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髙橋好江・武村雪絵・市川奈央子(2021).「仕事におけるエンゲージメントの概念整理と今後の方向性: 組織で働く看護職の特性を踏まえて」『日本医療・病院管理学会誌』58(4), 96-104.

エンゲージメント概念を詳しく知りたくて

髙橋好江・武村雪絵・市川奈央子(2021).「仕事におけるエンゲージメントの概念整理と今後の方向性: 組織で働く看護職の特性を踏まえて」『日本医療・病院管理学会誌』58(4), 96-104.

を読む。とても参考になった!MBAのリーディングスリストに入れても良いかもしれない。

論文は以下からダウンロード可能。

この論文では,エンゲージメント(本によってはエンゲイジメントと表記されていることもあるので,検索の際は注意が必要)

一口にエンゲージメントといっても,
1. 仕事上の役割と自己との関係性に着目したパーソナル・エンゲージメント
2. Gallapのキー12(トゥエルブ)と言われているコンサルを中心に用いられている従業員エンゲージメント
3. 仕事そのものに対するポジティブな心理状態を捉えたワーク・エンゲージメント

の3つがある。

一般的には,ワークエンゲージメントが広く普及しており,2.の従業員エンゲージメントは,コミットメントやジョブ・インボルブメントなどが含まれており,妥当性の検証・追試がなされていないことから結果が安定しないという。

但し,近年では,各国で検討されているワークエンゲージメントも必ずしも普遍的ではなく,状況に応じて異なることが主張され始めており,仕事の特性(job characteristics)だけでなく,関係的文脈(上司部下関係,同僚,チームなど)に裾野が広がっていること,また,本研究が看護職を対象としていることから専門職(職種)によるワークエンゲージメントの規定要因など検討の余地があるという。

本論文を経営学的な視点で見ると,パーパスとジョブ型の交互作用がワークエンゲージメントに与える影響なんて考えられるような気がした。本論文では,看護職をメインとしており,研究対象が非営利組織であることが多いことから,従業員が使命感を持って取り組むこともワークエンゲージメントの規定要因の1つとなりうることが書かれていた。
 
企業組織も一緒で日本企業がジョブ型に移行していく中で割り当てられた仕事が企業のパーパスにどれだけ落とし込まれているのか,意義を持つことができるのか,ということが重要になる可能性がある。なぜならジョブ型では個々人の仕事が少なくともこれまでよりは明確になることから,メンバーシップ型と比べると仕事の多義性(曖昧さ)が少なくなる一方で,「いま担当している仕事への意味」が問われることになるから。

研究のヒントをもらうことが出来た論文。ちなみに本論文を読みながら3つのエンゲージメントの弁別性の論文を書いたら面白いのではないか,と思ったが既に研究がなされていることも知ることができた。

自分の頭が整理されて読んでいて楽しい論文であった。


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