額賀 澪 NUKAGA Mio

小説家。最新刊『風に恋う』発売中。2015年松本清張賞・小学館文庫小説賞受賞。既刊『屋上のウインドノーツ』『ヒトリコ』『タスキメシ』『さよならクリームソーダ』『拝啓、本が売れません』など。詳しくは>>>http://nukaga-mio.work/

おいたんの願い事

「五円玉あるか?」

 拝殿から歪に伸びる参拝の列に並びながら、おいたんがそう聞いてくる。

 私が答えるより早く、おいたんは「ほら」と五円玉を差し出してきた。真新しい、黄金色にきらきらと光る五円玉を。

 前に並んでいた人が参拝を終えた。賽銭箱の前に進み出て、お辞儀をして、お賽銭を投げて、鈴を鳴らして、「二礼二拍一礼だっけ? 一拍だっけ?」と迷って、おいたんの方をちらりと見る。おいたんを真似て、

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『風に恋う』PV②

『拝啓、本が売れません』(KKベストセラーズ)で話題を呼んだ松本清張賞作家が挑む、デビュー作以来の吹奏楽×青春小説。

ぶつかり合いから、音楽は輝くんだ――。


『風に恋う』額賀澪
http://nukaga-mio.work/windgazer

『風に恋う』PV①

吹奏楽に賭けた青春
憧れの先輩が指導する吹奏楽部で全日本コンクールを目指す少年--
「やりたいこと」と「現実」のギャップ
「俺は、ブラック部活に洗脳された馬鹿な高校生のなれの果てですか」


『風に恋う』額賀澪
http://nukaga-mio.work/windgazer

猫と狸と恋する歌舞伎町|目次

序章

第一章 化け猫、谷根千を駆ける

| 01 | 02 | 03 | 04 | 05 |

第二章 化け猫、再びの歌舞伎町

第三章 化け猫、潜入する

第四章 化け猫、脱走する

第五章 化け猫、飼い猫になる?

終章

猫と狸と恋する歌舞伎町|1章-5

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「お前が化け猫だろうが人間だろうが俺にとってはどうだっていい。自分の力をどう使ってどう生きようと俺が知ったことじゃない。だが、椿に手を出されたとなっちゃ話は別だ。いくら家出中と言っても、あいつはああ見えて、愛宕組の跡継ぎ候補だからな」

 ゆらりと、目の前で炎が揺らめいたように錯覚した。愛宕君彦の右手が伸びる。胸ぐらを掴まれるのかと思ったら、前髪を長い五本の指に鷲掴みにされた。無意識にこ

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猫と狸と恋する歌舞伎町|1章-4

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 しばらくして、車が停まるのがわかった。俺を膝に抱えていた男が、袋を両手で抱えて車を降りる。足音の響き方が変わったから、建物の中に入ったのだろう。エレベーターに乗ったのも音で見当がついた。

 廊下を少し歩いて、男が部屋に入る。耳に神経を集中すると、部屋の中にすでに人の気配があった。俺をここに連れてきたのが四人。少なくともそれ以上の人数が今、俺を囲んでいる。

 さて、どうやって逃げよう

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