野安の電子遊戯工房 ~ひさびさにサッカーの話。アジアカップの決勝戦は面白そうだよ、という話です~


 アジア大会では、男女ともにサッカーは決勝戦に進出しました。めでたいことです。ぱちぱちぱち。

 しかも相手は韓国ですよ。盛り上がってきたなぁ。

 ふだんサッカーを観ない人も、この試合は、ぜひ観るといいですよ。いろいろな意味で「面白い」試合なんですよこれ。

 ひとことでいうと、「なにひとつ失うもののない日本」と、「負けたら国全体が悲嘆にくれる韓国」という、とてつもなくアンバランスな構図になっておりまして、そこが注目ポイントなのですね。




 どういうことかといいますと。

 まず知っておいてほしいのは、アジア大会というのは、23歳以下+オーバーエイジ3人というレギュレーションで行われる大会だということです。

 しかし多くの国は、このレギュレーションをフル活用しません。たとえば、日本は2年後のオリンピックを見据え、若い世代に経験を積ませることを目的とし、21歳以下の選手しか呼んでいません。21歳以下でも海外に移籍している選手は呼んでいませんし、Jリーグ各クラブに配慮して、1クラブにつき1人しか呼ばないようにしています。さらにいうと、秋には19歳以下の大会があるため、そちらの年齢層の選手も招集していません。

 ここまでの飛車角落ちで挑んでいるのは日本くらいですが、他の国々も、あえてオーバーエイジを呼ばないといった編成にしているところは多く、どの国も2年後のオリンピック、さらには4年後のワールドカップに照準を合わせ、若い世代に経験を積ませることを目的として、この大会に挑んでいるのですね。

 しかし、韓国だけは、数少ない例外です。

 韓国は、レギュレ―ション許される限りの最強メンバーで挑んでいます。イングランドの強豪クラブでレギュラーCFやってるソンフンミンまで招集しております。本気すぎるにもほどがあるだろ! と呆れてしまうほどのメンバーでございます。

 韓国には、アジア大会で金メダルをとると兵役が免除されるという特別ルールがあるため、韓国サッカー界全員が目の色を変えて挑んでいるのです。「3週間の大会のために韓国人選手の招集に応じても、それで1年半ほどにおよぶ兵役義務がなくなるんなら、クラブにとってメリットがある」の判断し、海外のクラブも喜んで収集に応じるのです。こうして韓国は、アジア大会に、いつもガチなメンバーで挑んでくるのです。





 整理してみましょう。

 経験を積ませることを目的として大会に挑んだ日本は、決勝に進出した時点で、考えうるかぎりで最大の試合数をこなしたことになり、その目的は達成済みです。日本は参加国中もっとも舐めたメンバー構成ですから、ここまで来られただけで万々歳ですし、フルメンバーの韓国に負けたとしても、「この悔しさを糧に成長しなくちゃね」と笑っていられる立場にあるといっていい。

 しかし、韓国は決勝で勝つことが絶対的な目標です、それが悲願です。もし達成できなかったときには、大エースであるソンフンミンが、もっともキャリアを輝かせるであろう時期にサッカーから離れる可能性が高まり、それは次回のワールドカップ出場に黄信号が灯りかねない大ダメージでもあるのです。そんな大失態を、飛車角落ちのメンバー構成で挑んできた日本にしてやられることだけは、絶対に許されないのですね。

 いかがでしょう。アジア大会の決勝は、いろんな意味で「面白い」という言葉の意味が、すこし理解していただけたでしょうか。

 かくして、この決勝戦は、もし日本が勝ったら、次のワールドカップ予選で韓国を苦境に追い込めるという、なんとも大きなものが賭かった試合になりました。こんなの面白いに決まってますよ。要注目でございます。




 とはいえ。

 じつは日本のサッカーファンの中にも「韓国に勝ってほしい」と願っている人が、少なからずいるのが、今回の決勝戦の面白いところ。

 アジア大会の韓国代表の中に、Jリーグ所属選手がいるからです。そのクラブのサポにしてみると、もし韓国が負けると、その選手が兵役に取られてしまうため、クラブにとって大ダメージになるのですね。

 こうして、さまざまな人のさまざまな思いが込められたアジア大会のサッカー決勝戦は、9月1日の夜に行われます。みなさま、ぜひご覧になってくださいませ。きっと楽しい試合になると思います。

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