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ゲバラとブロマンスとThe first cryと



The first cry
について思うことがあったので久しぶりに筆を撮ることに。
毎度のことながら、とりとめのない独り言なので興味無い方や途中で飽きた方は適当にスルーしてほしい。長いので。
(それでも毎回見て下さってる方がいて本当に感謝です……)

The first cryとはGARNET CROW6枚目のオリジナルアルバムLOCKSに収録されている楽曲である。

ちなみにGARNET CROW全楽曲中で最長の5分41秒。

作詞家のAZUKI七さんが南米の革命家「チェ・ゲバラ」についての歌詞とどこかで零していたのを今回はそれをちょっと拾い上げてみる。

The first cryの歌詞を読み解くためにチェ・ゲバラについて少しくらいは知った方がいいだろうと考えたので、今更ではあるが去年やっと「モーターサイクル・ダイアリーズ」という本を読んだ。

この本はゲバラの手記そのものを訳しているものなので全てノンフィクション
ぶっちゃけ訳本ってどうも読みにくい。なんか馴染みのない言葉とか表現とか出てくるし。
背景描写も当時の情勢のイメージが湧かずに読破するのに苦労した。

「これの映画版がアマプラにあるんだけど今は観れなくなってるんだよなー。映像の方が絶対わかりやすいから観たいなー」
と思い続けてた去年。一向に観れる気配がないので半分諦めていたが、久しぶりにアマプラを開くと

み、観れる!!!!

WOWOWなんちゃらとかいう有料チャンネルに登録が必要なものの(お試し期間内に解約すれば無料)、モーターサイクル・ダイアリーズの映画版が視聴可能になっていた。Yeah!!!!
というわけでさっそく観ることに。スペイン語なので字幕必須。

感想としては、観て正解だった!
原作の映像補完がだいぶ出来た。やっぱり文章だけでイメージするより映像あった方がいい時もある

さて、この話の中心人物である
チェ・ゲバラとは
◾︎1928年アルゼンチン産まれで本名はエルネスト・ラファエル・ゲバラ・デ・ラ・セルナ
◾︎キューバ革命の中心人物
◾︎元々は革命家ではなく医者を志していた

超ざっくりこんな感じ。
(キューバ革命はなんか難しいから各々ググッて)
ゲバラはキューバ革命の指導者になる前はごく普通の医学生だった。
それが何故革命家として活動するようになったかというと、彼が23歳の時に決行した南米大陸の旅が関係している。

この旅の内容がモーターサイクル・ダイアリーズにゲバラの手記として詳しく残されているのだ。

ゲバラは23歳の頃アルゼンチンのブエノスアイレスから出発し、今まで本でしか見たことのない南米(チリとかペルーとか色々)を好奇心のままに国境を越え数カ国を巡る旅をすることに。

中古のバイクで。

え?って感じである。
当時のバイクって今より性能とか耐久性ってどうなの?って疑問もあるし道だって綺麗に補正されてないし何もかも不安でしかない。

そしてこの南米大陸バイクの旅には同行者がいる。
6歳年上で当時29歳の親友、既に医者で生化学者のアルベルトだ。
大人の男2人と荷物を乗せての中古バイク。
普通に絶対やめとけって思う。(案の定バイクは途中で壊れる)

そんなこんなでブエノスアイレスから出発して各地を渡る中で、思いもしなかった南米の現状を目の当たりにしてしまう2人。
生まれ育った土地を追われる者、非人間的扱いを受ける鉱山労働者、仕事が無く生きていくのもやっとの住民……。

更にストーリー後半の主題となるハンセン病。
2人はペルーのハンセン病隔離施設を訪れることになるのだが、当時のハンセン病患者は病院から川を挟んだ反対側の施設に隔離されていた。

こういった現状を痛感する度にゲバラの中で少しずつ何かが突き動かされ、やがて心境は変化していく。
ただの医学生だったゲバラがこの旅で得た体験が将来の革命家としての思想の基盤となった。

..........

大まかな流れとしてはこんなところなのだが、モーターサイクル・ダイアリーズというゲバラの手記を読んだだけでは小さな疑問が残った。

じゃあ結局、The first cry の歌詞ってどういうことなの?
という疑問。

AZUKI七さんが「ゲバラの歌詞です」と言ったって、解釈の仕方が複数できる。

・ゲバラが旅の中で感じ取ったもの、ゲバラ本人の気持ちを代弁した歌詞。
・AZUKI七さん本人が過去のゲバラに敬意を表しゲバラを想って書いた歌詞。
など。

うーん、どっちだ?
歌詞の大まかな部分では時代や争いを憂うゲバラ目線を感じるので前者な気がするのだが、「時空越えてゆけたら君のもと 離れずに終わりを見つめさせて」というところが後者を感じる。
AZUKIさんがゲバラを想い、自身が時空を飛び越えていくことが出来たのなら当時の彼に寄り添いたい。讃えたい。そんな気持ちだろうか。
そうじゃなければ、もし全てゲバラ目線だとしたら「時空を越えて会いに行く君」って誰のこと?という話になる。

と、思っていた。映画を観るまでは。

旅を終えて後に革命家として活動したゲバラはなんと39歳の時に射殺されてその生涯を閉じてしまう。
モーターサイクル・ダイアリーズの映画のラストシーンでは、アルベルト役の俳優ではなく80代になったアルベルト本人がスクリーンに登場し、遠い昔を懐古するような彼の物憂げな表情で終幕を飾る。

ああ、これきっと親友のアルベルト目線の歌詞だ。
そう考えるのが一番適合性がとれる。

手記を読んでも映画を終盤まで観てもその解釈に辿り着かなかったのに、ラストシーンのアルベルトおじいちゃん本人が遠くを見つめるその表情ひとつで一気にパズルがピタッと嵌るようなスッキリ感を得た。
そのくらい何かを訴えかけるようなメッセージ性のある瞳だった。

当時23歳のゲバラと29歳のアルベルト、好奇心のままに中古バイクに跨り南米2人旅。
所持金も少なく貧弱な装備で臨んだ計画は本当に無鉄砲。
誰にでも優しいが絶対に嘘はつけない馬鹿正直なゲバラと、嘘も方便だと話術も得意な陽気で女好きなアルベルト。
性格も正反対な2人はこの無茶な旅の中で何度も喧嘩をしたり罵りあったりすることもあるが、様々なトラブルや困難を乗り越える度に確実に絆が強く深くなっていく。

嵐の日に寝泊まり用のテントが飛ばされて醜くお互い責任を擦り付けあったり、宿無しの日は行き当たりばったりで出会った人に頼み込んで小屋で寝かせてもらったり、頼りのバイクが壊れてしまった後は徒歩やヒッチハイクで移動を続けたり、喘息持ちのゲバラが発作で死にかけた時は何度もアルベルトが介抱をしたり……。
飢え、渇き、疲労、病気、命を脅かすレベルの暑さや寒さ。
無鉄砲に飛び出した二人に数え切れない困難が襲いかかった。
数分と眠っていられない程の蚊の大群に夜通し刺されたりしたことも。

これが全部ノンフィクションだというのだからなかなか壮絶な旅である。
中には手記に書き記されることのなかったトラブルも山ほどあるだろう。
そんな道中をずっと2人で時たま喧嘩をしつつも力を合わせて生き延びてきたのだから、深い絆が生まれないわけがない。
一蓮托生。運命共同体の2人である。

そしてアルベルトは旅の最終地点であるベネズエラのカラカスに残り、その地で働くことになる。
ゲバラとの旅はそこで終わりを迎えた。
ここまでの距離、なんと約10000km

アルベルトにとってかけがえのない親友だったゲバラはこの旅で別れた後に革命家となり、39歳で射殺されて生涯を終えてしまう。
その後、時は流れて老人となったアルベルト本人が登場する映画のラストシーン。
彼のそんな背景を知ってしまうとどうしても胸を締め付けられるような切ない気持ちになる。

時空越えてゆけたら迷わず君のもと
離れずに終わりを見つめさせて

老人アルベルトが親友ゲバラを想う気持ちのような気がする。
もしも時空を飛び越えられるのなら、あの日の君に合いにゆきたい。
君が命を終える日をせめて傍で見届けたい。

君の元へといつかはゆくのなら
畏れずにこの時間(とき)生きてゆける

老いた自分もあと少しで死期を迎え君の元へとゆくのなら、少しも畏れることなく今この時間を生きてゆける。

自分はこのように歌詞を解釈した。
全てはアルベルト目線。君とはゲバラのこと。
ゲバラと共に痛感した当時の情勢を憂い、あの旅の日々を懐古する。
そして友の思想、優しさ、痛み、全てを愛しく想うアルベルトのとんでもなくブロマンスな歌詞なのではないかという結論に至った。


まとめ

・AZUKI七さん曰くThe first cryはチェ・ゲバラについての歌詞
・ゲバラは若い頃に親友アルベルトと共に中古バイクで無鉄砲な南米大陸の旅を決行する
・何度も喧嘩したり死にかけたりしてやべぇ時もあったけど乗り越える度に絆が深まる。
・旅を終えゲバラは革命家となった後に39歳で射殺される。
・The first cryは旅の日々を回想しながらゲバラを想う老いたアルベルト目線の歌詞なのではないか。

歌詞って人それぞれの解釈があったり想像は自由。
これらはあくまで私が至った結論なので「は?違うし」と人によっては思うかもしれない。
本当に全て間違ってる場合もある。
そこまで考えてへんわとかAZUKIさんに思われるかもしれない。

が、上記の解釈が個人的に一番腑に落ちた。

ちなみにモーターサイクル・ダイアリーズはゲバラ目線での手記を書き起こした本だが、実はアルベルト目線での旅の記録である「トラベリング・ウィズ・ゲバラ」という本もある。

なんとこのnoteを書いている最中にネットで見つけて注文してもう家に届いたので、次はこちらを読んでみることにする。
読んだらまた新たな発見があるのか、それとも考えが全く違う方向に変わるのか……。

いやー、ブロマンスって最高だな。
頭悪い故に世界史とかさっぱりわかんないんだけど関係性に弱いオタクだからこういうアッツイやつにすぐ心打たれちゃう。

どうか2人の魂が未来永劫ズッ友であり続けますように。



..........

超超超余談だが、The first cryとたぶん同じような時期に制作されたGARNET CROWの曲
・「Argentina」
読みはアルヘンティーナだがスペルはアルゼンチン。(ゲバラの母国だね)

Argentinaの歌詞のモデルとなったのはスペインのフラメンコダンサーであるアルヘンテイーナさんとの説もあるけど、ミュージカル映画「EVITA」の題材となったアルゼンチンの女性なのでは?という説も密かにある。
ちなみにこのEVITAという作品の中にゲバラをモデルに創作された人物が出てきたりも……。(すごい繋がり)

そして
・「百年の孤独」
元ネタの小説である百年の孤独の著者ガブリエル・ガルシア=マルケスはコロンビア出身。


この時期のAZUKIさん、南米大好きすぎない?


おわり。



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