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3度目のバルセロナ

スペインでの生活が残り1ヶ月を切った。
帰国のための調整で忙しかったり、寒かったりで、年始のポルトガル旅行以来、遠出せずに2ヶ月近く過ぎた。けれど、最後にどこかに行こうと夫と相談し、選んだ行き先はバルセロナ。訪ねるのはこの2年で3回目。繰り返し、戻っていきたくなる街。

魅力はなんだろう。
まず、スペインの中では多様性が豊か。観光地にいろんな人がいるのは当たり前だけれど、そのへんの公園やなんでもないバルでもいろんな言語が聞こえてくる。部外者としては、それが心地よい。
街の雰囲気も好き。地中海に面した都市には共通かもしれないが、解放感がある。今回泊まったホテルは、窓から海が見えた。その輝きが目の端に映るだけで心が躍る。夏に来た時は、近郊のビーチでのんびりした。バルセロナは都市でありながら、ちょっと足を伸ばせば浜辺でカヴァが飲める。

タラゴナのビーチ


それに加えて、食べ物がおいしい。私が好きなのはフィデウアという短い麺のパエリア。魚介の旨味が染みこんだ麺が香ばしい。海鮮料理が好きな息子は、ムール貝やアサリを喜んで食べていた。

手長エビとムール貝のフィデウァ

スペインに初めてやってきて、2年住んだ。日本に帰りたいと一度も思わないくらい楽しかった。いつか、なにかの機会があればスペインに戻ってきたい。その時はバルセロナに住んでみたい。

ところで、今回のバルセロナ旅行ではどこに行ったのかというと、一番の目的はカタルーニャ美術館だった。特に、ロマネスク美術の展示が見たかった。ピレネーも含めたカタルーニャ地方の教会から多くの壁画を移設し展示している。展示室は実際の教会内部のような広々とした空間で、照明もやや落とされている。(ロマネスク様式の教会の中はもっと薄暗いとは思うけれど。)聖人の姿に、祈りの回数を記録した線が無数に刻まれているのを見ると、1000年前の人の心が偲ばれる。

ピレネーの村、タウルの教会から移された壁画


また、移設の工程のドキュメンタリー映像もあった。どのようにしてフレスコ画を壁から剥がし、安定させ、そして展示のための新たな基盤に固定するのか、非常に納得がいった。1970年代の移設作業当時の映像であることも興味深かった。

少し心残りなのは、市民戦争時代の芸術やポスターの展示を見られなかったこと。足が疲れてしまってあきらめた。
最近、ジョージ・オーウェルの『カタロニア讃歌』を読み、1936年当時のバルセロナの描写に驚いた。市民戦争という歴史上の出来事は知っていたし、スペインの映画や小説では今でも頻繁に触れられるテーマだ。でも、労働者が街を統治し、それまでの権力(教会とブルジョアジー)が徹底的に否定され、一時期とはいえ人々の振る舞いさえも一変していたという記述は想像を超えている。
それからまだ100年も経っていないなんて。


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