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神戸からのデジタルヘルスレポート #44 (介護・ケア)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回は第44回!取り上げるのは介護・ケア領域の企業です。

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1. CircleOf:ケアコミュニティ構築支援

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企業名:CircleOf Inc.
URL:https://circleof.io/
設立年・所在地:2017年・サンフランシスコ
直近ラウンド:Seed(2018年9月)
調達金額:N/A(Launchpad Digital Health)

CircleOfは、日常生活や疾患への対処に課題を持つ患者さんを支えるコミュニティをオンライン上で構築し、お互いに支え合うことを可能にするサービス。CircleOf上に作られたケアコミュニティでは、患者本人、家族や友人、職場の同僚も支援情報や、知識を気軽に共有することができます。

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例えば、「明日私の妻を14時から17時まで世話してもらえませんか?」とコミュニティにメッセージを送ると、全員がこのメッセージを同時に受け取り、可能な人がそれに対して「はい」のボタンをクリックする、という感じ。どうしても家族に負担が集中しがちですが、その人を知る知人や職場の人にも気軽に助けを求めることができ、電話や個別メッセージで依頼をすることと比べると、心理的ハードルは相当低くなっているのではと思います。

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その他にも、コミュニティ内でのメッセージのやり取りやスケジュールの調整・管理を行うことができます。病院受診や介護サービスなどの日程を瞬時に共有できるので、サポートチーム・支援者の中での情報の非対称性が生まれにくいシステムになっています。素敵。↓が紹介動画です。

会社プランが用意されていることから、B2E的なマネタイズの仕方なのかしら...

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このサービスは、医師、看護師、患者、介護者、起業家ががん患者の支援に焦点を当てて議論を重ねた結果生まれたアイデア。議論の結果みんなが納得・腹落ちしたベストな解決策が「チームとして対応する」ことでした。
実現のハードルはまだまだ高いチーム医療・チームケア、このようなデジタルプロダクトを通じて、またブレイクするーが生まれるでしょうか。大期待!

2. Grayce:高齢者介護包括支援プラットフォーム

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企業名:Grayce, Inc.
URL:https://www.withgrayce.com/
設立年・所在地:2019年・サンフランシスコ
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

2019年設立のスタートアップ・Grayceは、介護を必要としている人とその家族と各領域の専門家をマッチングさせる生活支援サービスプラットフォームを運営しています。医療・ケア情報や社会的支援はもちろんのこと、経済面や法律関連に関しても情報提供、実際の支援が行われています。

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専門家とのやり取りはすべてチャット完結。集まっているのはソーシャルワーク、心理学、老年学、看護などの分野で訓練を受けているプロフェッショナルです。提供されているサービスは↓のような内容。

- 高齢化のニーズに合わせて個別の計画を作成する
- 介護に関するリソースと教育を提供する
- 介護生活における問題と危機を特定し、解決法を提示する
- ケアとケアのニーズを調整する
- 介護者の悩みを聞く

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高齢者介護に関するAll-in-Oneの場を目指して!という感じでしょうか。介護・ケアは、本人はもちろんですが、多くの場合介助する家族にとっても初体験のことばかりのはず。いろんなことに振り回されて精神的に参ってしまうご家族が多いのも事実です。こういうサービスを通じて、本人・家族双方にとってベターなケアが広がっていくといいですね。

3. Rezilient:介護者家族向けのメンタルヘルス支援

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企業名:Rezilient Technologies Ltd
URL:https://rezilient.co/
設立年・所在地:2019年・イスラエル
直近ラウンド:Seed(2019年4月)
調達金額:$100k(Israel Innovation Authority)

さて、そんな介護過程におけるご家族のメンタルヘルスに焦点を当てた、イスラエル発のスタートアップをご紹介します。

介護を担当している家族は、介護対象者の健康を自分よりも優先してしまうあまり、自分の健康に対する管理を怠ることが多くあります。自分の体調が悪くとも介護・ケアを休むわけにもいかず、そのまま症状を放置して重症化、痛みの悪化や抑うつの進行などの深刻な状態につながる可能性があります。

Rezilientは、そんな問題に対処し家族介護者の燃え尽き症候群と慢性ストレスを防ぐために、メンタルヘルスケアを行うプラットフォームです。パーソナライズされたコーチングとチャット上で駆動するバーチャルアシスタントを通じて家族の心理的負担の軽減に貢献します。

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コーチングを行うのは、介護の第一線で活躍してきたプロフェッショナルで、生産的で効率のよいケアへの改善と家族の心理的負担軽減をサポートします。また、独自の機械学習技術に基づく感情分析により、チャット上の会話・コメントから介護者が置かれている状況やストレスを分析・予測し、重大な症状が発生する前に介入を行います。

プロトタイプ感満載の動画ですが、↓にビデオコールのイメージがありました!

近年、介護者に着目したサービスが増加しています。介護者の健康を保つことが、結果として持続的で質の高い介護につながることが認知され始めているということでしょう。

4. Ardora:認知症患者の家族を支援するデジタルアシスタント

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企業名:Ardora
URL:https://www.ardora.co/
設立年・所在地:2019年・ラトビア
直近ラウンド:Pre-Seed(2019年3月)
調達金額:€15k

Ardoraは、音響モニタリングを使用した認知症患者の家族介護者の生活を改善するデジタルアシスタントです。バルト三国のうちの一つ・ラトビアのスタートアップになります。

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日常生活における動作音にはそれぞれ独特の音があります。Ardoraはそれらをスマートスピーカー経由で収集し、独自のアルゴリズムでオーディオパターンを分析することでどのような動作が行われているのかを解析・分類します。介護者はその場にいなくても、認知症の方が動作を完了したかどうかを遠隔でモニタリングすることが出来ます。

これによって、介護者の負担が軽減されるとともに、認知症患者の自立した生活も支援することができます。今まで、カメラやバイタルサインによって遠隔管理するデバイスはありましたが、「生活音」という視点は驚きですね。なるほど。

日本でも、認知症患者の多くが自宅でのケアサービスを受けています。自宅での生活を送っていくために、認知症を改善するのではなく共存していく。その一つの方法として、こういったデバイスがあることがよいのではないかと思いました。

5. Wonderfolks:おむつ式のモニタリング機器

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企業名:Wonderkin .co
URL:https://www.wonderkin.co/
設立年・所在地:2019年・香港
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

もう一つ、認知症をテーマにしたデジタルヘルスプロダクトを。

認知症を抱える高齢者は、相手とのコミュニケーションに苦労するシーンが多く、介護者におむつ交換や皮膚炎などの問題をうまく伝えることができない、という課題が指摘されています。

そんな問題を解決するのが、香港発・Wonderfolksというおむつ式のモニタリング機器です。独自に開発されたおむつにセンサーが装着しており、排尿された場合におむつ交換のアラームが同期したスマートフォンに届きます。

その他にも、転倒した際のアラームや寝たきりの患者さんの床ずれを防ぐために定期的に姿勢を変えるようなアラーム機能もあります。高齢者において転倒や不活動は注意しなければいけない部分であるため、有用な機能ですね。

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この機能は家族介護者にとっても役に立ちますが、介護施設ではさらなる効果を発揮しそうです。介護施設を対象とした製品では、在庫管理やタスク管理を行うためのプラットフォームも兼ね備えているため、人件費の削減や職員の負担軽減にもつながります。

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今後は、赤ちゃんを対象とした製品を開発しリリースする予定だそうです。赤ちゃんのおむつには尿の感知以外に、活動や姿勢の追跡・体温の計測機能が付くそう。

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こんな感じで、介護・ケアをテーマにした第44回でした。
過去分もたっぷり厚くなってきました。マガジンのほうもぜひ見てみてください:-)


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