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名刺ゲームの制作ノウハウ ver.4

はじめに

同人ボードゲームを名刺印刷を利用をして作成しはじめて、早いもので5年経過します。ver.3の記事を書いた時からノウハウ的にはあまり変わっていませんが、事情により利用する印刷所が変更することになり、いくつか試したので情報を更新することにしました。
この記事は同人ボードゲームを作ってみたいけど印刷所に頼むとすごいお金がかかりそう(実際すごいかかる)ということで二の足を踏んでいる方向けの記事となります。新たな挑戦の一助になれば幸いです。

構成

揚げピーナッツで出しているゲームはカードのみのゲームです。付属品としてパッケージとマニュアルがあります。それぞれ説明していきます。

カード

カードは名刺印刷を利用しています。名刺印刷を利用する理由は次の通りです。

  • 小ロットで作れる

  • 安い

名刺の印刷を発注した印刷所がいくつかあるので紹介します。

ラクスル

ラクスルは揚げピーナッツで初めて作った「プログラム言語神経衰弱」で利用していました。いろいろあってラクスルを利用するのをやめていましたが、最新作のSQLビルダーで再びラクスルを利用しました。
ラクスルの良い点は100枚で発注しても安い点です。ただし200枚頼んでもそれ以上頼んでもディスカウントはありません。普通はたくさん頼めば単価は安くなっていくものですがラクスルは全くないです(すごい大量に頼めばあるかもしれないけど)
また品質が安定しています。名刺印刷は安価なためか汚れがあったり傷があったりというトラブルがたびたびあります。ラクスルでは今のところありません。上下左右に寄るというのもラクスルの場合はあまりありません。ただしラクスルは複数の印刷所で印刷しているらしく色の発色が色味によってはばらつきが出ます。拡張版などを出す場合困ることがあるかもしれません。
以前は100枚頼むと105枚と5枚予備がついてくるのもメリットだったのですが、2023年に発注したところ100枚ちょうどでした。
名刺はプラスチックケースに入ってきます。これをゴミで出すのが少し手間かもしれません。(これにシールを貼ってゲームのパッケージとすれば環境にも優しく安上がりにすることも可能ですね。やったことはないです。)
webサイトも他の印刷所に比べて洗練されています。入稿時のプレビューはとてもわかりやすい。ただ1個ずつ入稿しないといけないのと1個ずつ発注のメールが来るのがとても煩わしく感じます(80枚のゲームだと80回入稿作業をしないといけない)

良い点:100部でも安い
悪い点:たくさん頼んでも安くならない。入稿作業が面倒

プリントパック

プリントパックはHTTPステータスコード百人一首の増版で利用しました。プリントパックの良い点はたくさん頼むとすごい安くなることです。100枚だと逆に高いのですが、200枚でラクスルとだいたい同じくらいになり、300枚以降はかなり安くなります。
ただ、たまたまかもしれませんが、品質がよくなかったです。すごい左右によっていたり側面に傷が入っていたカードが大量にありました。メールに写真を添付して相談したところ再印刷に応じてくれたのでカスタマーサポートはとても良いです。
プリントパックはビニールのベルトのようなものでくくられてきます。名刺印刷なのでサービスとして紙製の名刺ケースもついてきますが使い道がないので捨てることになります。注意が必要なのは300枚頼むと300枚が1つのベルトにくくられてくることです。この場合、丁合するときに300部を1度に丁合しないと置き場所に困ります(イメージつきますかね。。。)
プリントパックは大量に頼むときにメリットがあるけど、大量に頼むといろいろ困ることがあるので、ちょっと利用しずらいかな、という感じです。作業場所が潤沢にある人は気にならないかもしれません。また品質が悪かったのもたまたまなのか気になるところです。ちなみに後述するパッケージとマニュアルはプリントパックにずっと頼んでいます。
webサイトはちょっと古臭いですが、入稿のシステムや再印刷の発注などはとても便利です。版下をまとめて入稿できるのはとても楽です。

良い点:たくさん作るときに安い。入稿が楽。
悪い点:100部だと高い。梱包状態が取り回しづらい

ライオン名刺

ライオン名刺は異種面付印刷を受け付けているのがユニークです。通常オンデマンド印刷の名刺印刷は原稿を1つの版下に配置しなおして一度にまとめて印刷します。それをあらかじめ入稿段階で行うことによりコストを下げるというものです。
異種面付では21枚の名刺を1つの原稿に配置するため、5枚印刷すると100枚印刷したことになります。100部作るときは1つの原稿で2100枚印刷したことになるので、2100枚としてのディスカウントを受けられます。
ただ、そうしてもラクスルの倍くらいの料金になります。(ラクスルが異様に安いだけ)
異種面付の良いところは配置したカードが並んで梱包されて届くので、丁合のときにだいぶ手間が省けるところです。ただ印刷所で梱包するときに順番が入れ替えられていたりするのが混じっていたりするので、そこはちょっと確認が大変だったりします。それでも普通に名刺印刷で頼んだものを丁合するよりも1/3くらいの労力でできます(体感として)
webサイトはもう少し使いやすくしてもらえるとうれしいなと思っています。
入稿は異種面付でまとめて入稿できるので楽です。カスタマーサポートも何度か電話やメールでやり取りさせていただきましたが、とても良いです。
揚げピーナッツでは丁合が楽なのでしばらくライオン名刺を利用していましたが、異種面付版下のフォーマットが変わってしまい、今まで使っていた版下が使えなくなってしまったので現在では他の印刷所を利用しています。

良いところ:異種面付は入稿と丁合が楽。
悪いところ:価格。小ロットではラクスルのほうが安いし、大量だとプリントパックのほうが安い。異種面付を利用する場合は21の倍数でカード構成を考えないといけない(全カードがユニークな場合)

まとめ

それぞれ一長一短ありますが、カードの印刷はコストや小ロットでの取り回しを考えると、総合的にはラクスルが良いかなと思っています。カードが一番コストがかかるのでまずはこれで作って、慣れてきたら印刷所に頼む、またはリメイク版を印刷所に、というのもよいかと思います。ラクスルは100枚で約500円なので、1枚5円計算、80枚ゲームなら400円で作れます。

パッケージ

パッケージは筒状に厚紙を折ったものを両面テープで留めたもの(以下、スリーブ)をダンボール小物入れと合わせるような形式をとっています。スリーブの印刷はプリントパックに発注しています。コストはスリーブが20円くらい(200部で2000円くらい。200部作れば10円)、ダンボール小物入れは32円くらい(100部で3160円、500部なら6711円)で合計50円ちょっとです。
他にもチャック袋(いわゆるジップロック)で拡張版を出したこともありました。チャック袋だと1-2円くらいに収まります。ですが、安価に作った箱でもやはり箱に入っているものとはだいぶ見栄えが違うでしょう

以下発注の仕様です。
商品カテゴリ:リーフレットチラシ
納期    :3営業日
印刷方法  :オンデマンドまたはオフセット
サイズ   :A5変形(129×183~148×210)
色数    :片面4色
紙の種類  :マットコート220
加工    :トンボ仕上がり断裁(ご注文サイズでお納め)
オプション加工 :スジ入れ(4本)・
印刷部数  :200

スリーブを正面から
スリーブを横から。印刷所で折り目を入れてもらっておき、両面テープでとじる
印刷所から来た状態。折りスジが4本入っている。右端にのりしろ部分がある。写真ではのりしろ部分に両面テープを貼っているけど、近年の研究では逆側(左端の裏側)に両面テープを付けた方が作業が楽な気がしている。
ダンボール小物入れ
ダンボール小物入れを開いたところ。カードは80枚ちょっと入る。

マニュアルについて

マニュアルはプリントパックに発注しています。
以下、発注の仕様です

商品カテゴリ:リーフレットチラシ
納期    :4営業日
印刷方法  :オンデマンドまたはオフセット
サイズ   :B6変形(106×149~128×182)
指定サイズ :182×120
色数    :両面スミ1色
紙の種類  :マットコート90
加工    :十字折り
オプション加工 :無し
印刷部数  :200 部

十字折りの場合はページ数的には8ページになり、結構な情報を入れることができます。ゲーム内容によってはこのページ数では足りないかもしれませんがこの箱に入るカードゲームであれば、そのページ数で収まるルール量または記載を心がける必要があるのかなと思ったりします。(サマリーカードなどを別途付けるなどするのもあり)
もっと簡易なゲームの場合は、4ページにするのもありです。ただ作ってみた感じだと十字折りの8ページマニュアルのほうが質感的に良い感じです。

マニュアル

マニュアルは上記仕様で200部で2710円です。モノクロにしていますが、カラーでもそんなに料金は変わらないと思います。
ちなみに1000部作っても500部でもあまり値段に差がないので長く再販するつもりでしたら1000部作るのもアリです。

全体の費用

原価

100部作るとして、イニシャルコストとして以下の金額がかかります。
単価の計算は、200部で入手したものも100で割った額を単価としてみます
カード(80枚 100部):500x80=40000円
スリーブ(200部):2470円
ダンボール小物入れ(100部):3610円
マニュアル(200部):2710円
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計:48790円(送料とかそういうのがかかる場合もあります。)
だいたい1個あたり500円で作れる。
カード枚数が大きなウェイトを占めるので、カード枚数が少ない場合は値段も大きく変わります。40枚のゲームなら28790円になります。
このくらいの金額であればチャレンジしやすいのではないでしょうか?

自家丁合のコスト

ただしこれをゲームの構成とあわせてカードを割り振り、箱を組みたて梱包する作業が必要です。これを丁合(+梱包)と読んでいます。丁合自分でやれば実質0円ですが、一応これも費用を考えておいた方がいいです。私は1個あたり200円としています(カード枚数が80枚の場合。40枚の場合は150円くらいで計算している)かなり手慣れてきた状態で丸1日で1人100個丁合できるかどうかって感じです。初期費用としてはかかりませんが、値段を決めるときには考慮しておいたほうが良いです。

<余談>
ちなみに値段の決め方はいろいろな考えがあると思いますが、私は原価4割くらいで考えています。1500円のゲームなら600円で作る感じです。3割という人もいます。委託したりクラファンしたりで状況も変わるでしょう。趣味の範囲なので儲かる必要はないですが継続できるようにはしたいので半分くらい頒布できればその売り上げで次回作も作れる、くらいにはしたいですね
<余談2>
ゲムマなどのイベント出展費用も結構かかるので予算に入れておく必要があります。作ったけど出展料がない!となったら悲しいです。最近はいろんなイベントがありますがまずはゲームマーケットに参加するのが一番良いと思います。

終わりに

名刺ゲームの記事も今回で4回目ですが、今までの記事を参考にしましたと言っていただくことがあります。そういう時はとてもうれしいです。ありがとうございます。
今回はかなり具体的なことを書きました。そろそろ普通に印刷所でリッチな箱やカードで、、と考えたりもしますが、手軽に少数で作れるのでいろいろチャレンジできてこのやり方も捨てがたい、と思って気づけば8作品作っていました。今後いろんな形式も試していきたいですが、名刺印刷でのゲーム作りも研究し続けたいですね。

こうやって並べたかったんだなー

以上になります。この記事を読んでいただきましてありがとうございました。

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