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十二月の六月柿

鳥取と浜松の取材が立て続けに入った。

まず東京から鳥取へは飛行機。ここは悩まない。曲者だったのが鳥取から浜松への移動だ。最短ルートを取るなら空路で羽田に戻ってから京急で品川に出て、新幹線で浜松。およそ2時間半。

けれども、鳥取から浜松を飛び越して東京に向かい、また引き返してくることにどうしても抵抗があった。これはもう、理屈じゃない。

結局僕は鳥取から特急で3時間かけて京都に行き、新幹線に1時間乗って浜松へ向かった。

「収穫が多ければよいという単純な話ではありません」12月なのに汗ばむほど温められたハウス内に実ったトマトを前に、取材先の農業経営者は語った。

「需要を超えて出荷すると単価が下がり、もはや最初から何もつくらなかった方が赤字を小さくできたことになります。販売データから需要を予測し、生産量を調整することが利益につながります」

僕は心から納得して、何枚もシャッターを切った。

#旅する日本語 #六月柿

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