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挑戦: サクラローレル物語 月本裕

筆者は小島良太調教助手と仲がよかったようで、サクラローレルのフランス遠征でも密着取材が許されていたようである(188頁に書かれている内容を読むと、スポーツ新聞や雑誌などは厩舎取材が禁止されていた様子)。

早いうちから海外に目を向けていた全演植氏と小島太騎手のフランスへの思いや関わりから始まり、最後の1/3が遠征にまつわる話となっている。凱旋門賞へ向けての乗り替わりの話なども、横山典騎手と良太助手の関係性の深さもあって、詳細。
ただ、全編を通じて横山典弘騎手には取材をしていない様子(あとがきの取材協力者に名前が出ないし、実際横山騎手の発言は良太氏がらみを除いて公開されたもののみ)。しなかったのかできなかったのかは分からないが、横山騎手側にローレルの乗り替わりについて複雑な思いがあったのではなかろうか、と思ってしまう。

フランスでのパリ・テュルフ編集長とのやりとり、当時のフランスから見た日本競馬の様子など、現地の様子がよく分かる。翌年にシーキングザパールとタイキシャトルが、その翌年にはエルコンドルパサーがフランスG1を勝つことになるけれど、いずれも外国産であり、(持ち込みとはいえ)内国産で馬名の後ろに”JPN”がつくローレルが97年に勝負を挑んだのは凄いことだと思う。
なお、現地で故障したローレルが安楽死寸前だった、という話はこの本には載っていない。

なお、国内パートだと、サクラローレルの天皇賞春早仕掛けの原因がノーザンポラリスにあることが明言されている。また、レース後、マーベラスサンデーの古川厩務員が「これから先、何回やってもうちの馬じゃアンちゃんの馬には勝てないな」と述べたらしい(146頁)。これは知らなかった。

Gallop系はどうしても紙幅の関係で記述が浅くならざるを得ず、ローレルについてしっかり書いた本はこれが唯一だと思われ、非常に貴重。


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