野安の電子遊戯工房 ~今回のワールドカップ、テレビは放送はすごくがんばったと思う~


 ワールドカップが終わっちゃったぁ。フランスおめでとう。

 いやあ、今回のワールドカップは面白かったなぁ。ここ20年くらいで、いちばん面白かった! ――と世界中の人がそう思っているような気がします。出場できなかった国とか、早期敗退が決まってしまった国とかの人は異論があるのでしょうけれど。

 どうしてこんなに面白かったのか、ということを分析した記事が、これからいろいろと登場してくるでしょうし、わたし自身もいろいろと発信したいことはあるのですが、それは別の機会にゆずることにして、とりいそぎテレビ放送に関して書いておこうと思います。

 今回のワールドカップでは、テレビ報道が、すごくがんばったよなぁ――と、個人的には高く評価しています。

 テレビ報道って、「ここが物足りない」とか「こういうところが駄目だ」とか、ついつい欠点をあげつらう方向で指摘されがちで、そういう意見がネットでは目立ちましたし、たしかにスポーツニュースとか、ワイドショーとか、それらの番組が「ピント外れな事前解説」をしていることも多々ありましたが、それは今になって始まったことではなく、そもそもサッカーに詳しくない人に少しでも興味を引くよう作っているのでしょうから、とくに非難するつもりはありません。

 だから、もっと「いいところ」を探してあげようかな――という視点でテレビ報道を見ていると、なんか今回は、いろいろと面白い試みをしているテレビ局があって、すごく楽しかったんですよね。それらのチャレンジは、もっと正当に評価してあげるべきだと、わたしは思います。




 とりわけ、TBSの特番は素晴らしかった。

 フランス―アルゼンチンの試合の副音声は、素晴らしく楽いものでした。ラモスさん、前園さん、加藤浩次さん、そして竹内涼真とすという4人のサッカー馬鹿が、言いたい放題でコメントしまくるという構成で、プロの話芸の持ち主による豪華なニコニコ動画といった趣。そのお茶の間感は素敵でした。

 そして試合後、そのまま長時間の座談会番組へと姿を変え、いろいろな議題を語り合うスタイルの特番に突入。優勝国予想から、日本代表監督は日本人のほうがいいかどうか、といった微妙な話題までを、堂々とテレビで語り合いました。

 海外でワールドカップを見ていると、試合後に、こういった座談会形式のトークが始まることが多いんだけど、それを日本にも導入して、ちゃんと面白い番組に仕上げてみせたのは素晴らしいですよ。こういう番組に挑戦したTBSの心意気に、拍手を送りたいと思います。

 ノックアウトステージに突入すると、延長→PK戦になる可能性があるので、テレビ局は最初から1時間ていどの余裕をとった番組編成にしているため、90分で決着がついた場合、そこに「余った時間」が生まれます。その時間の使い方として、熱気冷めやらぬうちに座談会をする、という構成にしたのは、TBSのファインプレーでした。




 試合中の解説者についても、ちょっとだけ書いておきましょう。

 今回の大会で、わたしがいちばん高く評価する解説者は、「福田+戸田」のコンビです。これは異論のある方も多いかもしれません。

 でも、この2人のコンビネーションって素敵でした。見たまんまのことをしゃべるだけの福田さんは、単独の解説者としては物足りないし、ややヘッポコではあるんだけど、ここに戦術的なことを細かく説明していく戸田さんがコンビとして加わると、漫才でいうところのボケとツッコミが成立しているかのような、なんともバランスのいい解説になっておりました。今後、TBSが代表Aマッチを中継するときは、この2人のコンビでの解説をお願いしたいところ。

 単独の解説者として抜群にうまいのは、この2人分の仕事をひとりでこなしてしまう松木さん。やはりこの人の解説は面白い。ノリだけで解説しているように見せて、ちょこちょこと「〇〇のポジションが上がって、××を押し込み始めたのが効いてるよね~」といった、戦術的なワンポイント情報を加えていくあたり、やはり上手いです。解説者として百戦錬磨。過不足がないんですよね。

 NHKでは、岡田さんの解説が、やはり上手いですよね。ロジカルに説明しつつ、でも「サッカーは、最後は理屈じゃないんだ」というところに踏み込んでくる解説は素晴らしかったです。




 最後に、ちょっとだけ苦言なのですが、今大会、小柳ルミ子さんの扱い方は、ちょっともったいなかったなぁ。

 有名な女性芸能人であり、サッカーにハマってしまって以後、連日のように試合を見まくっているという稀有な人材なので、番組の作り手として重宝したくなるのはわかるんだけど、ちょっと扱い方が雑すぎる。「とりあえず呼んでおいて、毒舌込みで言いたいことを言ってもらえばいいや」的な、テレビ屋さん視点の撮れ高優先の扱いになっていました。

 いまのルミ子さんは、「サッカーって素晴らしい! こんな素晴らしいスポーツを行っているトッププレイヤーたちは、みんな無条件にリスペクト!」という時期を経て、すこしずつ知識や経験を増やしたことにより、「わたしが好みのプレーをする選手は大好き! そうじゃない選手は大っ嫌いよ!」という時期に突入しています。自我が芽生えてきた幼児に訪れるイヤイヤ期みたいなものです。だから否定的なフレーズを含んだ毒舌が増えている。

 これは、サッカーにハマって人なら、誰もが通る道です。このイヤイヤ期を越えると、「汚いプレーも含めて、それがサッカーだ」といった諦観といいますか、清濁すべてを併せ呑んで、ありのままにサッカーを楽しめる心境に到達するなのですが、ルミ子さん、まだその領域には到達していません。

 そのような人材を番組に使うなら、暴走気味に毒舌を吐きまくったとき、「ルミ子さん。それは言い過ぎです」とたしなめてくれる大御所とセットにしてあげないと、ただの「わがままなタレント」として映ってしまって、本人を含め、誰ひとり得をしない。イヤイヤ期の幼児を、好き勝手に行動させちゃいけないんですよ。

 番組サイドにそのような配慮がなかったため、結果として、テレビ局はルミ子さんを晒し物にしてしまった。ほんと、よくないなぁと思うんですよね。こういうの。

 

 

 

 もうひとつ、ちょっとした苦言を。

 テレビ局で流れるワールドカップのテーマ曲って、どうにかならないかなぁ。今回の曲が良くないとか、そういうことではなくて、せっかくFIFA公式の全世界共通のワールドカップテーマ曲があるんだから、そちらをガンガン流してほしいと思うんですよ。

 そちらの曲、なんで流さないんでしょうね。権利関係とか、お金の話とか、そういうのが面倒くさいのかしらん。

 がんばって世界に追いつかなくちゃいけないとか、ワールドスタンダードがどうのこうのとか、そういった視点から日本代表を語ったりしている番組で、そこで流れている曲がワールドスタンデードの公式テーマ曲ではなく、日本でしか流れない独自のテーマ曲だというのは、出来の悪いブラックジョークのようです。いちばん世界標準に目を向けてないのはメディアじゃねーか、というツッコミ待ちの状態です。

 次の大会では、いろいろなところで、ちゃんと公式テーマ曲を使ってほしいなぁ。ぜひ検討してほしいところです。

(2018/07/13)

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