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嘘とうそと笑顔

忘れたくないことを
忘れてしまいそうで
わたしの代わりに覚えていてくれませんか。

帽子を落とした。
誰かが作った大事な帽子。
誰も気づいてない。落としてなんかいない。
罰金など払うつもりもない。寝る。

「あんなところで落とすなんて信じられない」
「すみません」
「後で1回やらせるから」
「はい、お願いします」
珍しく声を出した朝のミーティング。
帽子を落としたことが全員にバレてしまった。

「落としてすみませんでした」
1000円を持って統括の先生に謝りに行く。
なんで見つかったの。
普段1番見つけてもらえないわたしなのに。

結果、千秋楽でも落としてしまった。
誰かに気づかれていただろうか。
また1000円払いに行くの。
あと打ち上げだけなのに、誰の1000円になるんだよ。

謝らなかった。払わなかった。

打ち上げ中、
先輩2人が1000円を持って統括のところへ行く姿が見えた。
「うそ」
統括の先生は1000円を受け取らなかった。笑ってた。
なぜか申し訳ないような、わたしから笑顔が消えた。
彼女たちはきっと気に入られて、進級する。
わたしは進級しない。

月日が経った。
あの時払えばよかったのか、払わなくてよかったのか
考えている。
気づかれていたのか、気づかれていなかったのか
考えている。


進級できずに落ちぶれて夢を諦めたことを後悔しながら。

やらない後悔より、やる後悔ってか。

笑顔は消えたままだ。

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