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11月の雨のように。

いつもと同じように
3階のカレー屋さんで
福神漬けなしの250円のカレーを買った後。

君はスマートフォンをずっと見ている。
私の隣で。
今思えば、君の瞳はずっと前から
私のものではなかったのかもしれない。

何を見ているのか気になってちらっと横を見る。
イタリア人の。長いブロンドヘアの。
美しい人との会話。

語尾には赤いハートマークがついている。


そうか。

そうかぁ。

そうかぁぁ。


今日の雨は、冷たく、悲しい。
この前の雨から随分と月日が経ってしまったようだ。


カレーを食べ終わってからも、雨は降り続けていた。

2本の傘が開いた。

2人の歩幅も開いていく。

今日がきっと最後の雨だ。


分岐路に立つ。

「また来週ね!」君は笑顔で振り返る。

「うん、来週」私は戸惑いながら答える。

来週も会えるのか。


そうか。

そうかぁ。

そうかぁぁ。


いつまで「また来週」と言えるだろうか。


季節は限られた時を奪う。


いつ、「君が好き」だと言えるだろうか。

いや、言えただろうか。


前に進む君の背中を、見つめていた。

届かない私の手と心は、何処へ行くのだろうか。

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