「スーパーマリオオデッセイ」は、マリオに飽きつつあった人こそ、ぜひプレイすべきゲームだ――というお話(補足)


 「スーパーマリオオデッセイ」は、ほんと素晴らしいゲームだなぁ……。

 ――という、いまさら書くまでもない野暮なことを書きつらねるコラムの、こちらが第3弾になります。

 今回は、コントローラーについてのお話です。「オデッセイ」って、コントローラーの使い方が、ほんと素晴らしいんですよね。みんな、もっとそこに注目すべきだよなぁ、と、わたしは思っております。



 まだNintendo Switchを購入しておらず、「オデッセイ」を未プレイの方に向けて、まずはアドバイスを送っておきます。このゲーム、ぜひとも「2本持ち」というスタイルでプレイしてください。

 Nintendo Switchには、ジョイコンと呼ばれる小さなコントローラーが2つ、同梱されています。これらをアタッチメント(のようなもの)にハメ込むと、従来のゲーム機のように「ひとつのコントローラー」として扱うことができます。

 その一方、2つのジョイコンを、それぞれ左右の手に握ってプレイすることも可能です。これが「2本持ち」スタイルです。

 「オデッセイ」は、この2本持ちのスタイルとの相性が、抜群にいいのです。アタッチメントにハメて、ひとつのコントローラーの形にして操作するのと比べて、段違いに快適さが変わります。

 ただ快適になるだけじゃありません。両手を別々に動かせるようになることで、ゲームのプレイ感覚というか、ゲームの面白さというか、そういうものが変わるんですよ。いったん「2本持ち」を経験してしまうと、それ以外の持ち方が考えられなくなってしまうほどです。この感覚、ぜひとも多くの人に経験してほしいなぁ、と、強く強く願っています。



 なぜ、「2本持ち」だと快適なのか?

 それは「オデッセイ」が、帽子を投げるゲームだからです。今回のマリオは、敵キャラに帽子を投げつけ、命中させると「敵キャラに乗り移れる」ようになるゲームだ――というところまでは、テレビCMなどを見てご存知でしょう。

 でも、マリオが正面に立つ敵キャラに向けて帽子を投げて、100発100中の精度で敵キャラにぶつけるのって、けっこう難しいんですよね。ときどき失敗しちゃうんですよ。

 なぜなら、3D空間の中を、360度、自由に動き回れるようなゲームでは、敵キャラにぴたりと正対するのが難しいからです。これは3Dゲームの宿命ですね。ときには、ちょっと角度がズレてしまうこともあるわけです。

 そうすると、マリオが投げた帽子は敵キャラに当たりません。するするする……と、帽子が敵キャラの脇を通り過ぎてしまいます。しまったぁぁぁ! 方向を間違えたぁぁぁぁ! と叫びたくなるような大失態が、ときどき起きちゃうんですね。



 でも、ご安心ください。

 そんな事態になっても、「2本持ち」でプレイしていれば、まるで問題はありません。

 もし方向がずれていたときは、帽子を投げた後に、くいっ、と右手に握っているジョイコンを振ればいいからです。目標よりも、ちょい右に帽子を投げてしまったときなら、くいっ、とジョイコンを左に振ると、帽子が左に動いてくれます。ちゃんと敵キャラに命中するんですね。

 この「くいっ、と手首をひねる操作」が、すっげぇ気持ちいいんですよ。ゲームに慣れてくると、無意識にできるようになるはずです。そして、その快適さから離れられなくなっていくことでしょう。

 こうなると「2本持ち」以外のプレイスタイルなんて、考えられなくなります。なにしろ、ばしばしと、帽子が敵キャラにヒットするようになります。快適さが、まるで違ってくるんですよ。



 大袈裟に言うならば、この「投げた後に微修正できる」という仕組みを持つことにより、「オデッセイ」は、3Dゲームに、ちょっとした革命を起こしたといっていい。

 前述したように、3D空間を自由に動けるゲームでは、敵キャラにぴたりと正対するのが、けっこう難しいのです。このため「モノを投げつける、あるいは撃つ」という遠距離攻撃アクションを導入したとき、プレイヤーに多大なストレスがかかるんです。ちょっとでも角度がズレると、攻撃がヒットしなくなりますから、つねに「きちんと正対しなくてはならない」というストレスがかかってしまうのですね。

 このストレスを回避するために、たとえば「バイオハザード」などは、自動的に(あるいはワンボタンで)敵キャラに正対する、という仕様になっています。「ゼルダ」などもそうですね。キャラクター側が、勝手に「ぴたりと正対する」という補正をかけてくれるわけです。

 剣という武器は、古今東西、基本的に「振り下ろす」という攻撃をするためのものですが、ゲーム内で剣を振るキャラクターの多くが「横に薙ぎ払う」ようなアクションをするのも、同じ理由からです。ぴたりと正対しなくても(ちょっとくらい角度がズレていても)敵キャラにヒットするようにして、きちんと正対しなくてはならない、というプレイヤーのストレスを軽減しているのですね。

 他にも、いろいろなストレス軽減法が編み出されていますが、すべてを書き記すのは無理なのでパスします。いずれにしても、3Dアクションゲームの歴史というのは、「敵キャラと正対しなければならない、というストレスを、いかにして軽減するか」のアイディアを模索する歴史だ、といっていいのかもしれません。

 そしていま、「オデッセイ」が、その歴史に新たな1ページを加えました。「コントローラーを左右の手に持ち、その一方を振る」という操作を導入することで、正対していない敵キャラへの遠距離攻撃を的確にヒットさせることを可能にし、ぴたりと正対しなくてはならない、というストレスからプレイヤーを開放してみせたのです。

 ハードウェアとソフトウェアを、同時に作る――という、任天堂ならでは製作体制が生み出した、なんとも画期的な解決法といえましょう。



 ――とまあ、ちょっと難しいことを書いてしまいましたが、そんなに深く考えなくてもいいです。

 ようするに、「オデッセイ」というゲームは、敵キャラを攻撃するとき、「おおよその方向に帽子を投げればいい」というゲームになっていることが、素晴らしいんだよなぁ……とだけ理解してください。

 でも、これによって、自由自在に走り回り、ときにジャンプして、あらゆる方向へと動けるという軽快なアクションの楽しさと、本来ならば、敵キャラに正対しなくてはならなため、じっくりと狙いを定めなくちゃいけない、というストレスがかかるはずの「遠距離攻撃」の楽しさを、同時に成立させてしまったわけですよ。

 このアイディアは凄いなぁ、と感心するしかありません。

 ぴょんぴょんジャンプして、着地したと同時に「おおよその正しい方向」を向いた瞬間に帽子を投げ。そして、その後に右手の動きで帽子を微調整し、ぴたりと敵キャラにヒットさせる! といった一連の動きが、いずれ無意識のうちにできるようになってきます。これ、すごく気持ちいいんですよ。ほんと快適です。



 というわけで、「オデッセイ」は、コントローラーの使い方が素晴らしいゲームである――という趣旨が、どうにか伝わったでしょうか。

 ほんと、この操作感覚は、ぜひとも経験してほしいなぁ。実際にプレイしてもらえれば、わたしが書いていることが、より理解できるかと思います。

 また、「2本持ち」には、もうひとつ、優れた点があります。

 これまで、ゲームをプレイするとき、わたしたちは両手でひとつのコントローラーを握っていました。肩をすぼるような体勢で、体を固定するようにしてプレイしていました。それに比べて、両手を別々に動かせる「2本持ち」は、身体への負担がものすごーく少ないです。わかりやすくいうと、肩こりが起きにくいです。

 ゲームで肩こりなんか起きないよ! ――という人もいらっしゃるでしょうが、いやいや、歳を重ねてくると、けっこう切実な問題なんですよ。そういった身体への負担も含めて、「2本持ち」のゲームが、もっともっと増えないかなぁ、と期待している昨今です。



 さて。

 ここまで「オデッセイ」に関して3本のコラムを書いてきましたが、まだ書ききれなかったことがあるので、もう少し続きます。次回でラストかな。

(「補足2」へと続きます)

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