「更生とは何か」への応答―NPO法人マザーハウス会報「たより」2023年6月号Pick Up
NPO法人マザーハウスは、受刑者・出所者の社会復帰支援をする団体です。私たちは会報誌「たより」を毎月発行しています。
塀の中の受刑者から寄せられた手紙（便り）や絵、社会にいる私たちから送りたいメッセージなどを掲載しています。今回は2023年6月号の内容をご紹介します。
「塀の中のたより」～受刑者からの手紙～
受刑者から私たちのもとに届いた手紙のうち一部を抜粋してご紹介します。なお本人の許諾を得て掲載しています。
私は、「過去の愚かな自分と決別して、社会の一員と認められる真人間に生まれ変わる」ことを更生の目標にすべきだと思います。そして「更生した」とは、周りの人の評価である。（中略）ズバリ！更生とは人道から外れてしまった人が、二度と道を踏み外さないように持ち続けなくてはいけない自戒の念です！更生をガーデニングで例えると、どれだけ完璧に仕上げても、手入れ（努力）を怠れば、すぐ雑草（雑念）に侵食され、庭（心と生活）は乱れてしまう。これではダメですよね。
刑務所を出てからも「更生」は続くものだと思うし、一生背負っていかなければならないと思います。（中略）最後に私が心掛けている事があと２つあるのですが、「正しい行動をとる」という事と「やましい気持ちを持たない」です。
無事にＭ刑務所での職業訓練を終え、5月上旬にこの地域へ戻ってきました。訓練の結果はというと、MOSはWordとExcel共に合格、基本情報技術者の方は結果の告知がまだされていません。（中略）今後は日商簿記の資格と宅地建物取引士の資格を取るという新たな目標もできました。少しずつではありますが、満期から５年後までの就労や生活の目標もできつつあるので、それに向かって頑張りたいです。
元受刑者による特別講義 学生たちが感じたこと
理事長の五十嵐が大学で講演した際に学生の皆さんから寄せられた感想のご紹介です。
幼少期から家族にうまく愛されず様々な過ちを犯してしまったために、どんどん悪い方へ進んでいってしまうところに胸が苦しくなった。（中略）遠くの人は愛せるが近くの人を愛することは難しいという言葉がすごく印象に残りました。（中略）誰かに変えてもらうのではなく、自分で自分を変えなければならないということもとても心に響きました。（中略）犯罪を犯した人間も我々と同じ人間だということを忘れてはいけない。対話が大事。
一番印象に残ったことは犯罪者には社会とのつながりがないということです。確かに日本の社会は犯罪者に厳しいと思います。（中略）社会とのつながりを断つことが再犯につながるのだと思います。（中略）北欧の国が受刑者と社会のつながりを断たないようにしているように、日本もそのような仕組みを導入するべきだと思いました。
普通ではないと思う人でも、そうなってしまったことには原因となる過去があると思う。そのような人たちにも、きちんと人の心がある。どんな罪を犯そうが環境を変えてあげたら時間がかかろうと更生できると思う。
編集後記
「更生とは何か」という、先月号に掲載された受刑者であるドクターKさんの問いかけに応答をくださった方が複数いらして、うれしく感じました。
加害者も、被害者も、それ以外の方たちも、自分にとって「更生とは何か」と考えてみる機会があったらと思います。そのことが、被害や加害を取り巻く現状を変えていく、被害者の少ない社会をつくっていく一助となるのかもしれません。
私たちマザーハウスのメンバーでもそういった取り組みをしていけたら、と思っています。
執筆：黒木萌
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