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"手助け"のゲーム史~3~ "手助け"文化が浸透した国では、「ネトゲ婚」が増加する?

 大昔、テレビゲームは、ひとりで黙々とプレイする遊びだと思われていました。

 そんな風潮があったことを、若い世代の方々はピンと来ないかもしれませんね。でも、うちの子、いつもゲームに没頭してばかりで、ちゃんと友達と遊ばないのよ、ちゃんとした大人になれるかしら……なんて苦言を母親が口にするのが当たり前だった時代が、本当にあったのです。

 そこから時代が流れ、ゲームは「孤独な娯楽」から、「みんなで楽しむもの」へと、そのイメージをゆっくりと逆転させていきました。それがゲームの歴史です。

 では、いつ頃からイメージが逆転したのか。全世界規模で考えると、それは00年代あたりだと思われます。その証拠として、00年代に入ると、大作ゲームと呼ばれるソフトに「ゲームが下手なプレイヤーのため、上級者がサポートするためのモード」が導入されるようになったことが挙げられるよね――という話を、第一回目に書きました。

手助けのゲーム史~1~ どの時期に、ゲームの腕前は「親>子供」に変わったのか

 なお、日本では、ゲームで"手助け"する楽しさを、さらに昔から自然と身につけていたように観察されます。だってゲームセンターの時代から、わたしたちは"手助け"しながらゲームを楽しむ文化を持っていたじゃん――という話を、第二回目に書きました。

"手助け"のゲーム史~2~ 日本という国の治安の良さが"手助け"の文化を生んだ



 さて。3回目となる今回は、その続きというか、ちょっとした補足的なお話です。

 これまでの2回のコラムで説明したように、ゲームに"手助け"の文化が浸透していった時期は、おそらく、それぞれの国でバラつきがあるわけですよ。

 だったら、そのバラつきの度合い、ぜひ知りたいと思いませんか?

 この国では、かなり長いこと「ゲームは個人で遊ぶものだ!」という考えが主流だったけど、こっちの国では早い時期から「ゲームは手助けしながら遊ぶものだ」という考えが広まっていった――みたいなことがわかると、それぞれの国のゲーム文化の違いが見えてきて、すごく面白そうだよなぁと、わたしは思っているのです。

 でも、そんなデータ、どうにも調べようがないんですよね。世界各国で、どのようにゲームが遊ばれていたのか? それを時代を追って調べるのは、めちゃくちゃ難しいです。

 でも、もしかすると、もっと簡易に調べる方法があるのかもしれないなぁ、と最近、思い始めるようになりました。たとえば各国における「ネトゲ婚」の増加率を調査すると、"手助け"文化の浸透度合いを判断できるんじゃないか? というのが、今回のコラムのテーマでございます。





 ネトゲ婚という言葉を、最近よく耳にするようになりました。

 厳密に定義していくと難しい話になりそうなので、ここではオンラインゲームで出会ったことを機に結婚することを指す言葉、として話を進めます。

 昨今、そんな結婚をした夫婦は、まるで珍しいものではありません。日本中にたくさんいるでしょう。(もちろん、世界中にもたくさんいるでしょう)

 なので、それぞれの国で、ネトゲ婚で誕生した夫婦がどのくらいいるのか? そんな結婚が増え始めた時期はいつなのか? そのデータを、誰か調べてくれないかなぁ――と、わたしは願っています。それによって、ゲームの"手助け"文化が浸透していった歴史がわかるんじゃないかなぁと。

 だって、オンラインゲームで、各プレイヤーが相手のことを気にせず、他プレイヤーは自分が勝利するために叩きのめす対象だ! という考え方が主流であったなら、そこでネトゲ婚は発生しにくいと思うんですよ。

 オンライン上で殺伐とした殺し合いをしていたプレイヤー同士が、「うお! あのプレイヤー、いつもいつも無慈悲にこっちを殺しやがる!」と感じ、でもそれを機に関心を抱き、愛が芽生え、いずれ結婚に至った――という物語は、ちょっと考えにくいですからね(笑)。




 もちろん、そんな殺伐とした出会いから結婚に至る可能性はゼロではないですし、そんなエピソードを機に結ばれた夫婦がいたら、なにそれ! めちゃくちゃ格好いいじゃん! と個人的には思いますが、それはかなりのレアケースだと思うわけです。

 やはりネトゲ婚というのは、一般的には、「あの人が、ゲーム内で手助けしてくれた」「親切にしてくれた」「気配りしてくれた」みたいなことがあり、つまりはゲームを介してコミュニケーションをとり、互いのことを気遣っているうちに「相性がいいかも」と感じ、生まれるものなんじゃないかなぁと。

 だとすると、ゲームで"手助け"することが一般的なプレイ方法として広く浸透しないと、ネトゲ婚は増えていかないような気がするんですよね。論理的に考えると、そうなるはずだよなと。

 ならば、世界各国のネトゲ婚の状況を調べていくと、それぞれの国での「ゲームで手助けし合う文化」の浸透度が、そこそこ信頼できるデータとして出てくるんじゃないかなぁ――と、わたしは思うのです。

 まあ、結婚のきっかけなんてものは「人それぞれ」「十人十色」なので、なにひとつ断言めいたことは言えないんですけどね。




 でも、ここでは、互いに"手助け"し合ったプレイヤー同士の方がネトゲ婚にいたる可能性は高いだろう――という仮説が正しいものとして、いったん話を進めます。

 まずは、日本におけるネトゲ婚について。

 その歴史は、けっこう古いです。わたしの知る範囲での最古のネトゲ婚は、おそらく1996年になります。

 当時の主力ゲーム機はスーパーファミコン。このマシンは、ごく短い期間ではありますが、XBANDと呼ばれるオンライン対戦システムに対応しておりまして、『スーパーマリオカート』など、いくつかの対戦ゲームがオンラインでプレイできました。

 ここでのオンラインプレイを介して出会った男女が、結婚に至った例があるのです。ゲーム雑誌で記事にもなってます。(わたし、編集部のバイトとして、その記事の入稿作業のお手伝い作業をした記憶があります)

 というわけで、およそ30年前には、日本ではネトゲ婚が存在していたことは確実です。そのご夫婦、そろそろ還暦前後の年齢になっていることでしょう。

 もちろん、もっと古い時代にもネトゲ婚があったかもしれません。でも家庭用ゲーム機(のような、ごく普通のゲームユーザーが楽しむゲーム機)でのネトゲ婚は、このあたりが最古の事例になるんじゃないかなぁ。




 一方、日本以外の国では、どうなのか?

 正直に言いますが、わたし、なにもわかりません。データがないからです。

 なので、どこかの全世界的なゲーム系メディアが、それぞれの国で「ネトゲ婚」をした夫婦のエピソードなどを大々的に募集して、世界各国の情報を集めてくれないかなぁ――と期待しているのです。それぞれの国で、どのあたりの時期から、ネトゲ婚が増えてくるのか? そのデータを、わたし、めちゃくちゃ知りたいです。

 おそらく、日本ではネトゲ婚の事例が早くから存在し、欧米などは、ちょっと遅れてネトゲ婚が増えてくるんじゃないかな? と個人的には推測しています。

 1996年にスタートした東京ゲームショウは、初年度からカップルが当たり前のように来場していました。その数年後には、小さな子どもを連れた若い夫婦も目撃できました。

 ほぼ同時期(1995年)にスタートしたアメリカのゲーム展示会E3は、わたしも取材に行ったことがありますが、そういうカップルの姿は少なかったんですよね。もっとも、初期のE3は一般向けのものではなく、「業者向けの展示会」であることを差し引いて考えないといけないわけですが。

 とはいえ、そんな体感的な感覚でいうと、ネトゲ婚事情に関しても、日本は世界の平均よりも、ざっくり10年くらい時代を先取りしていたんじゃないかな、と個人的には予想しております。

 これは、あくまでも個人的な予想なので、なんの根拠もありませんけれど。




 というわけで、"手助け"文化に関する歴史を調べるには、ネトゲ婚について調べればいいんじゃないか? という仮説を立ててみたよ――というお話でした。

 なお、"手助け"については、まだ書きたいことが、まだちょっとだけ残っておりまして。

 なので"手助け"に関するコラム、もう少しだけ続きます。次は『ポケモン』の話をします。

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