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渋谷の路上で会った留学生と韓国旅行に行った話①


生きているうちに出会うほとんどの人と友達になれない


居酒屋で隣になってふと話し始めた人なんてもちろん、大学時代の居酒屋のバイトの店長も、同じクラスで当時はそこそこ仲良かったアイツとも、多分もう会うことはない。

特に理由はない。ただ会わなくなるだけだ。

連絡先だけ交換したのにすぐにブロックされるなんてのもザラだ。悲しいけどしょうがない。もともと他人なわけだし、みんな他人に構っていられるほど暇じゃない。

だからこそ、その瞬間を大事にしようねってのが「一期一会」って言葉の意味なんだろうな。

そんななかでも、不思議と連絡を取り合うようになる人ができる。今いる友達だって、そのほとんどがどこでどうやって友達になったのかもよく分からない。

出会った場所や環境だってみんなバラバラだ。ある一人のことが好きな人たちが集まっていたり、なんとなくお互い興味があったり、単純に育った環境が近かったり、、、。友達でいることに理由なんてない。

それぞれ違う世界を見てきたのに、対等に話して理解しあえる。自分の知らなかった経験や感情を教えてもらえる。いろんな友達がいることは僕にとって豊かさそのものだ。いろんな人の経験と感情の奥深くを知ることで、僕の感性は豊かになっていく。

だからこそ、僕は出会うすべての人をできるだけ奥深く理解したいと思って接している。常にオープンでいることを心がけて、少しでも相手が心を開いてくれたらいいなと思っている。

でも実際はほとんどの人がそんな簡単には心を開いてくれない。表面上の会話に終始することがほとんどだし、本当に思っていることはなかなか話してくれない。その場の会話が円滑であることが優先されがちで、建前の奥まではなかなか踏み込めない。

本音を引き出せない自分に落胆もするし、嘘と建前ばかりの世界が嫌になりそうなこともある。

自分から心を閉じてしまえばどれだけ楽だろうと考えたこともある。そもそも他人に興味をもつから余計なストレスを抱えるんだ。自分から歩み寄ろうと思うから、相手にされずに傷つくんだ。

それでも他人を理解しようと歩み寄る姿勢を続けていると、たまに自分の価値観がグッと広がるような思いもよらない出会いがある。

そんなときにやっと、拒絶され続けてボロボロにすり減った心が報われるんだ。無限に広がるこの世界のおもしろさを実感できる。

今回は朝方に渋谷の路上で出会った韓国人、フランス人の留学生と友達になって、しまいには韓国旅行、北海道旅行にまで行った話。

きっとこの出会いが僕の未来を大きく変えることになるし、すでにたくさんいい刺激をもらった。

新しい出会いだって、遅すぎることはない。自分の生きる世界を変える可能性はいつでもそこらにあって、見つけられるかどうかは自分次第だ。

■きっかけは「タタミギャラクシー」だった

土曜朝4時の渋谷。夏の終わり頃で気温もちょうどよく、たくさんの人が路上でおしゃべりをしたり始発待ちで暇つぶしをしたりしていた。

大学時代からの友人と居酒屋から出て外を歩いていると、路上に座っていた外国人に声をかけられた。彼は友人の着ていたTシャツを指さして「タタミギャラクシー!」とハイテンションに叫んだ。

「タタミギャラクシー??」

Tシャツを着ている本人も困り顔だったが、数秒で理解した。小説「四畳半神話大系」が英語では「タタミギャラクシー」だったのだ。僕は読んだことないけど。

暇だったので、そのままなんとなくしゃべり始めた。

彼はフランスから来た留学生のジョン。韓国人の女の子、へジョンと一緒にいた。東京芸大の留学生で、2人とも日本に来て半年もたっていなかった。それにしてもややこしい名前だなあ。

その日はインスタだけ交換してバイバイした。茨城県に住んでいるというので、「東京に来るときはいつでも連絡して!案内するから!」とメッセージを送っておいた。

■取手に突撃した

1週間もたたないうちに、へジョンから「東京行くよ!」と連絡があった。

本当に連絡くれるなんてマメだなと思いながらも、その日は別の予定があり行けなかった。彼女はその後もめげずに連絡をくれたが、ことごとく他の予定とかぶり、3回くらい連続で断ってしまった。

このままいくと二度と会わなくなっちゃうなあ。

韓国人とフランス人で、芸大生。興味しかわかない。せっかくおもしろそなことが起きそうな気配なのに、これを逃したらもったいない。

僕は思いきって彼らが通う大学がある茨城県取手市に遊びに行くことにした。

まず取手市に行ったことないし、留学生が何をして遊ぶのかも知らないし、英語でうまく話せるかもわかんない。その状態で単身突撃する自分がアクティブすぎてもはや怖いとか思ってた。

が、そんな心配は杞憂に終わった。結論から言うと初日がすでにめちゃくちゃ楽しかった。

取手駅はびっくりするくらいしょぼいけど、意外となんでもある。見渡せる範囲に「鳥貴族」だって「松屋」だって「まねきねこ」だってある。その向こうにはもうなにもなくて、必要最低限が駅前にギュッとなってる感じだ。

まったく知らない駅のロータリーで、ちょっとそわそわしながら駅周辺の地図を眺める。日曜の昼下がりだった。

バス停の向こうから、ヘジョンが歩いてきた。顔とかははっきりと覚えてなかったけど、なんせ取手駅は田舎。他にぜんぜん人がいないのですぐにわかった。

ジョンは10分ほど遅れるらしい。彼はワイファイがないとスマホが使えないらしいので、そのまま駅前で立ち話をしながら待つことにした。ヘジョンは日本に来たばっかりなのに、日本語がとてもうまかった。

ちょっとぎこちないながらも、改めてお互いの基本的な話をした。渋谷で立ち話をしたのは10分ほど。ほとんど何も知らない、国籍も違う男女が、駅前で自己紹介をしあう。

彼らはフランスで大学が一緒だったらしい。ヘジョンが韓国の高校を卒業後フランスの大学に進学して、そこでジョンと友達になり一緒に日本に来てみようということになったそうだ。彼女はこの時点でまだ日本に来て1カ月かそこら。なんというアクティブさと語学センス。

ジョンが合流して、駅前のしょぼい居酒屋に入った。さすがに日曜の昼。広い店内に数組しか客はおらず、8人がけの大きいテーブルに案内された。決しておしゃれではないけど安くて清潔でカンジのいい、田舎の特権のような居酒屋だった。

英語での会話だったので大変だったが話ははずんだ。なにせフランスのことも韓国のことも、芸術のことも僕はなにひとつ分からない。彼らは僕の仕事のことはもちろん、日本のこともまだまだ知らないことばかりだ。

互いの国の文化やこれまでの経験について、とりとめもなくしゃべった。飛ぶように時間は過ぎ、気づけば夕方になっていた。



長くなりそうなので、4回の連載にします。
次は「カラオケで1番盛り上がったのは」から!

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