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ノーコードは流行るか?という議論は、すでに終結している。

2023年に入り「ノーコード」という言葉が、単なる流行語ではなく、当たり前の概念として浸透しつつあります。

数年前までは、ノーコードツールの機能がまだ未成熟だったこともあり、「結局、流行らないのでは?」という論調がありました。

しかし、ここ数年のノーコードツールの飛躍的な進化に伴い、ノーコードによる自動化・アプリケーション構築は、もはや当たり前の世界が来ています。

この記事では、なぜ「ノーコードが当たり前」の世界になるのか?という理由について、紹介したいと思います。

ノーコード化は、時代の流れで起きる「必然」

ノーコードは、これまで人類の進化の上で繰り返されてきた「複雑なプロセスの簡略化」のひとつといえます。

私たちは、複雑で面倒なことを簡略にすることで、様々な発明をおこなってきました

例えば、服を手で擦って洗濯をしなくても、洗濯機の登場によって、服の汚れを効果的に落とす複雑な工程をボタンを押すだけに変えました。

この「複雑なプロセスの簡略化」をノーコードに当てはめてみます。

スマホアプリを構築する例で考えてみましょう。

「ボタンを押したらカメラを立ち上げ、撮影した写真を画面に表示する」

という動作を実現したいとします。

これを、全くの初心者がゼロからコードで書き、画面で動くところまで実装するとしたら、学習を含めてどれくらい時間がかかるでしょうか。

コピーペーストで簡単に実現できるかもしれませんが、環境構築などを行なっているうちに5時間はかかりそうです。

しかし、これをノーコードツールで構築するなら、エディターを開いて30分もかからずに、マウス操作のみで誰でも達成可能です。

これはまさに「複雑なプロセスの簡略化」といえます。

これは単純な例ですが、もし、さらに複雑な機能をコードで実装する場合、プログラミングに関する総合的な学習が必要になります。

しかし、学習をある程度進めたとしても、処理速度などを考慮した最適な記述ができる熟練のエンジニアになるためには、さらに途方もない時間と労力がかかるでしょう。

私たちがそのことに労力を割かなくても、ノーコードツールのプラットフォーマーは、多くの投資家から得た資金で、優秀なエンジニアを雇い、最適で最速に機能が動くための方法を常に考えてくれます。

ユーザーである私たちは、ただその構築済みの最善のロジックを利用して、一番速い方法で、アイデアを形にするだけで済みます。

私たちの目的が、プログラミングをすることではなく、アイデアを実現することであった場合、そのための手段として、複雑なコードを書かずに、マウス操作のみで済むのであれば、それにこしたことはありません。

コンピュータの歴史から見たノーコード


ノーコードは、言葉としては新しいものの、ITの進化の上で自然に生まれてきた概念です。

最初期のコンピューターは、0と1の羅列でした。

しかし、それが分かりずらいので、より簡略化され、まずは私たちの馴染みのある「言語」を使って、対話方式のコンピューターに進化しました。

さらにその対話も、黒い画面に文字を打ちこむ作業が苦痛であるため、画面に表示されたボタンを、マウスでぽちぽち押す画面(GUI)にさらに簡略化しています。

こうした簡略化の結果として、これまで一部の専門家しか触れなかったコンピューターが、すべての人が気軽に扱えるようになりました。

複雑なものを簡略化することで、大衆が理解しやすくすることは、それ自体、人類の進化に置いて繰り返されてきたことです。

アプリケーションを構築することについても、複雑なコードを書く必要がなくなる=簡略化が起こることは、歴史から見ても自然な流れといえます。

エンジニアも恩恵を受けているノーコード

日頃からコードを書いているエンジニアも、ノーコードの恩恵を受けている当事者に違いありません。

自分でゼロから複雑な機能を作らなくても、先人たちが作ったパッケージを利用すれば、数行で必要な動作を得ることができます。

また、AWSやGoogleCloudなど様々なクラウドサービスの出現によって、簡単に高機能な機能の組み込みが可能になりました。

これも、大きな意味で、ノーコードの恩恵に預かっていると言えなくもありません。

現時点では、コードも書かなければ、細やかで複雑な制御や、エンタープライズレベルの機能を実装できないかもしません。

しかし、最近になり、デリケートなお金のデータを扱う金融サービスもノーコードでの開発事例が出てきており、「ノーコードだからできない」という垣根は取り払われつつあります。

これまでコードでのみ実現できた高度な機能も、時間の経過とともにノーコードに置き換えられていくことでしょう。

海外のIT企業もノーコードへ注力

日本では、まだまだノーコードは浸透していませんが、海外のIT企業では、ノーコードは重大ミッションです。

Microsoftであれば、PowerAutomateやPowerApps、GoogleであればAppSheetやFlutterFlowなど、ノーコードをウリにしたツールに注力をしています。

また、製品としてノーコードツールを売り出さなくても、すでにある製品の中で、コードをノーコードに置き換えるケースが多くなっています。

例えば、世界で最も利用されているCRMであるSalesforceも、かつては機能の実装のために、Apexという独自の言語を記述しなければなりませんでした。

しかし、現在はそうした機能は「フロー」という内部のノーコードツールを使って、複雑な自動化をノーコードで実現できるように改善されています。

できるだけ多くのユーザーに利用してもらうために、複雑なことを単純に実行できるようにし、ハードルを下げることは当然のことです。

もはや、世界的なIT企業でノーコードに着手していない企業は存在しないといっても良いでしょう。

なぜ日本ではノーコードの浸透が遅れているか

ここまで世界的に話題になっているノーコードが、日本ではまだまだ浸透していない理由は、以下の5点を挙げます。

1.日本語対応しているノーコードツールが少ない

現在、知名度の高いノーコードツールのほとんどがアメリカ製です。

基本的に、日本語対応が間に合っていません。

日本語で書かれた魅力的なトップページに期待してサインアップしたところ、編集画面を開いたら英語だらけ、ということがほとんどです。

英語を見ること自体、人によっては拒否反応が起こります。

その上、触れたこともない未知のツールの英語ドキュメントとなれば、プログラミングを始めること以上にストレスかもしれません。

これはGoogle翻訳で、ドキュメントのページやYouTube字幕を翻訳することで、8割方のストレスを軽減することができますが、やはり英語に対する拒否反応は多くの日本人にとって大きな壁になるでしょう。

2.ノーコードツールが発展途上である

ノーコードツールのプラットフォームは、まだまだベンチャーが多く、製品も完全に成熟していません。

そのため、プラットフォームによって、できること・できないことが明確に存在します。

現時点では、

  • 自分自身が実現したい機能を精査する

  • それに適合する機能がノーコードツール側に用意されているかを確認

という作業が必要です。

例えば、「時間が経っても画面をスリープさせない機能」など、ニッチだけども、制作したいアプリによっては必須の機能が備わっているか、事前にチェックしなければなりません。

(大体は作り込んだ後に気づくものですが、、)

しかし、機能が限られているといっても、アプリの完全性にこだわらなければ、大体のことは実現できます。

おそらく、ノーコード開発に関心がある人のほとんどは、目の前のちょっとした不便を解決する方法を探しています。

いきなり「何百万人もの人が利用することを想定し、競争優位性のある複雑なアプリを作ろう」とは思ってもみないことでしょう。

ノーコードツールの単純な機能であっても、一市民が目の前の問題を解決するアプリを開発する分には十分すぎるということです。

しかし、ノーコードツールがプロダクトとしてさらに洗練されていけば、複雑なアプリでもノーコードで構築できる時代はやってくるでしょう。

3.ノーコードツールの使い方の学習障壁

ノーコードツールの多くは、テンプレートを用意することで、初心者に対して使いやすさをアピールします。

最近はAIによって、ユーザーの要望を打ち込むと、それに合ったテンプレートを発行してくれるサービスもあるようです。

しかし、テンプレート化された機能は、ほとんどの場合、一部は使えるものの、自分が実現したいユースケースに完全に当てはまらない場合が多いものです。

そのため、実現したいことの7割くらいはテンプレートで達成できるかもしれませんが、重要な残り3割のところが実現できず、「痒い所に手が届かない」ということが起こり得ます。

そして、テンプレートを独自にカスタマイズしたい場合は、そのノーコードツールの使い方に習熟しなければなりません。

しかし、どのノーコードツールも、独自の概念や操作方法があり、慣れるまでに多少時間がかかります。

当然、プログラミングに比べれば、学習時間は短くて済みますが、上述したように、まだ日本語対応していないドキュメントが多いので、学習障壁が高いことがあります。

ノーコードツールは、自由度が高ければ良いというものではなく、設定項目が多いほど、初見のユーザーにとって、操作が複雑に感じられ、障壁が高くなります。

かといって、機能を単純にすれば、初見のユーザーにはありがたいですが、その分、自由度が少なくなり、柔軟なカスタマイズがしにくい場合があります。

そうしたトレードオフのバランスをうまくとりながら、各社、ノーコードツールの改善をおこなっているように感じます。

4.ノーコードかと思ったら、コードがある

ノーコードツールは、コードを完全に排除しているかと思いきや、独自のカスタマイズを加えるためには、コードが必要になることもあります。

どこまでをコードと定義するかによりますが、少なくとも外部APIを利用する場合、SQLJSONなどは、ある程度理解する必要があります。

また、紛らわしい概念ですが、「ノーコードツール」「ローコードツール」の違いのわかりにくさも、混乱の原因のひとつでしょう。

ノーコードツールは、非エンジニアであっても、コードを使わずに簡単に開発を行うことができるツールです。

一方で、ローコードツールは、エンジニアが本来コードで書くものを、GUIで効率的に行うためのツール、という側面もあります。

ノーコードを期待していたのに、画面の中で少しでもコードが出てきた時点で、モチベーションを削られるため、これも大きな障害です。

5.ITリテラシーが足りない

最近になって、日本でもプログラミング教育が始まったようです。

しかし、これまでプログラミングに触れる機会がなく大人になった私たちは、そもそも「データベースとは?」というレベルで、リテラシーが足りていない場合があります。

ノーコードツールは、今のところ、ある程度日頃からパソコンを操作しており、ITリテラシーがある人が対象といえます。

非エンジニアで、エクセルやスプレッドシートすらも扱ったことすらない人にとっては、ノーコードツールを使いこなすのは、少し時間がかかるかもしれません。

しかし、そうしたITリテラシー、プログラミングの周辺知識を、ノーコードツールで手を動かすことで、学んでいくこともできるのも、大きな利点であると感じています。

まずは、簡単なノーコードツールから導入をはじめ、習熟してきたところで、より自由度の高いノーコードツールに乗り換えるといった方法もあるでしょう。

ノーコードは社会に何をもたらすか

ノーコードが社会に浸透することの一番大きなメリットは、

市民がアプリを開発できるようになり、社会問題が解決されていく

であると私は思っています。

これまでは、社会問題を解決できるアイデアがあったとしても、多くの場合、開発費用がないため、諦めざるを得ませんでした。

例えば、ネイティブアプリの場合、開発費用の相場は250万円〜、どんなに最低限の機能でも50万円はかかります。

社会問題と向き合う個人や団体は、常に資金に悩まされているため、アプリやサービスを作ること自体、遠い話だったことでしょう。

しかし、ノーコードツールの登場により、市民が費用も時間もかけずに、アプリを構築できるようになれば、社会問題に対して、自分からアクションを起こす手段が増えることになります。

結果として、ノーコードが普及するほど、社会により良い影響をもたらす市民活動が増えていくのではないでしょうか。

ノーコードについてのまとめ

ここまでのノーコードに関する議論をまとめると、以下のような結論になります。

・ノーコードは、将来的には、確実に世界中に浸透し、多くのサービスがノーコードで開発されるようになる。

・ノーコードは、発展途上のため制約があるが、現時点でも、一市民が開発するアプリに必要な十分な機能が揃っている。時間と共に、自由度と使いやすさが改善され、企業にも浸透していく。

・日本では、言語の問題やITリテラシーの問題から、ワンテンポ遅れてノーコードが浸透する。

私自身は非エンジニアですが、実際にノーコードツールを用いて、自分でアプリケーションを構築したり、業務の自動化を行なっています。

ノーコードツールの恩恵で、エンジニアに依頼をすれば数百万かかるであろう開発を、月数千円のノーコードツールで構築することができるようになりました。

また、そのプロセスで、プログラミング的な思考や、アプリケーション開発の流れなども知ることができ、非常に勉強になりました。

これまでは、何かアイデアがあっても、お金をかけてエンジニアに開発を依頼するか、「何もしない」の2択しかなかったかもしれません。

しかし、ノーコードツールの登場のおかげで、「自分で構築する」という選択肢が生まれたのは、革命的であると思います。

ぜひ、ノーコードツールで自分の思い通りにアプリケーションを開発することの楽しさを知っていただきたいと思います。


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