FAのカイル・ケラーを、現役ドラフトで馬場を獲得

うっすらとタブー視され続けていた阪神産の投手二人を獲得するなど、なりふり構わぬリリーフ補強に動く巨人軍。獲得した両者は、泉,近藤ら同様に戦力アップにこそなるが、堀岡を実践的にしたような、それ単体では日本一を目指すチームのセットアップとしてはやや弱い。しかし、リリーフにはシナジー効果が期待できるため、肘を振り上げた大きなテークバックで、重心を落とし、ベースの左右で勝負するドアスイングの横手投げでチマチマと繋いでいた部分を、1イニング完了できる投手に刷新することができれば、特定の投手に負担が掛かるケースが減り、全体のボトムアップ、レベルアップに繋がるのである。

馬場は、テークバックでM字を描くが、肘は緩く曲がっていて、手が上がってくるのも早いので、巨人軍基準では"後ろ"が小さい。低級マウンドで踏み込み脚が進展しきらず、接地後もズレることが多く、それが調子の乱れに繋がっているように見えたが、上級マウンドにおいては踏み込み脚が伸展し、しっかりと反力を得られてビッグエッグとの相性の良さを感じた。

ケラーは、テークバックが肘から上がり"逆L"の肩になるが、ロペスよりは前腕の回外は早く、コンパクトで"間"が取りにくい。上半身の開きが早く、コッキングで肘が畳まれず、インパクト(投球時)の際に軸足が浮くという要素から、肘にストレスが掛かるスイングである。投球時の前脚の伸展は非常に強く、エネルギーを変換できていて球威においては問題ないと言える。投球時に両脚が激しく"割れる"(O脚の形)のは、制球難の原因になるため、高めの直球でストライクを取るのではなく、低めに集められないだけなのかもしれない。フィニッシュにおいて上半身~右脚のラインと左脚がTの字になるくらい大きいフォロースイングが取れている。

阪神球団としては、スイングの完成度という観点で言うと、後半戦のパフォーマンスから馬場には一定の価値を付けた上で放出した一方で、ケラーにはこれくらいの投手と起用法で揉めるなら、新しい選手と契約してしまった方が良いという価値付けだったのではないだろうか。これらは、あくまで断片的な資料や記憶から導き出したレビューであることに加えて、身体の使い方や環境が変われば結果も変わるため、選手の価値を測るうえで過去の数字などを眺めていてもあまり意味がないのである。

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