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【物語詩】あなたの物語を占います

 喫茶店の一角を借りた アタシのための空間
 まるで暖簾をくぐるように客が会釈をする
 ようこそお越しくださいましたと 微笑む

 学校帰りのお客さんは不安げに座り込んだ
 テスト中よりも緊張しているみたい
 恋のお悩み? とカマを掛けたら大的中
 次はテストのヤマを相談されるかもね


 私はよく当たると評判の占い師
 あとね 本名も生年月日も訊かないし
 指紋どころか手相も視ないから
 セキュリティーばっちりで有名なの

 私の占いに必要なのは本人の悩み
 それと きっかけになった出来事
 そして 何よりも解決するって覚悟


 恋する高校生は語り出す 胸の内を
 なんとお相手はアンドロイドですって!
 でも平気よ 私はよき理解者だから
 性別年齢人種 種族すら不問なの

 高校生によれば 贈り物をしたら
 アンドロイドとよく話すようになったと
 これは脈ありかと疑っているそうな

 ……わりと攻めていたのね
 一途で面白い子なのね そういうの好き


 私はお客様に断り 占いに入る
 深い深い私の秘密基地へ
 答えを探し当て 準備を整える


 喫茶店に意識を戻した私は
 そのまま高校生に祝詞を告げる
 そのまま最善を尽くせば良いと

 どうしても不安なら 半年後に再来店して
 アフターフォローもばっちりだから
 高校生は戸惑いつつもお辞儀をしてくれた


 一途で面白くて 素直な子で良かった
 たまに厄介な客がいるのだから

 以前に来た作家志望の彼は
 己の欲望ついでにネタ探ししようと
 メモ帳片手にギラギラと質問攻めした

 こっちはセキュリティー万全な分
 プライバシーも堅いんだからと
 テキトーに藪占い師の振りして逃げた

 まぁ 彼の恋は実らないわね……
 私の占いとか関係なく!


 あなたの人生は唯一無二の物語
 少しだけ 私にくださいな
 その代わり 少しだけ未来に関わるわ
 少しだけ 私からアドバイスを

 あなたに幸があらんことを
 少しでも未来が良くなりますように
 そう祈るかのように 私は占うの




今までの物語詩を全部、数珠繋ぎしようと企んでいましたが、願いは叶わず。後日に引き継がれました~。


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