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「“若者の自信を生み出し循環させる社会”を創りたい」代表理事が語るブランディングポート設立6年の軌跡と展望

当初は小規模な就活支援から活動をスタートし、現在はキャリア支援全般まで支援領域を広げているブランディングポート。
2022年には特定非営利活動法人として、さらに活動を拡大しています。設立からこれまでの歩みや苦労、活動の裏にある想いなどを、代表理事の安藤奏さんに聞いてみました。

安藤奏(あんどう  かなで)
特定非営利活動法人ブランディングポート代表理事

幼少期から高校までNHK「天才てれびくん」など芸能活動を経験。大学卒業後、東京ディズニーリゾートを運営する株式会社オリエンタルランドに入社。店舗マネジメントや人事部にて人材開発に従事する。その後独立し、新人・若手社員に特化した教育研修会社を経営。
一方で、日本の若者の自己肯定感・自己効力感の低さ、キャリア自律を促進する教育が整備されていない社会課題を解決するべく、特定非営利活動法人ブランディングポートを立ち上げ、大学生のキャリア支援・プログラム開発に携わる。

学生5人の就活支援からスタート。「キャリア支援団体」に広がるまでの軌跡

ーブランディングポートの立ち上げに至った背景を教えてください

2017年の設立当初は、今のようなキャリア支援ではなく、学生一人ひとりの就職活動を成功体験に変えるための「就活支援」を目的にしていました。大学時代に所属していたゼミナールの学生を中心に5人と、かなりスモールな支援からスタートしています。活動を続けるにつれ、支援した学生の口コミ等で少しずつ組織の規模が拡大していきました。
私は前職のオリエンタルランドで採用から育成まで人事領域に携わってきましたが、何千人もの大学生と関わる中で「若者一人ひとりの自己肯定・効力感の欠如」に問題意識を抱いていました。学生たちが本質的な自分と向き合うよりも、誰かにとっての自分を形成していることに強い違和感を感じたんです。「就職活動を自分自身と向き合う経験学習の場として捉え、自分の描くキャリアを実現する成功体験を積むことができれば、一人ひとりの自信を高めるきっかけになるのではないか」。そのような想いで立ち上げに至りました。

▲ 設立2年目のワークショップにて

ー「若者の自信を作っていきたい」というのはブランディングポートの理念の根幹でもありますし、安藤さんご自身もすごく大切にされていますよね。そう思えるようになった背景やきっかけはありますか?

幼少期の子役経験まで遡ります。小学生で舞台を見て子役を始めたのですが、それまでは内気で、自分に自信のない、いわゆる「何者でもない普通の男の子」。一方で子役の活動はとにかく「自分で決めて選択する」ことの連続なんです。たとえば運動会や修学旅行など大きな学校行事と、子役活動の全国ツアーが重なってしまうとか。演技においても周りから指示された演技をするのではなく、ドラマや舞台におけるシーンにあわせて、とにかく自分で考え、咀嚼し、表現をすることが求められます。こうした学校半分、芸能活動半分という生活から「自分の人生を自ら決断し行動していく」という経験を積んだことで、自分の強みや情熱が見えてきて、少しずつ自分にも自信が生まれるようになりました。芸能活動では周りの経験豊かな大人たちが夢を後押ししてくれたり、選択に迷った時にアドバイスをくれたり、「そのおかげで成長できた」という想いも大きくて。高校で俳優を引退するとなった時、「次は自分が、自分より若い人たちの自信を循環させられるような存在になる」という強い使命感が生まれました。

ここで言う「循環」とは、若者たちが自信をただ受け取るに終わらず、それぞれの人生の中で関わる方々に積極的に還元し、それが自然と循環していくことが重要だと考えています。
ブランディングポートの前身時代を含めると団体も今年で7年目を迎え、過去の卒業生が理事や講師、 B-CAMP(ビーキャンプ)※1のメンターとして次世代の後輩たちの育成に奮闘してくれています。また逆に彼らが大学生から新しい視点をもらうなど、双方向の循環になっていて、当初の理想のイメージを順調に叶えられていると感じています。

※1 ブランディングポートにおける事業の1つ。大学生に対して行う企業や地域と連携した経験学習型インターンシップ。

「“自分ブランドな生き方”を見つける港のような拠り所」であるために

ーブランディングポートの名前の由来を教えてください

実は設立当初〜2018年頃までは就活支援を目的に、「就活ブランディングラボ」という名前だったんです。団体のロゴも、私がエクセルで自作したものを使って(笑)。2019年から「ブランディングポート」に改名していますが、当初から大事にしていた想いは「自分だけの、自分にしかないブランドを見つけてほしい」ということですね。付け加えたり装飾したりするのではなく、削ぎ落としたり磨いたりして最後に核になるものが真のブランドだと思うんです。人材育成においても全く一緒だと思っていて。そうしたこだわりを「ブランディング」という言葉に込めています。

「ポート」に関しては、「誰でも困ったり苦しいと感じた時に立ち寄れる拠り所」として「港」のイメージで決めました。世間的には「キャリアは5年、10年先の未来を見据えて形成するもの」というキャリア観がまだまだ根強いですが、必ずしもそうではなく、自分の得意なことや大事にしている価値観を突き詰めた先に拓けるキャリアも良いと思うんです。そうした良い意味での不確実性や可能性の広さ、というイメージにも「海」がピッタリだと思っていて。「人生で困難や不安に直面した時にいつでも拠り所にして欲しい」「ブランディングポートで見つけた強みや情熱を胸に、また別の海に飛び出して行動変容していってほしい」という強い想いを込めました。

ー団体設立後、苦労されたことや大変だったことを教えてください

2つあります。1つ目は、私たちが届けたい学生層に、就活対策ではなくキャリア支援を届けるためのアプローチです。
キャリアの中に就職活動も内包されますが、どうしても目先の内定に視点が向きがちな学生もまだまだ多く、苦労しました。私たちは「意識の高い学生」を中心にした事業かと問われることも多いですが、そうではなく「自分に自信がない」「漠然としたキャリアの不安を抱えている」「自信を持って人に話せる経験がない」という学生にこそアプローチしていきたい。そういった学生に、どうキャリアを身近に、かつ自分ごとに捉えてもらうか、目先の就職活動だけではない長期的な視点で考えてもらうか、ということは常に意識しています。

2つ目は「学生主体」で継続的に事業運営をしていく仕組みづくりです。
B-COMPASS(ビーコンパス)※2 は現役の大学1~4年生で、コンテンツ開発からプロモーションまで事業運営を主導しています。学生たちのキャリア自律を促すには、当事者である学生自身が中核として事業参画することに意味があると考えているからです。
1〜2年でやっと基盤ができつつあるのですが、学生たちのモチベーションを維持することは本当に難しいです。「安藤さんにお世話になったから手伝います!」と言ってくれる人もありがたいことに多かったのですが、なかなか上手くいかないこともあり(笑)。単に義務ではなく、「なぜ自分がNPO法人の事業、組織づくりを担うのか」という内発的な動機付けは必要になりますよね。本人の強みや価値観を探り、そこに合わせて仕事をアサインしたり、ビジネス基礎力や人脈拡大のきっかけを提供したりなど、団体活動を自分ごと化してもらうためにも、本人たちとの対話を積極的に行い、運営を進めています。

※2 ブランディングポートにおける事業の1つ。就業力やキャリア観を育むキャリアセミナー。

▲ 学生主体で企画したキャリアイベントの様子

ブランディングポートを産官学民のコンソーシアムに育てて、子ども達のキャリア教育まで広げるために

ー団体設立後、嬉しかったことを教えてください

たくさんありますね!一番は長期的に1人1人の人生に寄り添えていることです。たとえば就職後、大企業を辞めて自分でキッチンカーで起業する挑戦を始めていたり、副業で自分のやりたい夢の選択肢を増やしていたり。就職活動前と比べていても顔色が全然違うんです。ブランディングポートとしてさまざまな選択肢を提示して、その子が自分で選択するプロセスを作っていたことで「自分自身で道を切り拓いた」という実感があるのではないでしょうか。瞬間的な内定だけではなく、長期的なキャリア支援を通じて1人1人のポジティブな変化を見聞きできるのがいいですね。

直近で言うと、特定非営利活動法人になることで、「利益の追求」ではなく、「公益の追求」を軸として、連携できるパートナーの幅が増えたことも嬉しいです。企業や自治体と学生の実践環境の提供を行ったり、大学の授業科目に採択される等、産官学民でさまざまなパートナーと、学生のキャリア教育を「共創」できることは嬉しいですね。みんなで共に創り上げてきたブランディングポートという団体が、社会に必要とされている実感を得ています。

ー2022年5月1日を以って特定非営利活動法人としてさらに規模を拡大しています。NPO法人化もパートナーとの「共創」を意図されてのことなのでしょうか?

はい。2019年ごろから団体が年間支援者数300人超の規模まで成長し、法人化への選択を迫られるようになっていました。そうした中で株式会社ではなく特定非営利活動法人としての拡大を選んだのには、キャリア支援を軸に、ブランディングポートが産官学民全てのハブになれると思ったからです。いつか、ブランディングポートを中心に企業、他非営利団体、自治体、大学等の教育機関といった関連団体のコンソーシアムができたらいいと思っていて。少しずつB-CAMPでのプロジェクト先も増えてきており、特定非営利活動法人としても進化を続けられているなと思いますね。

ー特定非営利活動法人化に伴い、ブランディングポートの主軸事業もB-CAMPとB-COMPASSの二軸となっています。事業イメージにつながるきっかけや背景はありますか?

B-COMPASSは前身団体の就活支援から、就業力やキャリア観を育むキャリア支援寄りに設計し直しています。自分軸を探すワークショップや様々な背景を持った社会人との対話機会を通じて、学生たちが漠然としたキャリアの不安の解消していく場を提供しています。

B-CAMPでは企業・地域と連携したプロジェクト業務の推進やメンターの内省支援を通じて、「経験→内省→概念化→実践」のサイクルを回し、自らの強みや情熱の源泉に気づくきっかけを提供します。「経験学習モデル」と言われる理論ですね。この事業を始めたのは、私の幼少期の子役経験に端を発していると思います。子役も同様で、オーディション1回をとっても不合格になった理由は分からない。結果を元に自分で仮説を立て検証し、チャレンジを続けるしかないんです。私自身がこうした経験学習の積み重ねで自信をつけてきた背景がありますが、これは子役だけではなくどの世界にも共通しますよね。「どんな場面、どんな業界にも共通する仕組みとして、経験学習の積み重ねができるフィールドを作りたい」という想いがB-CAMPにつながっています。

ー最後に安藤さんが考えている今後の展望を教えてください

2つあります。1つは産官学民で一体となる共同体をより拡大していくことです。人生100年時代や終身雇用制度の終焉など、日本の雇用は過渡期を迎えています。しかし現状の制度を見たときに、学生に対するキャリア教育はまだまだ整備が行き届いていません。
ブランディングポートがそうした課題を解決したいと発足してから特定非営利活動法人にもなったことで、少しずつ同じ想いを持った仲間を増やすことができています。学生たちにとっての社会を進む先輩として、より多くの同じ想いや問題意識を持ったパートナーを増やし、今よりも質の高いキャリア教育の機会を提供していくことが必要だと思っています。

もう1つは、現在の対象からより若い世代である幼児から高校生までキャリア支援を広げていくことです。今大学生を教えていても「もっと早く自分の強みや価値観に気づけていたらよかった」とすごく言われるんです。私の原体験からも幼少期の経験がキャリア形成に与える影響は大きいと考えています。もっと早い段階から実社会と密接に関わるキャリア教育を提供することで、日本を支える子どもたちの未来の創出に繋げていきます

~特定非営利活動法人「ブランディングポート」とは~

「すべての若者に“自分ブランド”な生き方を」を使命として、学生のキャリア自律を支援する特定非営利活動法人です。
大学生に対して、(1) 実践と内省の経験学習環境を提供する「B-CAMP(ビーキャンプ)」、(2) 就業力やキャリア観を高めるキャリアセミナーを提供する「B-COMPASS(ビーコンパス)」の2事業を展開しています。

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