センチメンタルコスモ 1
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宇宙人であるわたしはその日、本当のコスモを感じた。
だれがなんと言おうと、そう感じたのだから、そうなのだ。
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2020年
地球にある小さな島でなにやら祭りが開催されるらしいとのことで、パパが地球へ行く家族旅行を企画した。わたしはなんでこのタイミングで地球旅行にいくのか、今の時期だったら月にでも行ってイケメンうさぎたちと朝まで踊ったりしたいのにと思ったが、若いころ地球に住んでいたパパがここ300年くらい見てないような笑顔でるるぽトラベルを見せてくるものだから、なにも言えなかった。
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わたしは宇宙にある小さい惑星で、パパとママ、生意気な弟と暮らしている。いまは火星にある大学に通っている。趣味は最近売り出し中のムーンチャイルド所属アイドル「ラビットキャッスル」の追っかけだ。
夏休みに入ってすぐに地球旅行の日が来た。
私たちは、火星にあるマーズ空港からランボルギーニ社の宇宙車に乗って地球へ向かった。地球まではだいたい13時間くらいだから、まあちょっと寝たりTiktokを見たりしてたらつくだろう。Tiktokは地球のひとたちが短い動画を載せていて、何が面白いのかわからないけど、関わったことのない地球の人たちを見られるのが気に入っている。
宇宙に暮らすわたしたちの見た目はさまざまで、もちろん地球人とのハーフやクォーターもいるけれど、まだ地球から来られる人は少ないので、あまり関わることもない。
同じ大学に、地球で生まれた友達の天天がいるけれど、小さい頃に家族で火星に戻ってきたらしい。
天天は地球が好きで、そこに住む人たちの話をしてくれる。
もちろん見た目はわたしたちと違うし(宇宙人から見ると地球人はどの人もだいたい同じように見える)、性別もちゃんと雌雄で別れているらしい。だからなにより興味をもったのは、地球人の子孫を残すための方法だった。
わたしたち宇宙人は見た目や機能が大幅に異なることが多いから、子供を持ちたくなると各星にある★ぺんぎんセンター★(地球でいう役所みたいなとこ)に行って申請をする。
そうすると施設の人がお互いの遺伝子情報をコピーして、合成してくれる。多少の遺伝子の調節は出来るみたいで、すこし耳を大き目にとか、声を高くだとかしている人もいる。
申請して数週間くらいでぺんぎんさんが自宅に子供を届けてくれる。
友達の天天は、地球で生まれた。お父さんは宇宙人だけど、お母さんは地球の人間だ。だから、みんなと違って「セックス」で生まれたんだって言ってた。(つまりお母さんは残念ながらもういない)
それがどんなものなのか知らなかったわたしは、天天から聞いたときすごく興味を持って、地球人についてもすごく調べた。大学でも、人類学を専攻している。
わたしにとって、地球人は憧れの存在なんだ。
だけど地球という星自体にはあまり魅力を感じないのは、行ってみたら変わるかも。
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「まる…起きて、まるる…!!」
体を揺らされて、目を開けると、ママがわたしを揺り起こしていた。
「ママ、着いた?」
「もうすぐ着くから、エナメルスーツに着替えておいてね」
「はあい」
寝ぼけ眼で、持ってきた荷物から虹色に光るボディスーツを取り出す。
これは、地球に旅行するときの常識なのだけれど、地球人たちはまだわたしたちのような宇宙人の変わった姿に見慣れていない人もいる。びっくりして、攻撃されたり、おかしくなっちゃったりすることがあるらしい。
エナメルスーツを着ると、見た目が人間に近くなる。その上からまた服を着る必要はない、ちゃんと服もプログラムされてる。
わたしの見た目は、うさぎみたいに耳が長くて垂れてるから、エナメルピアスもつけて耳も隠さないといけない。チャームポイントなんだけど。
着ていた服を脱いでエナメルスーツを着る。
「ん?ちょっとふとったかな、きついかも」
むりやり体を押し込んで、弟のみずいろを呼ぶ。
「みずー?ちょっとファスナーしめてー」
「え?そんなん自分でやれよ!」
「ちょっと、いいから手伝って!!」
席からひょこっと顔をだしてわたしの姿を確認するとみずいろが嫌そうに立ち上がった。
「うわ、まる太ったんじゃね?これ閉まるか?」
「閉まるよ、閉めて!」
そういって体の前にあるファスナーをみずいろが無理やり上げて、なんとか体が収まった。
これで地球に降り立てる。
わたしは初めて降り立つ地球に胸を躍らせた。(ちょっと苦しい)
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