見出し画像

小晦日の京都

遅めにベッドから出たら、外は太陽の光がきらきらして、暖かそうだった。

夫と散歩に行くことにした。
子どもたちが一足先に帰省して大人だけなので、いつもより遠くまで足を伸ばせる。

住宅街を抜けて、熊野神社の脇に出た。
境内のあちこちに、八咫烏のモチーフがある。賽銭箱の上の屋根には、象や獅子の彫り物もある。動物がいっぱい。
お参りした後、丸太町通を鴨川に向かって進む。

鳴海餅店の前を通りかかる。
餅米を蒸すせいろや浅い木の箱(なんと呼ぶのだろう)がいくつも積み上げられている。
お雑煮にと、丸餅を一袋買った。まだやわらかかったので、今朝ついたものだと思う。
つきたてのお餅は好物なので、鴨川の河川敷のベンチに座ってひとつ食べる。
塩が入っていたら理想的だなぁ、と思う。私の育った地域は、餅には必ず塩が入っている。白餅でも草餅でも豆餅でも。塩入りの餅は醤油などを付けずに食べられるし、餅米の味を感じられておいしい。

餅のついでに言うと、私が作る雑煮は「雑」ではない。昆布と鰹節で出汁をとったら、主に塩で調味して、醤油をほんの少し。肉や野菜は入れない。焼いた丸餅を椀に入れて、出汁は上からかける。つまり、「煮」でさえない。
仕上げには、セリ、刻んだ柚子の皮、銀杏、人参や椎茸の飾り切りを甘く煮たものなどを飾る。
これは祖母が毎年作っている雑煮に倣ったもので、元旦といえば私は出汁のよい香りを思い浮かべる。
夫と自分2人だけのために飾りものを揃えるのは手間なので、今年は少し省略しようと思っているけれど、出汁には妥協しないつもり。

さて、鴨川河川敷を北に進む。日差しが背中をあたためて、手袋もマフラーもいらない陽気。

河川敷

今出川通を東に曲がって歩いていくと、知恩寺がある。よく前を通るが、入ったことはなかった。思い立って、門をくぐる。
案外、人気はなく、私たちのほかには2人連れが1組だけ。通りの喧騒が嘘のように、境内は静まり返っている。広い空が頭上にある。

知恩寺の本堂

靴を脱いで本堂に入る。畳に正座して、ご本尊(かな?)に手を合わせる。鏡餅と松の枝が供えられている。ご本尊には大きな鏡餅、脇の観音像には少し小さめの鏡餅。
本堂の壁伝いに大きな数珠が巡らされている。数珠玉ひとつが大人の握り拳くらいある。よく見ると、ひとつひとつに人の名前がたくさん彫り込まれている。御朱印の受付にいた方に尋ねると、寄進をした方々の名前ということだった。

今出川通に戻って、またのんびり歩いて帰宅した。
風もなく、散歩日和の小晦日だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?