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簡単に仲良くなれるわけではないけれど

3人いる社用車の運転手のうち、ミゲルは私と年齢が一つしか違わない。
以前、私が助手席に乗り込んだら、いい感じのラテンポップスが流れていた。それを彼が止めたので、私は「なんで止めるの?」と言った。以来、彼は乗客が私1人だと音楽をかける。

ある時、仕事の終わりが深夜になった日、そういう場合にはよくあるように、普段より会話が弾んで、好きな音楽の話になった。それぞれの好きな曲を交互にかけていった。
私はまず、AviciiのSOSを聞きたいと言った。ミゲルもAviciiは好きだと言って、ボリュームを上げて一緒に口ずさんでいた。

曲が終わった時、「この歌詞どう思う?」と私は尋ねた。ミゲルは「さあ。なんかドラッグのことだね」と答えた。
まあ、そうなんだけど。

ミゲルがかけた曲の中で1番よかったのは、Moby の Raining Again

ミゲルは、「フィエスタとかに出かけるときは、準備しながらいつもこれを聞く。シャワー浴びたりしながら」と言っていた。

あとは、「ビートを数えるんだ。1,2,3…7,ほら!(歌が始まる。)こうやって歌い出しがわかる」と、何度か言っていた。私は行儀のよい生徒のように耳を傾けていた。

私は運転手に仕事を振る立場なので、残業や休日出勤で嫌な顔をされることもある。簡単に親しくなれるとは思っていない。けれど、おもしろいひと時だった。

昨年3月にマドリードに来て、今の仕事を始めて、それから約10ヶ月。ここでの時間の流れ方、そこで自分がどう泳ぐか、最近、なんとなく分かってきたかもしれない。

タイトル画像は、オエステ公園の展望台から臨む王宮とアルムデナ大聖堂。マドリードは、冬でも暖かい日差しがあるのがうれしい。

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