【短編小説】廃された王に捧ぐ一膳
峯という国に朱宵鈴という、食堂を営む若い女がいた。顔は平凡であったが料理の腕は確かで、店は繁盛していた。特に宵鈴の作る粥はどんな具を入れても美味で、好き嫌いのある子供も喜んで食べると評判であった。
宵鈴はその暮らしに満足していたので、今以上のものは何も望むことなく生きていた。だがある時、宵鈴のもとに役人が訪ねてきて、退位した帝のために料理を作れと言った。宵鈴はあまり乗り気ではなかった。が、依頼というよりは命令であるその話を断る度胸はなかった。だから仕方がなく、宵鈴は先代の