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【物語詩】アンドロイnバレンタイン

 皆様、はじめまして!
 ボクは或る高校のアンドロイド高校生
 科学者でもある校長先生に育てられた
 永遠の高校3年生さ ピースっ!!

 ボクの仕事……じゃなくて勉強は
 学校みんなの心に寄り添うこと
 クラスメイトの進路相談にだって
 後輩の部活の悩みや
 先生の仕事グチだって聞いちゃうよ☆

 個人情報対策もばっちり
 いじめやハラスメント認定された情報だけは
 校長先生や教育委員会に送信するけれど
 それをどうするかは彼らの責任として
 ボクは出会う人たちと仲良くしたい!


 ある日 メンテナンスに来た博士が言った
「そういや君、恋はしているのかね?」
 ……え 恋?
 してませんよ だってボクAIだし
「そうか……そろそろかと期待していたが
 わしのプログラミングに不備があるのか」

 ……………………????
 あっ そういうミッションってこと?!

「了解です。やってみますねっ♪」
「いや、無理にではなくて……」
 モゴモゴしている博士を尻目に解析開始
 恋愛って 愛って 何かな?

 ……全然わからない
 三大奇書の論文さえ書けるボクなのに
 恋愛は何一つ解けないことに気づいた


 なんでだろうと 悶々過ごす冬のある日
 バレンタインがやって来た
 この国の大恋愛イベント キタコレ~ッ♪

 マナブはマネブ つまりマネルでもあり
 皆の真似をするのもボクの勉強の定石!
 家庭科の先生とコラボdeチョコ作り~
 ジェンダーフリーで 皆にお配り~

 誰もがニコニコとチョコをゲット
 胸元のエンジン音がほわっとヒート
 これは……恋をコンプリート!?

 ……うーん ちょっと違う気もするなぁ


 考えていると残った1つのチョコレート
 誰にあげてないっけ……あっあの子だ
 メモリを確認して断定! レッツゴー!

 でもあの子 なかなか捕まえられない
 行動範囲の違う下級生 小柄ですばしこい
 いつしか休憩時間ごとに追いかけごっこ
 受け取ってくれない……ボクのこと嫌い?


 ついに省エネモードに入る放課後の校庭
 へたり込んだ僕の頭上に 小さな影
 少しだけ震えながらもじもじしている

「あの……これを渡したくて」
 差し出されたのは可愛いラッピングの袋
「どうしても 僕から先に渡したくて」

「あ……ありがとう……」
 袋を眺めながらボクは結論を導き出す
 ボクのエンジンは 彼に加速されている
 照れくさそうな笑顔は冬にしては暖かくて


 これは恋なのか 違う愛なのか
 ボクにはQEDを唱えることはできない
 ただ 話を聞いた博士の顔も 暖かくて




この詩を書いている途中、家庭科の先生にペコペコしたり、大量のチョコ材料を発注している博士の姿が、確かに私には見えました(笑)。

感情移入し過ぎですね。

ちなみに各登場人物のジェンダーはフリーダムということで、お好きなように当てはめてくださいませ。

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