巨人軍ドラフト2023(総評)

「2023年計画」最終年における足りない要素の補填

2019年シーズン(2018年10月)より始動した、第三次原政権による"2023年5ヵ年計画"という筆者以外誰も覚えていないプロジェクト最終年のドラフトで、わが巨人はまさかの社会人ドラフトを敢行。低級の阿鼻叫喚の絶叫が聞こえてくるが、2023年までにある程度の編成を完了させるという中期的な目標を鑑みると、おのずとその意図は見えてくる。ちなみに2023年計画の進捗に関する記事もいつか執筆予定である。

野手
95~99年生まれの中堅層の枯渇
00年生まれ以降においては戦力に成り得る選手が少しずつ出てきてはいるが、来シーズン25~29歳になる学年では岡本以外だと北村,岸田,オコエ,喜多,岡田,湯浅とかなり厳しい状態と言えるため、年齢バランスを考慮して99年生まれの佐々木と泉口を獲得した。

坂本&丸のコンバートに伴う野手デプスの再構築
坂本と丸をコーナーにコンバートしたことで、単純計算で二遊間とセンター要因がそれぞれ足りなくなったこと。加えて、重信,若林,増田大輝,松原らのバックアッパーが肉体的・技術的に通用しなくなったことで、試合終盤における走攻守のレベルが落ち、接戦に競り負けるケースが多くなった。そこに肉体的全盛期の佐々木・泉口が加わることで野手特にセンターラインの層(デプス)が再構築され、トータルベースボールにおける完成度を高める狙いがある。

投手
2010年代のドラフト失敗により、1990~1997年生まれの先発投手が壊滅と言える惨状になっていること。01年世代の大学生投手の層が評判ほど厚くないこと。先発陣に左投手が少ないこと(契約が流動的な外国人は見込み編成に含めない)を主な理由として、社会人でプレーする1997年生まれの森田に白羽の矢が立った。幸い98年生まれ以降は山崎,赤星,戸郷,西舘と上質なスターターを一学年ごとに確保できているため、その上の空白地帯を埋めに言った形になる。

手から上がってくる小さいテークバックでオーバーハンドから曲がり球・落ち球を投げられる又木を獲得し、変則が多く勤続疲労で弱体化している左リリーフ陣の補填を狙った。インステップが強く身体の開きが早い変則投手は強いチームのブルペンには少ない。育成1位の三浦も確認した限りではスライダーとのツーピッチだが、しっかりとオーバーハンドで投げられる左リリーフである。

まとめと傾向

「25歳以下には希望が見えてきたけど中堅がしょぼいから補強しましたよ」という勝てないチームにありがちな収束をしたこと。「若手が育つまで雌伏の時期が続く」なんて悠長なことは考えておらず、次世代の獲得を一時的に放棄してでも、年齢・デプス等の編成を整え、投手を中心としたトータルベースボールの完成度を高めることで、来シーズンの優勝を狙いに行くという宣言を事実上したこと。

今年のドラフトの特長は何より独立リーグからの大量指名だな。プロに選手を送り込むことが最大の目的の一つだから、1年でも肉体的に若い選手をしがらみなく獲得することができる。アメリカ球界における独立リーグの大半が2Aという位置付けにされているんだけど、似たような感じで四国リーグ・BCリーグあたりは事実上の3軍のような位置付けになってくだろう。

大社捕手の氷河期は今年も続いたな。支配下5人しかいないから1人くらい取ると思ったけど。確かに捕手って6人いれば2軍までならシーズン回せてしまうから積極的に取る理由もないんだよな。ましてトップに大城みたいな頑丈な選手がいると尚更。

投球のレベルアップとコロナ違反球もあって、打低が加速して高校スラッガーにも厳しい現実が降りかかった。「打つだけの選手はいらん」ってやつ。単純に育成難易度も上がっているのあるけど。好投手を打ち砕くためのトータルベースボールの重要度が相対的に増して、育成で獲得した野手も二遊間ばかりで、カタログスペック上は俊足な選手が多い。

低反発金属バットの導入もあって更にアピールがしにくくなる。そもそも道具を意図的に打低仕様にすることで本物が炙り出せるというのも眉唾だな。木製と金属とでは芯の位置も違うし、打感も違うだろうし。未完成のフィジカルで重めのバット振ると余計にドアスイングになりそうだし。一部の選手以外はまともにスイングさせてもらえなくなるんじゃねーか。安全性が担保される代わりに、遠くに飛ばしたいという原初的欲求を奪う形にならなきゃいいけどな。


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