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なぜ海苔漁師が山に木を植えるのか?植樹への想いに触れた日。

『今年3年ぶりに植樹祭やりますよ。沼田さんもどうですか?』

佐賀県有明海漁連、鹿島市支所の方から連絡があったのが1月末。
私は2つ返事で『行きます!』とこたえていました。

有明海産の海苔でも、産地によってそれぞれ"おいしさの理由"は異なる。
鹿島の海苔のおいしさは?といえば"植樹"にある、と聞いたことがありました。

『海産物のおいしさに"植樹"が関係するの?』

と疑問に思い、調べれば『なるほど』と思うことがいっぱい。
ただ何を植えているの?何人くらい?どうやって?と、わからないことも。
自分の言葉で話せるよう、いつか自分も参加したいと思い続け、ようやくこの日がやってきた。

海苔の入札以外で九州に行くのは、2019年の種付けのお手伝い以来。
取材できる日が戻ってきたことに感激しつつ、いざ佐賀県鹿島市へ。
本日もどうぞゆるりとお付き合いください。

【海苔のおいしさは山から】

『海苔にとって、山と川が大切なんですよ。』と店舗でお話しすると、
「森は海の恋人」運動をご存知の方などは『牡蠣と一緒なんですね!』と言ってくださいますが、まさにその通り。

山に雨が降り、腐葉土を通ることで"フルボ酸"ができる。地下にしみ込むことで"フルボ酸鉄"に変化し地下水から湧き水となり川に流れ込む。そして鉄分がボートの代わりとなり、海苔など海産物の栄養に必要な"フルボ酸"を海まで運んでくれる。

簡単に説明すると、こんな流れで山・川・海は繋がっています。

実際に鹿島でこの植樹が始まったのは平成7年で今から28年前。現在各地で行われている植樹ですが、九州の中では先駆けだったそうです。結果が出るのに20年かかるという植樹を約30年前から行っている鹿島だから、おいしい海苔が採れる。
以前の記事でこんな風に書いていました。

“鹿島漁場”
佐賀県、塩田川河口の漁場。漁師さん曰く川の道筋を示す“川筋”に位置するため、海苔はよりうま味を増して育ちます。また鹿島市には小さな川も何十本とあり、多良岳を源泉に良質な山のミネラルが有明海に注ぎ込みます。「海を美味しくするためには山から」と約30年も前から植林を行っていることで、山から川へ、川から海へと、“フルボ酸鉄” が流れ栄養となります。更に有明海のミネラルと合わさり、鹿島の初摘み海苔は独特なうま味の強さが特徴となるのです。

自分好みの海苔の選び方 〜海苔のシングルオリジンとは?〜より抜粋

海苔はもちろん、みかんや山葵(わさび)、米に日本酒、牡蠣など、この恩恵をうけた名産品は数多くあります。

塩田川の先に広がる海苔畑。山からの栄養を受け止める最高の場所に広がっていますね。

【いざ植樹へ】

朝9時。待ち合わせ場所に集合し、用意されたバスでいざ出発。遠足を思い出すようなドキドキ感。

さっそく車窓から海苔畑が。これだけでモチベーションが上がってしまう。

多良岳山系の山に到着。今回海苔の生産者をはじめ、地元の皆さんが200人も集まったそうです。

まずは植樹の方法について、お手本をじっくりと観察。皆さん真剣に学んでいますね。

いよいよ植樹開始。皆一斉に準備された苗木めがけ散っていきます。

今回植えるのは「もみじ」と「ケヤキ」の苗木で900本。計算すると1人あたり4.5本!!植えないといけません。

まずは苗木を植えるための穴掘りから。用意された鍬(くわ)を使い、ひたすら穴を掘ります。

根が大きく広がっているので、かなり深く掘らないといけません。

苗木を埋め土を被せたら固定作業に入ります。竹棒を横に立て、麻の紐で苗木と優しく結んであげれば完成。
『立派に育ってくれよ。』と願いをかけ1本1本大切に植えていきました。

【植樹にかける生産者の想い】

作業の合間に、かつてぬま田海苔で販売した海苔の生産者にも遭遇。

画像真ん中の永吉さんは、たった1箱しか採れなかった《鹿島第三味推上2》の生産者。以前noteでも記事にした伝説の海苔の生産者に初めて会えました。

『毎年ああいう海苔が採れたらいいんですけどね。なかなか難しくて。』
と話題は今期の不作について。
『どれだけ山に木を植えても、雨が降らないことにはどうにもならない。』
と永吉さん。

海苔の漁期に雨が降ることで川の水量が増し、海に栄養が流れこむ。雨が少ないことで、その流れが崩れ今期は初摘みから苦戦する漁場が多くあった。
今回生産者の皆さん口を揃えてこう言っていましたが、それだけ厳しいシーズンだったということ。水の循環が本当に大切。

『この植樹は来季とかではなく後世のためにやっています。おいしい海苔が自分たちの代だけではなく、これからも採れ続けるようにね。』

それを信じてやるしかないよと、前を向いてこう言ってくださいました。

こんな生産者との出会いがあちこちで。

『自分たちの漁場とか関係なく、有明海にとって良いことには参加しないとですね。』と芦刈の生産者である橋間さん。
ぬま田海苔でもファンが多い芦刈漁場は六角川と嘉瀬川が流れ込む中部地区にあたるのですが、西武地区の鹿島まで手伝いにくる姿に、生産者の"おいしい海苔を採るためなら"という想いを強く感じました。

普段海の上にいる生産者がこれだけ集まることもなく、あちこちで海苔談義が繰り広げられました。これは海苔屋にとって最高の時間です。
海苔漁師たちがどんな想いで植樹をしているのか?その本質にようやく触れることができた、貴重な1日に。

900本の植樹もあっという間に終了。参加者一人一人の高いモチベーションには本当に圧倒されました。それだけ地元の皆さんの植樹にかける想いが強いということ。

【料理人と生産者を繋げる】

今回取材に同行してくれたのは浅草の割烹「食堂うゆき」料理長の金澤さん。ぬま田海苔でも何度か紹介している和食とワインが楽しめるお店です。

『ぜひ自分も行きたいです!』とハードスケジュールの中、参加してくださいました。

海苔の生産者と、実際にその海苔を調理する料理人が触れ合う場は普段なかなかありません。こういう光景が見れたことも良かった。今後もこうやって繋げる場を作れたら良いなと考えています。

そんな金澤さんの旬の食材を活かした料理もペアリングしてくれるワインも最高。気になる方はぜひ「食堂うゆき」へ。
※事前予約が必要です。

【仕事後のお楽しみ】

参加者全員に配られたのは《鹿島海苔》、しかも初摘みの贅沢さ。パリッと歯切れよく、うま味がじんわり広がりおいしい。これぞ鹿島の海苔。山で食べる海苔もまた格別でした。

お昼は《牡蠣焼き八光》へ。海を眺めながら食べる牡蠣やサザエに竹崎カニは最高すぎるランチでした。

【鹿島産の初摘み海苔発売中】

今回、植樹祭へのエントリーなど手配してくださったのは鹿島市支所の平さん(画像右側)。アテンドも含めいつも本当にありがとうございます。

そんな鹿島の海苔ですが、ぬま田海苔では現在2つのフレーバーが発売中。
お酒のアテやおつまみにぴったりな《鹿島第二初◯上1》

こちらは手巻きやおにぎりにおすすめの《鹿島第三壱重1》。どちらも大人気です。

また、塩田川の恩恵を受けるのは鹿島だけではありません。パリッと柔らかく、とろみが残る白石漁場の海苔もおすすめですよ。

以前もお伝えしましたが不作といっても量が採れないのと、おいしい海苔が採れないのは別の話です。
どんな時もおいしい海苔を頑張って作る生産者はいます。そんなおいしい海苔を仕入れられるか?は海苔屋しだい。

おいしい海苔がないんじゃないか?と心配な方は推しの海苔屋で確認してみてくださいね。有明海以外の産地の海苔と食べくらべするのもおすすめですよ。

最後に、本日【日経クロストレンド】にて、ぬま田海苔のnoteの取り組みについて取材していただいた内容が公開されています。良ければぜひご覧ください。

以上、本日も最後までありがとうございました。
ぬま田海苔へ何かリクエストがあればいつでもご連絡を。note/Twitter/Instagramどこからでもお待ちしております。フォローや投稿も大歓迎です。
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