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『貴公子』優しくはない優雅さ

 今週、予期せずして映画のことばかり書いています。連続で読んでいる方、すみません。これで一旦終わりです。
(土日でまた書く……かも?)

 韓流映画『貴公子』。昨日、観て参りました。
 小雨の中、チャリンコをこいで駅に突撃(笑)。

フィリピンで病気の母のために地下格闘で日銭を稼ぐ青年マルコは、韓国人の父の行方を知らない。そんなある日、彼の前に“父の使い”を名乗る男が現れ、マルコは韓国に向かうことに。飛行機の中でマルコが出会ったのは自らを“友達”と呼ぶ謎の男“貴公子”。不気味に笑う貴公子に恐怖を感じ逃げるマルコだったが、彼の執拗な追跡と狂暴ぶりに徐々に追い詰められていく…。

なぜ、マルコの前に突然、父親は現れたのか…? 謎の貴公子の目的とは…?すべてが明らかとなった時、マルコはさらなる危機に見舞われる。

映画『貴公子』公式サイトより

 あのですね……。

 警戒していたよりは、優しい世界だったかも?
 あ……違うな。全然優しくないな……。
 うん……優雅でした。さすが『貴公子』(笑)。

 全体的に見ると貴公子然ではないシーンもありつつ。キム・ソンホの演じる謎の男は、スクリーンの中で縦横無尽に暴れまくった印象。

 本作のジャンルはアクションノワールとされていますが、私の想像していたバッキバキの格闘技シーンはなく(笑)、どちらかというと銃撃戦の方が多めでした(肉弾戦も無いわけではなかったですけれどね)。

 あと、作品全体で見ると、一貫してアクションシーン満載という風には思いませんでした。一旦アクションが起こると激しく過酷で残酷な展開になりますが、そうでないシーンは静か。それかお茶目な貴公子が喋っている。

 それに翻弄される青年マルコ。
 元来の性格なのか、環境に抑圧されることに慣れきっているせいか、あまり喋らない。でもカン・テジュ演じるマルコの目は、口よりも感情を素直に伝えてくれます。私はそう感じました。たぶん根は素直なんですね(テジュ本人が、かもしれないけれど)。


 さて、唐突ですが、ここで全体評価です。

およよ……?

 少し厳しい判定になってしまいますが☆3です。
 ただし、この基準は、私の想定していたアクションノワール及び貴公子像から逸脱していたという理由で、まず☆1の減点です。ちょっと八つ当たりが入っています(笑)。

 それでも面白いと思っていますけれどね~。

 他の減点は、主に、この作品は宣伝で「新たなアクションノワール」と謳っているのですが、単に王道アクションノワールではないよなと感じたからです。『貴公子』はアクションノワール映画という「娯楽」でもあるけれど、「社会問題」を捉えたフィクション映画でもあるのです。

 そもそもマルコの立ち位置はコピノです。
 彼がコピノだから、この物語は成立します。
 生い立ちからして複雑。だからあまり語らない?

コピノ(Kopino)は韓国の男性とフィリピンの現地女性の間で生まれた2世をフィリピンで言う言葉である。(中略)韓国男性がフィリピン女性を妊娠させ出産となっても、ほとんどの場合韓国へ帰国をしたり、認知や支援をしないため、コピノの大半は貧困で教育もろくに受けられず、汚物のたまった掘っ立て小屋で粉ミルクすらまともに摂取できない最底辺の生活を余儀なくされている。

Wikipediaより抜粋

 そんなマルコが物語のキーマンとして巻き込まれていくわけですから、きっとパク・フンジョン監督も、コピノの現状を伝えることを1つのテーマとして映画製作をしたのだろうと考えられます。
 あと、フィリピンの国籍ごった煮なアンダーグラウンドの描写も。

 考えれば考えるほど、『貴公子』にはアクションノワール×フィクションの2面性を感じるのです。だから王道ではないと私なら言う。

 日本に対して突然コピノのことなんて言えないから、伏せての宣伝だったとは思うし、そもそもネタバレに繋がりかねない面もあったけれど、知っているのと知らないのとでは、受け取り方は違う。

 私みたいに悶々と考え込んでしまう人間にとっては、知っていた方が、気合を入れて観たかなと。というか、もっと前面に出したってよかったのに。なんなら徹夜して思い耽るのに……。だから、-☆1(笑)。

 これも八つ当たりかな? 広報係に対する……。


 ここまで、批評も書いてしまったのですが、各キャラクターは魅力的で、楽しませてもらった側面も確かにあります。

 というか……監督?
 アナタ本当に、これで満足ですかっていう。

 私はこっそり想像するのです。
 この『貴公子』……監督は相当にイメージを膨らませて、ヤキモキさせていたのではないかと。仕事のない日の過ごし方とか、同業者との共同戦線ストーリーとか、マルコとのバディとか考えていませんでしたか??

『貴公子』のゼロエピソードとか、スピンオフストーリーとか、考えていませんでしたかぁ??

 ぶっちゃけ連ドラでやってみたくない??
 ──とか、考えてみました(笑)。

 連ドラでたくさん貴公子の活躍を観た後に、改めて『貴公子』を観直したら、新しく観えるものがあるのかなぁって思いました。

 ……ならんかなぁ……。
 もしもやり遂げたら、私は観たいなぁ。


 貴公子。
 義賊ではないんよなぁ。そこがミソ。

 正直、彼が天使か悪魔か、私には断言できない気持ちがまだある。

 こんだけ私に考えさせるとは、やはり良作なのか。ならば、もしも続編が本当に出るのならば、☆を1つ返上しようかな。


 もうしばらく、個人的に考察はしようと思います。


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