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へこんでる梅干し

普段食べているけれど、店で買ったことがなかったもの。
梅干し。
いつも、自分で漬けたり、祖母が漬けたのをもらったりしている。それが、珍しく蓄えが底をついたので、スーパーで探してみた。
シソの風味が効いて、ハチミツや鰹節を使っていなくて、塩が薄すぎない昔ながらの……と品定めする私の目に飛び込んできたのは、「種抜き梅干し」

パッケージに「とても便利な」と書かれているが、そのとおりだ。
実だけを食べてタネは捨ててしまうのだから、最初からタネが抜かれていれば手間がかからない。ゴミも出なくて、良いことばかり。タネを使う料理はあるけれど、私は作ったことがない。
それに、悩みが一つなくなる。タネまわりの実の処理問題だ。タネから実をきれいに取るのは難しい。大正生まれの曽祖母は、「昔の子供はタネをしゃぶって、最後は噛み割って、中の仁まで食べた」と言っていた。でも、タネを舐めるのには少し抵抗がある。タネを口から出すのは見苦しい気がする。

さて、味へのこだわりはどこへやら、私は迷わず種抜き梅干しをレジに持っていった。
家に帰って、「こんなのあるんだよ!」と夫に自慢した。
夫は、「なんだか、なにか足りないような」
まあ、そんな気もする。プラスチックのケースには、タネを失ってペチャンコになった梅干したちが、大人しく並んでいる。
私は、「こんなにヘコんでるんだから、そう言わないであげてね」と言っておいた。

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