Orleans BioFundなど)

毎年乳房切除術を受ける20万人以上の女性のために、BioAestheticsは乳房再建を受けている患者向けの組織工学による乳頭乳輪複合移植片(NACgraft)を開発・提供しています。また、重度創傷および再建治療のための無細胞再生移植片に製品パイプラインを集中させ、女性の乳房再建の実現への貢献にフォーカスしています。

2021年にStanford Medicineと共同での臨床試験を実施予定です。15名の患者に対してNACgraftを実施し、12ヶ月以上のフォローアップを行うとのこと。完了は2023年を予定。

再生医療は市場に出るまでに最低10年はかかるといわれているが、BioAestheticsはそれよりも早いスピード感で上市できるよう、全力疾走しているようです。応援。

5. Microgenesis:非薬物での不妊治療推進

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企業名:Microgenesis
URL:https://microgenesis.net/en/
設立年・所在地:2019年・米国/ウィルミントン&アルゼンチン/ブエノスアイレス
直近ラウンド:Seed/転換社債調達(2021年1月)
調達金額:$200K(SOSV, IndieBio)

"Women's Wellness First"をミッションに掲げ、不妊に悩む女性に対するソリューションとして、「検査」「栄養補助食品」「個々にパーソナライズしたガイドラインの提供」を提供し、薬物を用いない不妊治療を提供しています。特に、細菌叢に着目をしています。

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フェムテック課題に取り組むスタートアップを紹介するPodcast・FemTech Focusにも登場しています。この領域に関心を持っていらっしゃる方は、ぜひ他のエピソードも聴いてみてください:-)

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