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【FF16】Final Fantasy 16 紹介とネタバレ感想

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この記事は、PS5で2023/6/22に発売されたfinal fantasy 16の感想記事です。
後半がネタバレありなので、その旨ご注意ください。
また筆者は「このゲーム面白かった!」と思っている人間なので、「好意的な感想が読みたいわけでもない」という方もご注意ください。

じゃ、つらつらといってみよ。


【ネタバレなし紹介】

Final fantasy16と筆者について

 ファイナルファンタジーとは、日本の有名ロールプレイングゲームの一つです。ナンバリングはついていますが、それぞれ独立した世界、独立した話を描いています。
 共通する固有名詞はあるんですが、毎回それが指しているものは微妙に違ったりするので、単独で一本ずつ遊べるゲームですね。
 1が出たのが1987年というご長寿タイトルで、昔から毎回「なんか新しいことをやってくるタイトル」という印象が強いシリーズでした。

 あ、この記事では便宜上ナンバリングをアラビア数字で書かせてください。私がローマ数字を読めないのでね! 今現在自分で刊行中のシリーズも「ローマ数字読めないので巻数表記をアラビア数字にしたいです!」って担当さんに言ったら「ハハハ、前シリーズがローマ数字だから揃えないと駄目」と却下されました。4巻と6巻の区別がつかないよう……。

 筆者のプレイ歴は1から9まで。10の途中でなんとなくフィールド上で迷子になって脱落してしまった……。その後は14をやって、今回の16に至ります。ゲーマーというほどゲームをやっているわけでもなく、有名タイトルだけプレイするタイプです。フロムゲーとか、最近だとティアキンとかはやりました。アクションはどちらかというと苦手。

Final Fantasy16の方向性

このゲームは、PS5という新規ハードをふんだんに使って二つの柱でできています。
一つが

1.圧倒的ファンタジーの世界観とストーリー

もう一つが

2.アクション要素

です。これ、体感で7:3くらいの割合です。
つまりこのゲームは「作りこまれたファンタジー世界で英雄譚を体験するゲーム」です。7:3なので、3のアクション要素は設定でかなり難易度を落とすことが可能です。「攻撃ボタンと回避ボタンだけ指示されたタイミングで押していればクリアできる」という難易度まで落とせます。誰でもエンディングが見られる。

ただアクション要素もアクションゲームの「デビルメイクライ」を手掛けた方をコンバットディレクターとして呼んでいるので、難しいモードもあれば、アビリティを入れ替えたりする楽しみもあります。このあたりの匙加減は私にはちょうどよく、ゲーム設計的にもおそらく「死んでリトライしなくても先が楽しめる。戦闘自体は各人が自由に好きな技を使って戦うことが可能なスタイル」というラインをついていると思います。

あと迷子になってもでっかい犬(狼)が道を教えてくれるし、国同士の話が複雑になってきた時には、いつでもでかいボタン長押しで「現在明らかになった情報・設定資料の注釈」が読める。めちゃくちゃ親切設計になっています。

世界観とストーリー

これは、いわゆるダークファンタジーです。
ただ洋ゲーやフロムゲーのように、特殊な設定でおどろおどろしい、息苦しいファンタジー世界、という方向性ではなく…………「社会の一般的な価値観がひどい」という方向性です。

戦争があり、強烈な差別があり、貧困で苦しむ人がいる、その現状がもう世界の隅々まで当たり前のものとして染みついてしまっている。うわー、ひでえ世界だ! ここでは暮らしたくない! という意味でダークファンタジーです。

村は焼かれるし、人は裏切るし、生まれながらに魔法を使える人間は、「人間未満」と見られ奴隷階級に落とされる。
そんな中で、プレイヤーが操る主人公クライヴと周囲の人間たちは、この世界を変えるために戦う、というお話になっています。
はっきりいってそういう世界観で繰り広げられるストーリーなので、辛い話が多いです。他の創作物と比べてとびぬけて陰惨! というわけでは全然ないのですが、まったく明るくもない。

ただ、主人公を含め、味方サイドの人間がとにかく好感が持てる面子なんです。だからその辺りで上手くバランスが取れていると私は思います。
あとなんかスルメみたいな味がある。後からじゃんじゃん味が出てくる。情報量が増えると前に見えたものが変わってくる。スルメ。

総評

ffシリーズっていうと「なんか新奇なことをやってくる」という印象で、決まったスタイルがないシリーズだと思っていたんですが、今回は「ゲームの媒体でストーリーに徹底的に奉仕する作りになっている」という点で、やっぱり新しい体験をさせてもらったな、という感じです。

世界の深掘りを自分でしてストーリーが楽しめるし、それに邪魔にならない範囲でアクションが楽しめるのもいいスパイスになっていました。ダークファンタジーが好きな方なら買って損はないと思います。

私は王道が好きですし、挑戦も好きです。今作はきちんとその両方を兼ね備えていると思います。

じゃあ、そのストーリーについての感想をね……



【ネタバレあり感想】

キャラクターについて

とにかく、キャラがよかった。主人公のクライヴが筆頭なんですが、全員大人なんですよね。迷いもするけれど青少年のような状態にはならない。それがどういうことに繋がるか、っていうと、みんな「自分のためより人のため、世界のため」に動くんです。高潔……でもちょっとは自分を大事にしてって思っちゃう……。

それが如実なのが中盤のクライヴがイフリートを受け入れるシーンで「自分が弟を殺した」って充分嘆いて苦しんでいるのに、なおかつその状態でしばらく後に「俺は過去から目を逸らしていた……受け入れるんだ……」ってなるんです。充分苦しんでたじゃん! 目を逸らしてなかったじゃん! でもあれクライヴくんにとっては目を逸らしていた扱いだったんだ! 自罰が強い!

他にもヒロインで幼馴染のジルが、ずっとクライヴのことが好きなのに自分の恋愛をアピールしてこないこと、駄々をこねない、彼の邪魔にならないように、彼の隣にいられるように、滅私奉公主人公カップルですよ。滅私奉公過ぎて、プレイヤーが「いやもうちょっと進展していいから!!」ってなる。

ジョシュアも、ディオンも、協力者面子も本当にそれぞれの物語を持っていて、そのバランスがちょうどよくてクライヴに頼りきりにならない。終盤絶望的な状況に世界が見舞われても、解決策を出していくのはクライヴではなくその街に生きる人々で、クライヴはそれを手助けするだけ(パワーで)なんです。

この「世界に生きている人々のリアル」の描き方が本当によかった。激動する世界情勢で街の人々の会話が刻々と変わっていくので、プレイした人はみんな「お気に入りで会話を聞きに行くNPC」がいたんじゃないでしょうか。私はノースリーチの「男娼と恋人の兵士」のカップルの会話がいつも面白くて聞いてました。

クライヴ・ジル・ジョシュア・ディオン・シド がメイン面子だとしたら、それ以外で好きなのはカンタンとバルナバス。

カンタンは、復讐譚で始まるff16を象徴するもう一人の復讐者で、復讐のために村を一つ作り、そのカリスマ性で村人たちに慕われながら、最後に復讐を果たして「人一人殺すために、自分についてきてくれた村人たちをこんなに犠牲にしてしまった。復讐なんてこんなものなのか……」って慨嘆するんです。
このクライヴに頼らず、彼らだけで一つの復讐譚が遂行される、という結末が最高でした。村人たちがみんな「マスターのために! マスターが俺たちを助けてくれたんだから、俺たちがマスターの復讐に手を貸すんだ!」って望んで死んでいくんですよね。すごいカリスマだし、復讐後のもの悲しさもよかった……。

バルナバスは最初から最後まで敵手なんですが、なんかふわっとした感情が薄いような圧倒的強者から始まったにもかかわらず、クライヴと戦うにつれてどんどん感情が出てくるのがよかった。クライヴとの戦いが楽しい、高揚するっていって、どんどん人に戻っていく、自我が出てくる。ストーリーに重視をおいたこのゲームの作りにおいて、ムービーではなくバトルにドラマを込めた、という点でバルナバス(オーディン戦)は本当に彼の変化が楽しいものでした。最後にオーディンを押しつけてくるあたり、なんかもう面白くて好きになったよ……バルナバスくん、クライヴくんを好きになりすぎなんよ……。

あとはラスボスのアルテマ。
この描き方が上手くて、ラストバトルのレスバでクライヴくんがアルテマをボコボコに言うんですけど、アルテマって「人間一年生」なんですよ。
自分は神で、絶対で、唯一の存在だと思っている人間の赤ちゃん。
だから人間への解像度が低いし、メンタル勝負でクライヴにぼこぼこにされる。クライヴを「肉体を生かしたまま自我を滅したい」と思った時点でもうアルテマは負け決定ですよ。クライヴが培ってきたメンタルとレベルが違う。アルテマは「クライヴが神のところまで上ってきた」と思っているけど、実際は「人間であることに自覚がないアルテマに成熟した人間パンチを打つクライヴ」になっている。
クライヴに精神攻撃をするのに、彼の周囲の人間を狙おうとか全然思いつかない。普通に神っぽく挑んでいってクライヴの苦労人メンタルに負ける。そうしたアルテマの人間くさい最後は、なかなか味わい深いものでした。

ストーリー構成について

復讐譚で始まる序盤、人が人として生きられる世界のために駆けまわる中盤、人ではどうにもならない神との対決に至る終盤、とよくできていました。

このストーリー構成は、本道から外れたものはサブクエが後を継ぐ作りになっていて、復讐譚はカンタンのサブクエで語られますし(ちなみにクライヴが隠れ家の仇を討ったあとは、隠れ家の人がめちゃ喜んでくれます。復讐してあんなに喜ばれたの初めてかも)、ベアラー差別問題も各サブクエが引き取っていきます。前述したように、人は人で協力しあって意識を変え、新しい時代を築こうとする――その人ではどうにもならない部分に最後対処するのがクライヴたちドミナントです。
これは花弁が開いていくような構成で、脇道に退いていくテーマと、誰にもどうにもできない主人公だけに残るタスク、という感じで、納得できる作りでした。

クライヴがいなくても、各町の人々はやっていける。でもクライヴが勝たないと世界自体が皆の知らないところで終わる、そんな人知れずの戦いに身を投じるクライヴたち三人組が、とても高潔でよかったです。でも三人で一本のHPゲージを共有するな。笑っちゃうでしょ。

エンディングについて

賛否両論、解釈複数あるエンディングですが、私はあれでよかったと思います。

まず私見解釈としては、クライヴはアルテマの理を破壊する代償として死亡、ジョシュアもあれは亡くなっている……と思うんですが、後世にジョシュア著の本が残っているからジョシュアは生き延びたのかな、とも思っています。
・アルテマの力を吸収したクライヴならレイズができそう。
・階級意識を色濃く書いた話で、ジョシュアの名前を他の人間が騙るのは難しいのではないか。
というのが二点です。

主人公が亡くなる、ということに拒否感を持つ人が多いのは分かるんですが、だからといって全部のストーリーがハッピーエンドである必要はないと思います。そういう点では、クライヴは最後まで自分の選択であれを成し遂げた、意味のある終わりだったな、と。あの終わり自体が彼の人生と意志を象徴するようで、彼の物語としてはあれしかないと思っています。プレイヤーは悲しいは悲しい。

彼の死が確定だと思っている理由の一つは、ちょっとメタ読みになってしまうんですけど、彼が生きていた方がやっぱり喜ばしいエンドではあって、でもそれをはっきりと分かる形で描いていないことこそ、死を示しているんだろうな、と。ぼかして描いたのは、彼が生きていることを信じたい人への優しさだと思っています。

物語は、それが辿った道筋にふさわしい結末を得るもので、それができた物語こそがきちんと完成された、恵まれた話だと私は思っています。
今回、このエンドで批難が来ることは分かっていただろう製作が、それでもこのエンドに辿りついてくれたのは、作り手の意志を感じてとても嬉しいです。プレイヤーとして悲しいは悲しい。

スタッフロール後のCパートで、遥か未来の日常が描かれる――あれは、クライヴが作りたかった「人が人として生きられる世界」がきちんと安定して実現しているということで、私は「彼と周囲の人間の至近な幸福」が描かれるより意味があった、と思っています。クライヴやガブやオットーの死後、世界は余計ひどい状況になりました、なんて心配の余地があるのも淋しいので。美しい終わりでした。

表情で語る、ということ

ここ数年、SNSの発達で有名作品というのは「解釈してそれが広まる」という風潮が広がっていまして、これが当たり前になるとたくさんの人に読まれる作品は「80%の人間が理解できるように描く」をやらなくてよくなるんです。一般的な創作物が「まずちゃんと伝わること」を重視して描かないといけないのに比べて、贅沢でこだわった描写が可能になる、とてもよいことだと思います。

ff16もその例にもれず「誰かは気づいてくれるだろう」という作りがとても多い。それは「解釈を曖昧にしとけば自然に話題になる」というものではなく「本当はこう描写したいけど、分かりやすさのために描写を譲って変質させていた」の変質をしなくてよくなっている、ということです。

如実に出ているのは表情芝居で、これは今作の特筆すべき特徴だと思います。思っていることが台詞にはないけれど、表情に出る――台詞早連打できない箇所のムービーは全部これです。普通の小説なら地の文、マンガならモノローグになるところを表情変化で送り出す。ここまでユーザーを信じられる製作の度胸がすごいな、と思ってます。

一番これが明らかなのは、オリジンにクライヴを送り出すジルのシーンで、彼女の表情は明らかに彼がもう戻って来ないことを察しているんですよね。だからすぐには答えられないし、彼が離れた途端うつむいてしまう。でも台詞では一言もそんなことを言わないんです。「絶対帰ってくる」「分かってる」としか言わない。クライヴが戦わないといけないことを知っているし、彼がそうしたいと決断していることを知っているから、それを貴んでいるから、留めるようなことを言わない。
クライヴとジルの二人ともが、そうやって口にしない想いを分かっていて、代わりに「愛している」とだけ言う。それがあの時あの二人にとって一番大事な感情だからです。ff16屈指の名シーンだと思います。

クライヴの道筋を振り返る。

振り返ってみると、本当にクライヴも、周囲の人間たちも高潔で滅私で、それを本当の意味で思い知るのはあのエンドを見てからです。

最終決戦であるオリジンが出現し、クライヴは数多のサブクエで、今まで出会った人たちの未来を安定させるために最後の手助けをし……同時に弟と、ヒロインと、トルガルと、自分の時間を持ちます。ずっと滅私で動いてきた彼が、本当の最後の最後で自分のための時間を得るんです。それは振り返るととても穏やかで愛情に満ちた時間でした。クライヴはこの時間で、充分に己の生に満足したんじゃないかな。

二つの愛情の形:ジルのこと。

ff16は共通するモチーフを違うように描くことが多く、クライヴとカンタンの復讐譚もそうですが、家族愛と恋愛の二つも対照的に描かれています。

弟ジョシュアとの家族愛は、もうこれが今作のメイン感情といってもいいほど、最初から最後まで美しく、熱く描いてくれて、おかげでラストバトル前の慟哭がやばかったです。こんなにボロボロに泣いて、これからラストバトル操作するんですけど……おい……おい……みたいな。
クライヴが生きていく理由で、戦い続ける理由、弟の騎士として生きる深い愛情は涙なしには追えないものでした。

それとは対照的に描かれるのがジルとの恋愛で、これがもう本当にささやかにしか表に出ないんです。じゃあ薄い感情なのか、というと、めちゃくちゃ深い愛。出会った頃から最後まで二人はずっと互いを大事にしている。でもそれは彼らの本当に核の核の、あまりにも私的なものだからこそ他に優先されないもので、他の全部がなくなった隙間にしか目に見える形で出てこない。それを終盤に知るのはとても威力がありました。
(これに関してはふせったーにも書いてます)

ジルはクライヴにふさわしい滅私のヒロインで、だからこそクライヴとの別れには胸が詰まりました。あの期に及んでクライヴが去るまで涙をこらえていた彼女の献身は、一生印象深いものとして残ると思います。

同時に滅私を徹底したクライヴの私情の部分にジルが含まれているがゆえに、彼女のシヴァの力を半ばクライヴが我儘のような形で引き取るというのもとてもよかったなあ。全部のドミナントが消えた世界に、クライヴは自分の我儘でジルをドミナントから解放して、人の歴史に残す、とても切なく美しい二人でした。

蛇足:地の文のこと。

表情芝居が強いからこそ、そしてクライヴに頼り切りでないサブキャラたちの過去が終盤で開示されるからこそ、二周目が生きてくるゲームだと思います。エンドを知ってからだと色々違うものが見えるだろうな、と思っていて、でも私は仕事がたてこんでいるので二周目ができていないドン!

私が地の文をここにあてるなら――と作った地の文もあるんですが、それはさすがにここに書くのはどうかと思うので、またいつかの機会があれば。

ああでも、ff16のエンドって地の文がちゃんと別に存在しているんですよ。
ご存じ、米津さんの「月を見ていた」です。さあ、みんなMVを見てこよう。

そんな感じで、とても充実したゲーム体験でした。
ff16面白かった!!!!!!

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