風に恋う|プロローグ
指揮棒が構えられる瞬間は、いつも、体がぶるりと震えた。
これから始まる十二分間の幸せな時間を前にした、武者震いなのだと思う。
指揮棒が振り下ろされ、奏者が一斉に息を吸う。
ホールを鋭い風が吹き抜ける。
全身で、音楽の神様から吹く風を受けている。
こういう幸せが、これからの人生の中で何度も感じられたらいい。
十八歳の不破瑛太郎(ふわ・えいたろう)は、そう願っていた。
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これから始まる十二分間の幸せな時間を前にした、武者震いなのだと思う。
指揮棒が振り下ろされ、奏者が一斉に息を吸う。
ホールを鋭い風が吹き抜ける。
全身で、音楽の神様から吹く風を受けている。
こういう幸せが、これからの人生の中で何度も感じられたらいい。
十八歳の不破瑛太郎(ふわ・えいたろう)は、そう願っていた。
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