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創作大賞2022では「大名古屋万博物語」が中間選考を通過。 note以外に掲載の作品は→https://nsgtnbs.wixstudio.io/nsgt
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記事一覧

【短編小説集】少女は宴の夜に死ぬ

あらすじ 序章 「大帝と少女」 大嘉帝国の皇城の奥深くには、そこに招かれた者は決して生きては帰れない「饗花宮」という名の館がある。  四季折々の花が一年中咲き続けるその美しい居館では、皇城で大帝のための宴が開かれるたびに少女の命が一つ奪われている。  海を越えてもなお続く、広大な領土を誇る大嘉帝国は、地上に最も多くの破壊と滅亡をもたらした国でもあった。  この頂点にいる大帝は世界の全てを統べる支配者で、どの国の神よりも偉大な至高の救世主なのだとされていた。  鹿は草を食み

【短編小説集】偽王の晩餐と姫君の首

あらすじ 評判の良い食堂を営む料理人である宵鈴は、ある日国に命じられて、王位を剥奪された廃王に仕えることになった。  廃王は現在の帝である叔父に毒殺されかけた際の後遺症によって精神退行しており、偏食の激しい子供のような人物になっていた。  宵鈴は味覚が過敏になっている廃王が美味しく食べられる献立を作り、廃王に気に入られる。しばらくの間、宵鈴は廃王のために料理を作り続ける穏やかな日々を過ごす。  しかし平和な日常は長くは続かず、宵鈴は廃王を毒殺することになり…。 「料理×歴

【短編小説集】お姫様が絶対に死なないおとぎ話

あらすじ 眠ることに飽きた眠り姫に、王子様を撃ち殺す人魚姫。狼に餌付けされた赤ずきん、恋人に毒リンゴを贈ろうとする白雪姫…。  これは虐げられた少女のシンデレラストーリーでもなく、努力と才能で生き抜く女子の奮闘記でもない、綺麗事のお約束に囚われない姫君たちの恋物語。  女は生きる。男は死ぬ。 各章の内容 第1章 嗜虐趣味のある聖女が、幸薄な幼馴染の騎士を溺愛する話。 第2章 お金で何でも買えると思ってる武器商人の淑女が、一番好きな人は買えない話。 第3章 敵国の将軍の寵姫

「完全に推しだけしか見えていない相嶋さんが、世界で一番の小説家になるまで」あらすじ

 Web小説に幼いころから慣れ親しんでいる主人公は、小6から小説投稿サイトを使い続けて利用歴は約5年。  高校では幽霊部員ばかりの文芸部に所属しWeb小説の読み書きに励んでおり、友人も少なく仄暗い青春を過ごしていた。  しかしある日突然、別のクラスの美少女が小説投稿サイトの使い方を教えてほしいと、主人公のもとにやって来る。  彼女はガチのドルヲタとして有名な人物で、どうやら自分の推しである男アイドルが審査員を務めるコンテストに応募するために、主人公が使っているサイトとは別

【短編小説】鶏豆花 ―宴のために招かれた少女―

 洒国の王宮の外れに立つ小屋には、月に一度の特別な宴が催される日にしか使われない厨房がある。  その小屋には一人の料理人の男が住んでいて、普段はただ養鶏や蔬菜の栽培をして暮らしている。  朔遥がそんなやや怪談めいた場所に連れて来られたのは、まさにその特別な宴を控えた日のことだった。  宴席で出される料理に必要な食材の少女として、朔遥は王宮に運ばれてきた。  朔遥は小屋に住む男に食肉として捌かれ、帝国の支配者でもあり神でもある大帝のために開かれる宴の膳に上るのだ。  しか

【短編小説】廃された王に捧ぐ一膳

 峯という国に朱宵鈴という、食堂を営む若い女がいた。顔は平凡であったが料理の腕は確かで、店は繁盛していた。特に宵鈴の作る粥はどんな具を入れても美味で、好き嫌いのある子供も喜んで食べると評判であった。  宵鈴はその暮らしに満足していたので、今以上のものは何も望むことなく生きていた。だがある時、宵鈴のもとに役人が訪ねてきて、退位した帝のために料理を作れと言った。宵鈴はあまり乗り気ではなかった。が、依頼というよりは命令であるその話を断る度胸はなかった。だから仕方がなく、宵鈴は先代の

【短編小説】蟹と玉座

 大璃帝国は、天人を祖に持つ皇族の女子が天后と呼ばれる帝として民を統治する国である。虞霜葉はその帝国で軍事に従事する家系の出身であり、天后を守護する女武官として生きていた。  天后は神聖で清明な存在であるので、天后である帝が政務を行う皇宮で働く武官は全員女である。対外的な戦争や辺境の防衛では男子も戦うが、聖域である皇宮で帝に仕える役目は未婚の女子にしか許されていない。  代々武官を務めてきた虞家の娘である霜葉は、武芸や軍事以外のことについては関わるべきではないと教えられてい

【短編小説】魔王に献ずる終焉の一皿

 魔王ソヴァロは、大陸の北に広がる火山地帯を治める王である。  自国の民には愛され、隣国の民には憎まれるソヴァロは、大国の王としてすべてを思うままにできる権力を持っている。  だから支配者であると同時に美食家でもあるソヴァロは、見知らぬ食材を食すことを好み、新しい土地を征服しては珍味を献上させていた。  地底に築かれた都にある、壮麗な黒い水晶の石片に覆われた王城の大広間で、ソヴァロは魔王らしく日々食べたいものを食べるのだ。  ◆  西の海を越えた孤島に生息する赤竜は、番を

長く一緒にいるためにゆっくり歩いている制服カップルを、急いで家へと帰る一人の社会人女性が追い越していく情景を俳句にしてみた。

【中編小説】大名古屋万博物語(note創作大賞2022中間選考通過)

1988年9月、名古屋オリンピック開催。 2005年3月、愛知万博、通称大名古屋万博開幕。 バブル崩壊をものともせず、名古屋は世界都市・大名古屋として日本で一番の繁栄を極めていた。 万博会場のレストランでアルバイトをしている愛知県刈谷市在住の男子大学生の都築透一は、異国の美少女サフィトゥリと出会い、恋をする。 しかしサフィトゥリは隠された目的を持って万博にやって来ていた。 パラレルな名古屋を舞台にした、愛と叡智の裏万博青春小説。 0.栄光の大名古屋  一九八八年九月、

【サバ缶小説】終末の味がする一口

 21世紀の最後の年の夏。  「巨大な小惑星との衝突により、地球が砕けて消滅する」と世界連邦が発表したのは、その地球最後の日の約二か月前のことだった。  長い間続いた戦乱によって荒廃していた世界は地球消滅の事実を粛々と受け入れ、ただ残された日にちだけを数えた。  ある大国の内紛をきっかけに戦火が世界中に広がった結果、地球のほぼ全土は中性子兵器が大規模に使用された影響によってひどく汚染されていた。  人類は自らの作りだした兵器によって滅亡するのだと、誰もがそう思っていた。