筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)とコロナ後遺症の呼吸についての考察


筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の病態には脳の神経炎症、B細胞の増加などいくつか仮説があるようですがそのひとつとして循環障害がかなり関係するだろうと言われています。

脳や筋肉の活動をするのにそれに見合った血流酸素供給がなされ、それによりATPが作成されなければいけないのに、それができない、組織の低酸素状態になっているのではないかということです。

コロナ後遺症でも微小血栓や血管内皮の障害、迷走神経障害(交感神経優位)などで血流が低下したり、肺の拡散能の低下や迷走神経障害による呼吸機能の低下、呼吸関連筋の緊張から来る呼吸の浅さなどによる組織の酸素不足が関係するのではないかと考えています。

またコロナに感染するとミトコンドリアが過大に酸素を消費するようになり全身の組織が酸欠に陥るという最近の研究も拝見しました。いずれにしても筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)、コロナ後遺症のどちらでも血流と酸素というのは重要なファクターだと思います。

またミトコンドリアの機能低下がコロナ後遺症では指摘されていますがミトコンドリアが機能低下したとしても新しく作られます。それを促進するのが有酸素運動なので、深い呼吸をしながらゆるゆると身体を動かすのが大切と考えています。歩けるようになれば深い呼吸をしながら無理なくゆるゆると歩くことが非常に重要です。ですがいきなりそれをすると倒れるので無理のない段階から始めましょう。


まずは横になり自然に深い呼吸になるようにします。次に深い呼吸ができるような練習をします。次に深い呼吸でゆるゆると身体を動かします。そこから少しずつ負荷をあげていき、座って状態で深い呼吸をしながらごく軽い足踏みから始める、そしてゆっくりとした室内歩行、最後に外での歩行という順番が大切と考えています。

これらを各PSごとに無理なく実施できると大変有益だと考えています。

横になり自然に深い呼吸というのは呼吸リハの0番、1番、2番などです。深い呼吸の練習というのが呼吸リハの4番など。深い呼吸でゆるゆる動かすというのは呼吸リハの7番、8番、9番などです。


実施時間や休憩時間は平畑先生 のペーシングのサイトを参考にしてください。歩く際には歩数に合わせて吸うと吐くを1対1の割合にして呼吸すると良いと思います。


ちなみに息を吸った状態でしばらく止めておくのをヨガではクンバク、ダイビングではドライスタティックと呼びます。訓練により息を止める時間が長くなりますがこれは高二酸化炭素状態に慣れCO2のセンサーが鈍くなる事で長時間潜れるようになると言われています。一昨年のセッションでそれなりの数の参加者にも試してもらいました。ドライスタティックは酸素を利用する能力が上がると言われていますがコロナ後遺症に関しては長期的な効果はあまりないように感じました。むしろセンサーが鈍くなることで酸欠に気がつかなくなるリスクもあるのでは?とも思います。

また素早く激しい呼吸をくり返すトレーニングをハイパーベンチレーションと呼びます。これも呼吸機能が上がるとも言われていますがコロナ後遺症の方は悪化させるリスクがあります。色々な呼吸法を試しましたが、悪化の危険を排除するとまずはゆっくりした呼吸、そして段々と長く吐けるようにしていく呼吸というのが安全だと思い、それを勧めています。色々試した結果コロナ後遺症の場合には呼吸法のみで呼吸苦を取るというよりも歩くなどの軽い運動を組み合わせていくことで血流や心肺機能をあげていくのが良いのではないかと考えています。

ただ、まず最初は自然に深い呼吸になる姿勢をたくさん取ること。次に深い呼吸の訓練をすること。そしてゆるゆると動かすこと。それから深い呼吸とともに歩いたりしていくこと。大切なのは順番であり段階的に進めていくことだと思います。そして実施時間、休憩時間を間違えないことです。

このようにしていけば身体も段々と元気になり新しいミトコンドリアもより多く作られていくのではと考えています。

呼吸リハのテキストPS8〜9

呼吸リハのテキストPS6〜7

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