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今年最初の雪はそっと溶ける

1月1日が彼の誕生日だったから、
「Happy new year」と「Happy birthday」とだけ送った。


返信は来なかった。


少し前に、彼が珍しくインスタグラムに投稿した写真を見たとき、
「あぁやっぱりそうだよね」と悲しくなり、
どこかほっとした気持にもなった。

彼が自分のことを好きになるわけはないし、
浮かれながら毎週カレーを食べていたのは
自分ひとりだったと認めるしかない。

彼だってもうすぐ帰るんだし、
私だってもうすぐ日本を離れる。

これがいちばん良い選択なんだ。

お互いに。


今日は珍しく東京なのに雪が降った。

子供たちが叫びながら楽しく遊ぶ声で起きた。

地元なら雪が降っても何も変わらないのに、
東京で雪を見ると、どこか異国に来た気がする。

今日は電車も動かないだろうし、
外に出たら事故が起きそうだ。

部屋の小さな窓から外を眺めることにした。

雪は昼になってもやまなかった。



誰からも連絡が来ませんように。
と願う日に限って、連絡は来てしまう。

「ねぇ雪!僕人生初!やほ~!」

ビデオつきのLINEだった。

1月1日のメッセージが自動的に既読になる。

LINEの嘘つき。彼は絶対読んでない。

ビデオには
寮の近くで雪だるまや滑り台を作って
楽しんでいる。

低い笑い声も聞こえたし、
高い笑い声も聞こえた。

通知音が止まらない。

「雪って冷たいね~」

「雪って食べてもいいもの?」

「今、なにしてる?」

まるで小学生のような言葉に
「自分はこんな幼い人間に恋をしていたのか?」と
不覚にも呆れていた。

雪の塊がそっと溶けていくように
彼への気持もそっと溶けはじめる音がした。


この雪はきっと積もらない。


窓の外の雪は少しずつ、やみはじめていた。

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