【物語詩】名前を忘れタネ☆
なんだかフワフワに沈められて
なんだかモリモリと温められて
ムズムズするなぁと思っていたら
それは夢の終わりの合図だった
目覚めてみたワタシは
小さな芽になって世界を見つめていた
だんだんと色づく懐かしい景色を
そうだ ワタシは種だった
夢の入口に置き忘れた記憶を読み返した
でもそのメモ帳には書き忘れたことが
そうだ ワタシは何の種だっけ?
うっかりワタシの名前を忘れちゃっタネ☆
ワタワタしたら少し背が延びちゃっタネ☆
きっと人が生まれて死んだくらいに
長い月日を眠っていたんだね
お月様とお日様とは長いお付き合いだもの
自分は何者……いや何花……いや何木なのか
ひょっとして誰かの新しい気持ちなのか
わからないまま 明日へ挨拶を繰り返した
思い出したくてお星様に祈ったよね
たぶん答えをくれるのは数百年後で
大きくなるまでの時間稼ぎはできタネ☆
いろんな人がワタシを見て
いろんな顔をしましたわ
いろんな言葉が聞こえてきて
いろんな葉っぱを広げてみたわ
そろそろワタシの成人式
そろそろワタシの名前を呼んで貰える
ウズウズと蠢く土に応援されながら
正装のお日様が明けるのを待っている
おめでとう 輝かしい今日に乾杯だね♪
やっとワタシはタネを卒業しタネ♪
あとがき
これを書いていて、就活生が内定を貰えないうちはまだ何者でもないみたいな話を思い出していて、それってこういう種が自分のことがわからないまま育つ感覚に似ているのかなみたいなことを考えました。
あと。
語尾ダジャレのせいで、ポケモンのフシギダネを連想していました(笑)。
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