【 #いい会社帳 】no.02 Aesop(B Corp)

世界の“いい会社”のことを調べて紹介する「#いい会社帳」第二回はスキンケアブランドのAesop(イソップ)を取り上げます。

「#いい会社帳」についてはこちら↓

インスタで見かけるお洒落なバスルーム。そこにかなりの確率で置いてあるAesop製品(わたし調べ)。統一された茶色いボトルに黒と白のラベルのあれです。いつぞやから急に日本で見かけることが多くなったような気がしますが、実はただお洒落なだけのブランドではないようです。

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Aesopが認定B Corpになったのは、2020年10月。かなり最近のことです。Aesopが社会や環境に対してポジティブなインパクトをもたらすために、どのような取り組みをしているのか、見ていきたいと思います。


組織概要

ブランド名:Aesop(現在Natura &Coが所有するブランドの一つ)
創業   :1987年(メルボルン)
製品   :スキンケア、ヘアケア、ボディケア、フレグランス、化粧品など
販売拠点 :25ヵ国、320店以上
従業員数 :2,200人以上

B Corp認証取得:2020年10月
B Impact Score(※):87.1
(※)B Impact Assessmentのスコア。認定B Corpになるためには80以上のスコアが必要。


Aesopの取り組み

Aesopでは、SDGsのうち6つのゴールに対応する5つのサステナビリティコミットメントを掲げています。

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1. An inclusive and engaged culture
全ての従業員が、ストラテジー、発展、繁栄に対してすすんで寄与できるように、インクルーシブでエンゲージメントの高い文化を育てること

2. Community engagement and support
我々が事業を行う全てのコミュニティにおいて傑出した企業市民であること

3. Ethical and sustainable sourcing
我々の価値観を共有する、倫理的かつサステナブルなパートナーシップのネットワークを構築すること

4. Sustainable design
製品、パッケージ、オペレーションに対して、サステナブル&サーキュラー指針を適用することで、我々のデザインに対するアプローチをさらに向上させること

5. Climate action
ネットワークを使って、気候に対するアクションを取り、ポジティブな社会的・環境的影響をもたらすこと

ここからは、「Sustainability Report 2019」をもとに、上記6つのコミットメントに関する実績をかいつまんで紹介していきます。

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1. An inclusive and engaged culture

【2019年までの実績】
•グローバルの育児休暇制度とフレキシブルワークポリシーを開始
•90%以上の従業員に対して生活に必要十分と認められる賃金が支払われた。(2020年の終わりまでに100%を目指す)
•健康&ウェルビーイングプログラム「Aesop Life」を開始した
•マネージャーに対して6ヶ国語でアンコンシャス・バイアスについてのトレーニングが行われた

✔︎ダイバーシティとインクルージョン
•経営陣の46%が女性
•従業員の75%が女性
•オーストラリアではマイノリティのグループに雇用機会を提供するためにローカルの非営利団体と協力している

✔︎健康&ウェルビーイング(「Aesop Life」)
•「Aesop Life」は2019年7月にスタートし、従業員に対して健康とウェルビーイングを促進する目的で、隔月で特定のトピックについてシェアされる
•2019年には、バランスのとれた食事、ストレッチ、メンタルヘルスについて取り扱った

2. Community engagement and support

【2019年までの実績】
•スタッフがローカルコミュニティの組織とともに2万時間のボランティアを実施
•小売店による慈善活動を支援するために40万オーストラリアドル以上を寄付
•阻害されてきたコミュニティの識字の向上をサポートするチャリティパートナーに対し、The Aesop Foundationとして150万オーストラリアドル以上を支援

3. Ethical and sustainable sourcing

Aesopでは厳格なエシカルソーシングプログラムがあり、全てのサプライヤーが環境面で責任あるプロセスを使用していること、また、サプライチェーン全体を通して労働者を尊厳を持って扱っていることなどを重要視しています。

サプライヤー向けの行動規範、エシカルソーシングポリシー、定期的なサプライヤー訪問、リスク評価などによってこれを確実なものにしようとしています。

【2019年までの実績】
•ダイレクトサプライヤー(※1)の95%は、Supplier Ethical Data Exchange (SEDEX)のメンバー(SEDEX...サプライチェーンにおける労働環境を改善するために取り組む、エシカルな取引に関するグローバルなメンバーシップ)
•ティア1サプライヤー(※2)の90%は、サプライヤー向けの行動規範にサインし、我々のエシカルソーシングポリシーを実践
•サプライヤー保証プログラムの一環として、特定のハイリスクなサプライヤーに対するSEDEXのエシカル取引監査を完了

(※1)ダイレクトサプライヤー...我々の製品に直接関わる/含まれる商品またはサービスを提供するサプライヤー
(※2)ティア1サプライヤー...我々が直接買い付けを行うサプライヤー

4. Sustainable design

▶︎製品開発
【2019年までの実績】

•Aesopの製品では一切動物での実験を行なっていない
•すべてのクレンジング製品は、EU Detergents Directive(洗浄剤の指針)における「究極の生分解性」レベルに合致している(※生分解...微生物のはたらきによって分子レベルまで分解され自然に還る性質のこと)
•原材料のサプライヤーたちから、エネルギー、水、土地利用、生分解性を含む環境的パフォーマンスについての情報を集めている

✔︎生物多様性の保護
認証付きのサステナブルなパームオイル
•パームオイルに替わる別の植物油を利用しても別の重大な問題を引き起こすとの考えから、Roundtable on Sustainable Palm Oil(RSPO)の認証のついた成分(パームオイル)を利用
•サステナブルなパームオイルに対して還元する仕組みを持つRSPOのPalm Traceスキーム(トレーサビリティの仕組み)を利用

▶︎パッケージ
【2019年までの実績】
•ペットボトルの70%以上は、少なくとも97%リサイクルされたPETを使用
•店舗で使用されていたプラスチックのプチプチは、リサイクル可能なファイバーベースのクッションペーパーに変更済み
•製品パッケージや荷物輸送で使われるすべての紙や段ボールは、FSC®︎(Forest Stewardship Council)またはPEFC(Program for the Endorsement of Forest Certification)の認証付きのものを使用
•500mlレンジの5つの製品でねじ型キャップの代替(詰め替え)を導入。これによりポンプのリユースを促進し、製品ごとに12gの原料削減につながっている。

✔︎パッケージリターンプログラム
•2018年に香港では、HK Recyclesとパートナーを組み、顧客が店舗やリサイクルカウンターで製品パッケージを返却できるようにした。これにより2019年はトータルで3,573kgもの材料がゴミ廃棄場に行くのをまぬがれた。

5. Climate action

【2019年までの実績】
•直接的なグリーンハウスガスの排出はすべて測定し、減らし、相殺している。間接的な排出についてはまだ途中だが、測定と理解を今後も拡大していく。
•エネルギー消費の19%を再生エネルギーでまかなっている。(向こう3-5年で100%を目指す)
•2018年の CO2排出を相殺するために10,550トンに相当する炭素クレジットを購入した
•2018年と2019年のオーストラリアの事業は、Climate Active(オーストラリア政府のスキーム)においてカーボンニュートラルを達成したと認められた

以上、「Sustainability Report 2019」の内容をピックアップして紹介しました。詳細は、実際のレポートをご覧ください↓


今後掘り下げたい用語

•Supplier Ethical Data Exchange (SEDEX)

•Roundtable on Sustainable Palm Oil(RSPO)、Palm Trace

•Forest Stewardship Council

•Program for the Endorsement of Forest Certification

•EU Detergents Directive

•Post-Consumer Recycled PET

•Climate Active(オーストラリア)


まとめと所感

Aesopの取り組みの最初の2つ、インクルーシブ&ダイバーシティとコミュニティへの貢献というテーマでは、おそらくオーストラリア発ということが関係しているのか、マイノリティへの配慮・貢献ということが特徴的に読み取れるように思いました。

また従業員の健康やウェルビーイングを重視しているという点も、セルフケアの製品を多く取り扱っている会社ならではかもしれません。

環境面では、リサイクルPETの使用や、森林保護のため認証付きの紙を使用すること、一部地域でパッケージ返却プログラムを実施するなど、近年具体的な取り組みが実を結びはじめているようです。

一方で、サプライヤーに対して責任を求めていくという点では、「エシカルソーシングポリシー」があるという記述があるものの、具体的な内容についてはさほど触れられておらず、間接的な気候変動へのアクションも含めまだ道半ばであるという印象を受けました。

2030 Commitmentsという形で各項目において目標が定められていますが、これは計測可能な数値ベースなものもあれば、抽象的な内容に留まっているものもあり、前回のダノンと比較すると不足を感じる部分もありました。

しかしAesopの事例で見えてくるように、このような消費財メーカー・小売業が、オペレーションの各段階で、ポジティブな社会的・環境的インパクトをもたらすためにできることはかなりたくさんあることがわかります。とくに、原料の調達においてサプライヤーに対してサステナビリティを求めていくことは重要なことと思います。

Aesop全体としては、ある程度透明性を重視しての、現時点での可能な限りの情報開示を行っていると見られ、同業の会社は参考にできる部分も多いのではないでしょうか。

前回のダノンもですが、積極的に第三者の認証やスキームを利用することで、すべての基準を自分たちで作ることなく正当な取り組みを謳うことができます。その意味で、用語のところに挙げたようなグローバルな認証を知っておくことは重要といえるでしょう。


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