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宝塚歌劇の楽しみ方

6年ほど前に母に付き合って初めて宝塚歌劇の公演を見てから、母→妻→自分の順で沼にズブズブと沈んでいき、今では夫婦で立派なヅカオタとなった。6年観てきて気づいたのは、宝塚というのは非常に多面的な楽しみ方ができる世界だなということ。ここでは宝塚歌劇を楽しむ切り口を、自分なりに整理しながら書いてみたい。多面的であるがゆえに、ハマる流れも人それぞれとは思うけれど、宝塚の世界に触れて楽しみを拡げていくような流れをイメージして書いてみる。

公演を観る

宝塚歌劇の世界の入り口にして、一番基本的な楽しみ方。純粋に作品としての公演を楽しむところからスタートしよう。一年中ほとんどいつでも、宝塚歌劇は公演を行っている。専用の劇場が関西(宝塚市)、と関東(東京日比谷)にあるほか、専用劇場で公演を行っていない組の1つが地方も含めた小劇場で公演を行っている。宝塚歌劇には現在メインで公演を行う組が5組あるため、関西公演→関東公演→(小劇場公演稽古)→小劇場公演→(大劇場公演稽古)→関西公演というループをずらして行うことで、いつでもどこかの組の公演が開催されている。宝塚以外の舞台やミュージカルと比べたときの宝塚歌劇の特徴をいくつか挙げる

・お芝居+ショーという構成
宝塚の公演形式はいくつかあるが、最も多いのが休憩を挟んで前半がお芝居で後半がミュージカルショーという形式。前半はお話を楽しみ、後半は純粋にショーパフォーマンスを楽しむという形で、お腹いっぱい楽しめる。一本物と呼ばれる前後半通しのお芝居のときもフィナーレという形で短めのショーパフォーマンスが楽しめることが多く常に満足感が高い。
・出演者が多い
宝塚歌劇の5つの組には、だいたい70~80人くらいのタカラジェンヌが在籍していて、大劇場公演では全員が出演するので舞台上が非常に賑やか。宝塚以外の舞台ではアンサンブルを含めても20人程度というのが標準的だと思うので劇場で観ると圧倒される。
・チケットが安い
劇場によって値段が若干違うけれど、S席で9000円くらい、B席だと3000円くらいで公演が観られる。宝塚以外の公演と比べるとかなり割安。消費者としては嬉しいけれど、出演者が多い上に生オケ付いてこの値段だと割を食っている人が少なからずいるはずでちょっと心配。

良いところだけ書くのもアンフェアなので、宝塚以外の舞台と比べて劣るところも書いておく。まず80人もいるそれぞれのタカラジェンヌを把握して役割を付ける必要があるので、舞台脚本は座付きの脚本家が基本的には書いているが全体としてレベルがあまり高いとは言えないと思う。また演者もピンキリというか80人もいれば上手い人もいれば下手な人もいるので、観る側も少し暖かい目で観ないといけない。

好きなタカラジェンヌを見つける

公演を観ていると、ビジュアルの美しさ、歌やダンスの上手さなどきっかけが何かは人によるけれど、きっと気になるジェンヌさんが出てくる。通常は公演作品のために役者が集められ、あくまでも作品が中心にあると思うけれど、宝塚歌劇の場合にはタカラジェンヌというスターを輝かせるために作品や場面が作られるという面が間違いなくある。ジェンヌさんをよく知る座付きの脚本家・演出家がタカラジェンヌを輝かせるために脚本を書き・演出をし、ジェンヌさんがそれに全力で応え舞台を作り上げる。だから舞台上のジェンヌさんは本当に輝いていて、好きなジェンヌさんにきっと巡り合う。公演を観に行ったらパンフレットを買うといい。各場面でどのジェンヌさんが出ているかや、写真が載っているのできっと役に立つ。

タカラジェンヌの舞台の外の顔を知る

舞台上のジェンヌさんは役になり切り、演技に全力を尽くしているけれど、舞台の外ジェンヌさんはそれぞれに個性的で魅力的な女性であり、オンとオフのギャップもまた宝塚の魅力だと思う。在籍中は個人のSNSなどでの情報発信はないので、タカラジェンヌの舞台の外の情報に触れる場はそれほど多くない。TV番組ではカフェブレイクという番組があり、同時期に実施している公演に出演しているジェンヌさんが週替わりで公演のことやプライベートのことを話している。また有料放送にはなるが宝塚スカイステージ(通称スカステ)というスカパーのチャンネルでは、タカラジェンヌさん出演のバラエティー番組なども多く放送している。スカステは過去の公演の放送も多くヅカオタにとって魅力的なサービスとなっている。刊行物では「宝塚グラフ」という月刊誌が、カジュアルで写真も多くお勧めできる。また年一回の刊行であるが「宝塚レビュー」というムック本はDVDも付いていてお得だ。

公演の細部・進化を楽しむ

ヅカオタは同じ公演に何度も足を運ぶひとが多い。私は最初、同じストーリーの公演を何度も観て楽しいのだろうかと思っていたが、理解できるようになってきて、最近では1回目に観るときよりも2回目の方が楽しいと感じることが増えている。その理由は大きく2つある。1つ目は、一回の観劇で全てを観ることはできないということ。80人も舞台に出演しているけれど、一回目はメインキャストを追うだけで精一杯。ただ例え脇役・チョイ役でもジェンヌさんは全力で演じており、あちらこちらで小芝居が繰り広げられていて、それを観るのもまた楽しみだ。もう1つは関西で1か月、関東で1か月の公演の間に舞台の完成度が上がって進化していくということ。脚本や演出がブラッシュアップされることもあるし、役や作品に対する理解が深まることでも確実に舞台は進化する。わずか1~2か月の間での大きな進化が観られるのも宝塚の魅力だ。

組ごとの違いを楽しむ

宝塚にはメインで公演を行う組が5つあるが、それぞれにカラーというか特徴がある。例えば月組は芝居が巧いとか、雪組は和物(時代劇など)が多いなどだ。そのときのトップスターや組子によってウリは変わることはあるけれど、組ごとに特色を出して違う魅力を提供するというのは常にやっていると思う。ヅカオタの中には特定の組やスターさんだけを追いかけるようなスタンスの人もいるけれど、色々な組の作品を観るとまた違った味わいがある。似たような例として、宝塚では同じ公演の再演というのが度々行われるのだけれど、別の組で演じられたり、別のキャストで演じられると同じ作品でもそれぞれに違いが出て楽しめる。

タカラジェンヌの成長物語を楽しむ

音楽学校を出て、研1から始まり、新人公演や小劇場公演で大きな役を経験し、一部がスターとして成り上がっていく、その過程そのものが魅力的なエンターテイメントと言える。もちろんトップになれるのはごく一握りだけれど、例えトップにならなくても、別格スターとして、あるいは歌・ダンス・お芝居など自分の得意な領域を磨き上げ大成し、どこかで宝塚を去る決意をする。志を共にする仲間と、これだけ濃密な人生の時を過ごせることはとても幸せだと思うし、客席の側から一部ではあるけれどその過程を観られることもまた幸せだと思う。

人事とマネジメントを楽しむ

成長物語がタカラジェンヌにフォーカスしたものだとすると、宝塚歌劇の運営・マネジメント視点で分析したり、予想したりするのを楽しむ人もいる。より魅力的にしていくために、誰を次のトップにするのか、どの若手を路線スターとして抜擢するのか、どんなふうに組替えを行うのか、組にあったどんな作品を持ってくるのかなど、宝塚の理解が深まるほどこういうことを考えることが楽しくなり、好き勝手な分析をしているブログがたくさんある。ひとつひとつのマネジメントには意味があり、例えば組替えをきっかけに大きく飛躍するスターも多いことから、個人の立場からは組の異動などは仲間との別れを意味して辛いことだと思うが、必要なことなんだろうなと思う。

終わりに

改めてまとめてみるとやはり楽しみ方の懐の深さを感じる。公演から入り、タカラジェンヌを知り、また公演に戻っていく。公演とスターを行きつ戻りつしながら、短期的には公演を楽しみ、長期的にはスターの成長物語を楽しむ。この過程でズブズブと沈んでいくのだ。宝塚の世界へようこそ。


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