【経営者向け】労働組合から団体交渉を求められた場合の対応について

会社がある程度大きくなっていくと、労働者との間でトラブルが生じることは避けられません。
経営者側にとって大きな負担となる典型例は、①労働者が弁護士をつけて直ちに労働審判を申し立ててきた場合(第1回の期日までに求められる準備が多すぎる)、②労基署からの連絡(理由がない通報だとしても労基署は連絡を取ってくる場合があり、相応の負担がかかる)、③労働組合からの団体交渉の申入れ(団体交渉に応じない場合は不当労働行為にあたり罰則が科されるおそれがあるうえ、団体交渉は昔から切った張ったの騒動に発展することが多く精神的な負担は大きい)、の3つです。

全てに共通するのは、時間的な制約がほとんどなく、未経験の作業を多く求められる、という点かなと思います。いずれも社労士や労務に強い弁護士に相談のうえ、適切な対応を検討することが必要です。
以下では、3つのうち団体交渉について、私が経験上お伝えしたいことをまとめます。

1 初動対応について

団体交渉の申し入れ書は、突然、FAXや郵送、あるいはメールで届きます。
守秘義務の観点から、私が実際に受け取った書面はお見せすることはできませんが、労働組合さんが公表している申し入れ書を紹介します。
どの申し入れ書にも概ね共通するのは、大まかな事実関係が書かれており、要求項目挙げられていること、そして、その要求に関する話し合いをするために協議の日時を定められ労働組合の事務所に来るように求められることです

使用者は、団体交渉応諾義務を負っており、正当な理由なくこれを拒んだ場合は不当労働行為としてみなされ、民事上、行政上の制裁を加えられることがあります。(労働組合法7条)。ですから、申入れを無視してはなりませんし、およそ2週間以上も対応が滞ってしまうと、それが違反行為にあたってしまいます。
迅速な対応が求められますが、だからといって、焦って電話で回答をしたり、余計な反論をするのはやめましょう。後で揚げ足を取られたり言質を取られたりする可能性が高いです。
まずやるべきことは、お近くの、あるいは信頼できる弁護士に速やかに連絡を取り、打合せのアポイントを取りましょう。
中には弁護士をつけずに自力で解決を試みる経営者がいらっしゃいますが、よほどの熟練者でない限りはお勧めしません。また、私自身、成功していると思われる事例にも遭遇したことがありません。往々にして、単独で団体交渉に臨んで、交渉が過熱した末、一方的に交渉を打ち切ってしまったり、投げやりに要求をすべて受け入れてしまったりする事案が見られます。

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