見出し画像

静かな家の中

「昨日から、おうち、静かなんですよね」
仕事納めの日、事務所を掃除しながら同僚が話しかけてきた。
そうなのだ。今、子どもたちは私の実家にいる。私の父が京都駅まで迎えに来てくれた。私は年明けに帰省することにしていて、それまでは家に夫と私の2人。静かなことこの上ない。

それにしても、同僚がよく覚えていることに私は驚いた。その予定を話したのは、2週間ほど前の昼食の時のはず。数人で近くの店で食べたあと、会計をしながら一言触れただけだ。
印象的だったんだろうか、と思った。

子どもなしって、全然違うものね。
子どもたちを改札で見送った後、私はそのまま家に帰ったりはしなかった。化粧品や洋服のお店をいくつかのぞいた。
普段は、子どもが待っていると思うとそんなふうにゆっくりすることはできない。

駅から帰宅したら、夫はまだ帰っていなかった。夕飯を作ろうと台所に立つと、カウンター越しに見えるリビングが、なんだかがらんとしていた。
夫と私は子どもが生まれる前に同居したことがない。それってこんな感じなんだろうか、と思った。大人の私が大人の夫の帰りを待ちながら、大人向けの味付けの料理をしている。

生姜も唐辛子も気になるけれど、初日はまず、ふろふき大根を炊いた。昆布を気前よく使い、塩や醤油は加えない。昆布の旨味だけで、身体に沁み渡るような大根になる。柚子味噌も作ったが、まずは大根そのものを味わう。

そして、2人分の食事は、4人の場合と比べたら、支度も片付けもボリュームが違う。すぐに済むので、「手伝って」と声をあげる必要がない。

家の中が静かだ。
今年の年越しは静かに過ぎてゆく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?