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看護師が撮って出しエンドロール〜夜空の星編〜

挙式開始前にある程度動画を収めることに成功した私たち。これから挙式が始まる。ここで初めて二手に分かれることにした。

ハンディ片手に式場に入る私と一眼レフと三脚を使って入場と退場を収める従兄弟。入場退場も重要な絵になりそうだがさすがに兄が挙式に参列してないのは良くないだろう。会場内で撮りたい絵もあった。

入場の時の父の表情。二人でバージンロードを歩く時の様子。特に足下のみのカットは撮っておきたい。なぜならYouTubeで見たからな。後は指輪の交換とか参列中のお互いの両親の顔なんてのも良いだろう。そしてなんて言っても誓いのキス。これ逃したら、もう泣きわめいて帰っちゃおうと思ってたし。曲のサビに入る時に誓いのキスはもう10年前から決めてた約束事だ。卒業文集に書いてある。そう、得意の嘘だ。そんな前から決めているわけは無い。決めたのは式の前日だ。絶対撮る。


『ここで、もしみなさんの中に兄弟、姉妹の撮って出しエンドロールを作成してあげようと思っている人がいたら注意して頂きたい。兄弟っていうのは一番前列の通路と反対側になる。ここは、撮影には最悪の場所である。映画館で一番前列の端っこで映画を見た経験はないだろうか。そう、それである。この注意点を考慮して続きを読んで頂きたい。』


ギリギリまで外で撮影していたので私は参列者の中では一番最後に入場した。係員に案内されて席に着いた。兄だからな、一番前の席だ。よし、と思った。よし、一番前なら絶対撮影しやすいはずだ。今のうちに親族の皆さんの表情でも撮っておこう。そう思った瞬間気がつく。

完全に振り返らなくてはいけないじゃないか!

思い出して頂きたいのは、今回の撮影は特別に許可して頂いているということだ。本来撮影なんて普通しないのだ。席から移動してはいけないという縛りを受けてギリギリ許可して頂いているのだ。

しかも、多分妹のことだから新郎側の親族に「兄が私のわがままで撮影してます、ご了承ください」なんて言ってるわけ無いのだ。厳かな神前式の場で兄がキョロキョロキョロキョロ。キョロキョロキョロキョロ・・・・・みっともないだろうなぁ、おい!

これは、もう撮影断念だ!もう家に帰ってドラクエ10でもやってた方が有意義だ。そう思いカメラの画面を閉じ、会場を後にしようとしたその時、唐突に天啓を得た。このカメラ、バリアングル液晶モニターじゃないか。バリアングル液晶モニター、それは画面が様々な角度に動かせるモニターだ。これで正面を向いたまま後方の絵が撮れる。帰ってドラクエ10をするのを泣く泣く諦め撮影を再開する。表情が撮れる、撮れるぞ!しかも俺は正面を向いて、あたかも厳かな気持ちで新郎の入場を待っている義理の兄のようじゃないか。また調子が上がってきた。

そうこうしているうちに母が席にやってきた。いよいよ始まる。新郎の入場だ。よし、バリアングルを駆使して新郎を撮影しよう。レンズを向ける。

みんなの頭が邪魔で新郎全然撮られへん。。。

ここで気づく。ってことは妹の入場、父親の表情も撮られへん。。ましてや足下なんてもっと撮られへん。。。あかんやん!急に大阪弁で叫びだした私に驚き参列者の視線が集まる。なんてことはさすがの私でも無かったのだが愕然とした。膝が震えだし歯がカタカタと音をたてた。と言うほどでも無かったが、やはりドラクエ10やりに家に帰っておくべきだった。しかし、もう遅い。私は恥を忍んで、体を反転させ、背伸びをし、腕を天高く伸ばし夜空の星に触れようとした。違う。腕を天高く伸ばしカメラを構えたのだった。なんとか撮影できそうだ。腕は疲れるが仕方ない。周りの目が気になるが仕方ない。だってそうだろ?俺は兄だ。妹の頼みを聞いている優しい兄だ。後ろ指を指されるいわれは無い。もうこの調子で全部撮ろう。怒られることはあるまい。

この段階でやっと気づいた。結婚式における兄席は撮影には全く向かないのだ、と。

長くなってしまった。まだ、新郎が入場したところじゃないか。「いつまで、こんな誰が読んでいるかも分からない文章を書き続けるんだ。」私は夜空の星に向かって呟いた。

写真は札幌から車で1時間半ほどで行ける厚田公園にて私が撮影した夜空。

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