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Vol5. ソウレッジ インタビュー【NPO Times】 後編

一般社団法人ソウレッジは、あらゆる人々が安全に生活できる社会を築くことを目指し、性暴力や意図しない妊娠によって人々が大切なものを奪われることがないようにすることを目標に活動しています。その取組は、製品開発・研修受託・政策提言プロジェクトなど非常に多岐にわたっています。

今回は代表である鶴田七瀬さんに、現在の団体の活動内容、どんな人が活躍しているのか、さらに鶴田さん自身の大学生から今までのご経験についてもお話を伺うことができました。

後編では、主に鶴田さん自身のご経験・考え方についての内容をお届けします。


”最善の一手”はない。変化は少しずつ起こす

「この話題は話せない」は思い込み

Q5. 今まで性教育のような話をしたことが無い周りの人達に、どのように切り出して、議論を深めていけばいいのでしょうか?

話せないと思っていることは思い込みなだけのことが多いので、まずは話しちゃうといいと思います。

例えば、英語も話せない状態でどうしたら話せるようになるんだろうと考えるよりも、簡単な挨拶くらいから声に出してみると、相手から答えが返ってきて、やりとりが生まれます。

そういうやりとりを1回経験したら、まず1回はできたという自信になっていくと思うんですよ。そういう、とりあえずやろうという感覚はなにかを実際にやってみることでしか得られないと思います。

性教育にしても、そういうことを考えること自体が良くなくて、そういうこと話しても大丈夫なんだと思うことが大事です。

話してみても案外大丈夫で、何も思ってないか、へーそういうのに興味あるんだーくらいで終わるか、あー大事だねーとなるか、下ネタとして茶化すかのどれかくらいです。
それで友達としての関係が終わるとかは全然ないです。

とりあえず言ってみるという行動は、まず1回とりあえず言う事でしか培われないですね。

最善の一手を日本人は考えがちだと思いますが、最善の一手なんてないと思ったほうがよいと考えてます。

数字を見ないで一回失敗したらだめだとか、最初から完璧じゃないものには意味がないとか、そういうカルチャーが日本にはあると思いますが、それって最善の一手があると思ってるからなのかなと思います。

そんなのは実は無くて、ちょっとずつ良くしていくしか無い。自分にとって、そのちょっとずつは何なのかを積み重ねていくことでしか変わっていかないと思うんです。


Q6. 自分の中高生時代を思い出すと性的な話をからかうということが多くて、そういう風潮自体が良くないのかなと思ってるんですけど、そこはどう思いますか?

私は下ネタに持っていく人は好きではないですが、それがあるべきではないとは思いません。それがその人にとって必要なことだったのかもしれないし。

例えば自分が性被害を受けたことのある人で、それを自分の中でネタにしないとやっていけないようなこともあると思うんですよね。だから自分が被害を受けたことをきっかけに、性的に大事にされないような性行為を繰り返していくとか結構あるんですよ。

そういうのを考えると、ネタにするのがあるべきではないとは言えないなと思います。真面目に話したい人が真面目に話す場を作ったらいいだけで、そのときに下ネタにすべきでないとは考えません。


完璧に始めず、リスクヘッジしながら変化を大きくする

Q7. 自分たちとは異なる考えを持つ人をポジティブな意味で変えていくために、どのようなことを大事にしていますか?

最近は、人の考えを変えようというのは広範囲にはやらないかもしれません。前提として人を変えるってめちゃくちゃ難しいと思っているので。長期的に関わっていけそうな人とかは結構自分も心をすり減らしながら関わる、ということはやります。

この文脈とは違うかもしれないんですけど、他団体では避妊薬無償化を目的として避妊薬を保険適用に変えて、処方薬である緊急避妊薬を薬剤師が扱えるようにして薬局で買えるようにする活動があります。現在、緊急避妊薬を扱っている病院だと土日は開いてなかったりするので、金曜日に不安な性行為があったりすると、72時間以内に飲まないといけない薬なのに、土日に貰えないとそのまま月曜日になってしまい、月曜は学校あっていけないみたいな状況になってしまうんですよね。薬局であれば土日もやっているのでそこを変えられますよね、という議論です。

この緊急避妊薬を薬局で買えるようにする活動を、先日の厚労省の検討会で一部の地域で試しにやってみましょうとなった。

ただ、進んだことに対して反対派の人じゃなくて、賛成派の人からネガティブな意見も出ているんですよ。もっと一気にやってほしいと。すべての薬局で緊急避妊薬が売られているという状態にならなければだめだ、と思い描いているんですね。

でもその裏側で、薬局で売ることも反対している人達をどうにか抑えて、ここだけでスタートするのでそれでリスクヘッジします、生じるリスクはだいたい予想できるようになるのでお願いします、と言ってくれた厚労省の人とかが多分いるんです。

自分たちの望む社会に明日からなってほしいと望む団体さんは多いと思うんですけど、日本には1億2000万人がいるので、そのすべての人向けに一気にサービス展開したら対応が追いつかなくて結局全部できなくなっちゃう可能性があるんですよね。

薬の製造も追いつかない可能性があることも考えると、一部で取り組みが始まるのは社会にとってすごく大きな前進だと思うんですよ。進めてくれた人ありがとう、みたいな感覚で自分はいるんです。

ポジティブな意味で変えていくことを出来る人って多分そんなに多くなくて、市民運動も多くはネガティブな感じですよね。それはスタートとしては重要で、無くすべきではないんですけど。

その先社会で本当に動くシステムになるかとか考えて、小さく始めてリスクヘッジして、更に大きくするというサイクルを3回くらい繰り返す過程があって。それってどんな規模のサービスでもだいたい10年くらいかかるんですよ。

私は自分が起業してサービス作る側になったからそう思う様になったんですけど、この感覚は大事にしています。最初から完璧なんて無理だよねと。


自責でモノを売り、感覚のズレを知る

Q8. 鶴田さんが大学生のとき、やっておいてよかった・今の活動につながったと思うことはありますか?

1つはソウレッジを始めたことですね。学生起業についてはいろんな意見がありますが、私はやったほうがいいなと思っているタイプです。

「自分が心からやりたいことを見つけないと起業しちゃいけない」みたいに言う人が偶にいるんですけど、そんな事言わないでテキトーにものを売り始めるくらいでいいと思います

自分が責任者になってお金のやり取りをすることで、お客さんから良くないフィードバックももらうんですよ。

例えば喫茶店で働いていて「この商品はマズすぎる!」という商品のフィードバックが来ても、開発したの自分じゃないしなと思うじゃないですか。でも、起業してると全部が自分の責任になる。メンバーがやったことも代表者の責任になる。

そのようなことを、すごく小さくても経験しておくって、社会の仕組みを知る上ですごく大事なことだと思うんですよね。それって他のものだと代替できない。

経験としてわかっている状態と知識としてわかっている状態では乖離がすごく大きいので、ちっちゃくてもいいから、安く服を仕入れて転売するとかそんなのでもよいからやってみる。

そういうので包装の仕方がダメだとかクレームが入ったときに、「こういうところを人は気にしているのか」と、自分の感覚とのズレをもらえるんです。

自分が今まで気にしてこなかったお金の流れが見えるような気がしているので、起業という経験はすごく大事だし、気軽にやったらいいのになと思います。

 ーーとはいえ、起業するにもアイデアがないという人も多いのではないでしょうか。

起業するアイデアが無いとき、なんでそれが起こるかって考えると、どこの困りごとも見たことがないからじゃないのかなと思っています。

学生生活の中でも、「単位の申請が面倒」とか、「教授と話すときどうやって切り抜けるか」とか、そういうのが1個1個思い付けばアイデアになります。

そういうのも発想にないうちは、インターンをするのがいいと思います。起業とか、こういうことがやりたいとかなかったら、自分が歩いてきたところから抜け出して自分が選択した場所に行ってみるとか、そういうのは大事だなと思います。

私は静岡県の地方の大学だったので、インターンはみんなやっていなくて、大学3年になって1dayインターンに行く人がちらほらいるくらいでした。情報をできるだけ自分で取りにいって、2週間インターンとか、知識を広げていく、社会の構造を知っていくとかできるといいだろうなと思います。


Q9. 周りの環境に流されずに、自分が価値あると思えることを見つけるにはどうすればよいのでしょうか?

ちょっとずつ外れていくのがいいんじゃないでしょうか。

ダメな理由に納得できないことはしちゃうとか。男性で化粧したり、髪染めたり、ピアスしたりとか、そういうのって突き抜けちゃうと何も言ってこなくなったりします。

もちろん理由があってダメなこともありますが、仕事じゃない場だったら別にいいんじゃない?て思います。これってなぜダメなのか?なぜ規制があるのか?を考えることが大事だと思います。

あとは、私はバイトの種類を増やすみたいなイメージで1,2年で長期インターン行く、スタートアップ入るとかが当たり前になるのがいいと思います。

自分だけ独自の道を行くのは難しいので、「みんなやってるし、自分もするか」というのでいいんだと思います。そうすれば、社長とか会社を辞めて起業した人が身近になるじゃないですか。

そういう人たちは社会には実はいっぱいいるので、そういう人たちに会う機会を盲目的に作ると、なんでダメなのか?を考えている人達もいるので、それで自分も考えるようになって、ちょっとずつアクションできるようになると思います。

若者へのメッセージ

Q10. 最後に皆さんからこの記事を読む若者たちへメッセージを一言お願いします。

想像しているよりも社会は優しいと思います。すごく残酷なときもあるけど大概は優しいなと思うので、とりあえずやってみたらいいよ、と思います。

全然相手してくれないじゃんと思う自分と、意外とみんな聞いてくれるなと思う自分が2人いて、両方自分の感覚としてはあって、どっちもあるなと思いながら生きています。

自分の失敗なんて誰も見てないと思う一方で、ちゃんと頑張っていたら誰かが見てくれているというのが感覚として両立している。両方自分の心の中にあるのが、何かをやっていく上で大事なのかなと思います。


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