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人の肉体を持った機械たち - 「スキャナーズ(1981)」感想

タイトルを見ると人造人間の話かな?と思われるかもしれないが、「スキャナーズ」は超能力者同士の戦いを描いた話である。能力を極め過ぎてもはや機械のように冷徹な性格をもってしまった人たちの物語なのである。

この映画は私の好きな映画トップ3に入るくらいの映画である。なにしろここまで俯瞰視された超能力ものは他になかなか無い。普通ESPが出てくる映画って映画的な誇張がされるものだが、この映画はただストイックに能力について描かれ、淡々と戦いが描かれる。CGが登場する前の低予算映画だからこそ、ほぼ演技力で超能力が描かれている。

ハワードショアのオーケストラとシンセサイザーを融合したBGMも、この映画の超能力者さながら、意識の奥に入り込む作用を持つほどにえぐり込みの深い音楽といえよう。

タイトルにも登場するスキャナーとは、本作における超能力者のことである。この能力は通常強い読心能力を指すのだが、能力が強いと他人を操ったり、あるいは頭部を爆破さえもできるほど危険な能力である。

本作の主人公であるキャメロン・ベイル(スティーヴン・ラック)も、そういったスキャンの才能を著しく持った男であった。冒頭より登場する、ホームレスであるキャメロンに蔑みの眼差しを送る金持ちの婦人に、そのままその悪意を返して頭痛を起こさせるシーンは、彼のあまりにドライな正義感を象徴すると言える。
彼は常に人の心の声が聞こえるような状態にあった。スキャナーを管理する国際的警備保障会社コンセック社に収容された彼はテロリストのボスで同じくスキャナーでもあるレボック(マイケル・アイアンサイド)という男を殺害する依頼を託される。
そのレボックという男はスキャナーの実践を行うセミナーに受講者として参加しており、講師に強い能力をかけて爆殺した。彼はスキャナーたちで世界征服を目論む恐ろしい男であった。
一方彼は能力によって苦しみ世の中を憎む余りに自己破壊的になり額に傷跡を残し、その果てに狂ってしまった男でもある。この宿命ゆえに主人公キャメロンとは真逆を行く存在であった。
両者の攻防の末明かされるスキャナーの真実とは果たして・・・!

この映画一番注目してほしいのは「目」かもしれない。
特にキャメロン・ベイル演じるスティーヴン・ラックによる「目」の演技はこの映画の異様さと神秘性を象徴するものといえる。あまりにドライな、人間の顔をした人間ではない存在のような眼差しは主人公ながら何か超越したような恐ろしいものを感じる。
この「目」がどうなっていくのかは・・・見てのお楽しみとしておこう。

とにかく、この映画はやけにリアルな迫力をもった超能力ものと思う。本当に人の心が読めすぎて、受け入れるのであればそれはどこかまともじゃない感じになるし、受け入れられなかったらレボックのように自分の居場所を求めて人間を憎み、狂っていくのかもしれない。「ザ・フライ」もそうなのだが、クローネンバーグの極限の人間性とでもいうべき描写は見るものを深く印象付けると言える。


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