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千鳥ヶ淵が満開になる前に、見ておいてよかった

桜の満開が待ち遠しい。でも、開花が遅くて良かったこともありました。

小さなことですが、千鳥ヶ淵近辺がまだ落ち着いていたこと。その近くにある東京国立近代美術館は好きな美術館の一つで、没後初めての中平卓馬の回顧展を見るために先日ふらっと行ったのです。

編集者としてスタートし、その後写真家となった中平さんの初期の写真が載った雑誌から、1977年前後の記憶障害を経て2005年に亡くなるまでの作品が、しっかりキュレーションされて展示されていました。

作品もそうですが、どんな人が来ているかがいつも気になります。目を凝らしてメモを取る男性、スマホで写真を撮る人、海外からの旅行客3人グループ。目に留まった人の多くは20代に見えました。写真家としての中平さんに関心があるのか、あるいは昭和という時代に関心があるのか……。

展示方法によるものも大きいと思いますが、私が印象に残ったのは記憶障害前後で作風が一転しているところ。自己否定と変革を体現しているようでした。それを作家自身も言葉にしています。

「自意識を解体すること、それをすすんで引き受けること、それが私の考えること、その自意識の解体と再生を自らすすんで引き受けること、それが写真家として止む事なく私が考え、引き受けつづけることである」

(Takuma Nakahira Tabloid Photobook)


変革、変化、再生という言葉があふれる今。この回顧展では自己否定の潔さに目を奪われました。

(2024.3.28)

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